「うちの子、いつも口が開いているんですが、大丈夫でしょうか……」、外来でよくいただくご相談です。お子さんの口がぽかんと開いている状態、いわゆる「お口ぽかん」は、単なるクセではなく、口呼吸のサインかもしれません [1]。日本の子どもの約30%に口呼吸が見られるとの報告があり [2]、2018年からは「口腔機能発達不全症」として歯科での保険診療の対象にもなりました [3]。
今回は、子どもの口呼吸の原因・影響・チェック方法・改善策 についてお伝えします。
お口ぽかん」は放っておいて大丈夫#
放っておいて自然に治るとは限りません [1]。"お口ぽかん"は口呼吸の典型的なサインです。口呼吸が習慣化すると、歯並び・顔の成長・全身の健康にさまざまな影響を及ぼす可能性があります [4]
お口ぽかん(口呼吸)の基本情報:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 頻度 | 日本の子どもの約30% [2] |
| 好発年齢 | 幼児期〜学童期 |
| 保険適用 | 2018年から「口腔機能発達不全症」として歯科で保険適用 [3] |
| 正常な呼吸 | 安静時は鼻呼吸が基本 [5] |
ヒトの正常な呼吸は鼻呼吸です [5]。鼻は空気を加温・加湿し、異物やウイルスをフィルタリングする役割を持っています [5]。口呼吸ではこれらの防御機能が働かないため、さまざまな問題が起こりやすくなります
特に、成長期のお子さんの口呼吸は、顎の発育や歯並びに直接影響するため [4]、気づいた段階で対応することが大切です。"いずれ治るだろう"と様子を見ている間に、顎の成長が進んでしまうことがあります
口呼吸にはどんなデメリットがある#
口呼吸は、お口の中だけでなく、顔の成長や全身の健康にも影響します [4][6]。主なデメリットを5つお伝えしますね
デメリット1: 歯列不正(歯並びが悪くなる)#
デメリット2: アデノイド顔貌#
デメリット3: 集中力・学習能力の低下#
- 口呼吸に伴う睡眠の質の低下により、日中の集中力・注意力が低下 [9]
- 睡眠時無呼吸症候群(SAS)との関連も指摘されている [10]
- 海外の研究では、口呼吸の子どもは学業成績が低い傾向があると報告されている [9]
デメリット4: 口臭・虫歯の増加#
デメリット5: 睡眠の質の低下#
このように、口呼吸は"たかが口が開いているだけ"では済まない、多くの問題につながります [4]。特にお子さんの成長期は、顎や歯の発育に直接影響する大切な時期ですので、早めの対応が重要です
なぜ口呼吸になるの?原因は#
原因は大きく分けて4つあります [13]。お子さんによって原因は1つとは限らず、複数の要因が重なっている場合もあります
原因1: アデノイド・口蓋扁桃の肥大#
- アデノイド(咽頭扁桃)は鼻の奥にあるリンパ組織で、3〜6歳ごろに最も大きくなる [14]
- アデノイドが肥大すると鼻の気道が狭くなり、鼻呼吸が困難になる [14]
- 口蓋扁桃(のどちんこの横の扁桃腺)の肥大も同様に気道を狭くする [14]
- これが小児の口呼吸の最も多い原因の1つ [14]
原因2: アレルギー性鼻炎・慢性鼻炎#
原因3: 口輪筋・舌筋の筋力不足#
- 口唇を閉じる筋肉(口輪筋)や舌の筋力が弱いと、口が開きやすくなる [16]
- 離乳食の形態のステップアップが早すぎる場合や、軟らかい食事ばかりの場合に起こりやすい [16]
- 指しゃぶり、おしゃぶりの長期使用も口輪筋の発達に影響する [17]
原因4: 習慣・姿勢#
- 鼻に問題がなくても、単に口呼吸が習慣化している場合がある [13]
- 猫背などの姿勢の悪さも口呼吸を助長する(頭部が前方に出ると口が開きやすい) [18]
- 長時間のスマートフォン・タブレットの使用による姿勢の悪化も一因
お子さんの口呼吸の原因を見極めることが、適切な治療につながります [13]。例えば、アデノイド肥大が原因なら耳鼻科での治療が必要ですし、筋力不足なら口腔筋のトレーニングが有効です。まずは小児科や耳鼻科で鼻の通りを確認してもらうことをおすすめします
家でチェックする方法は#
はい。日常生活の中で観察できるポイントがいくつかあります [1]。以下のチェックリストを確認してみてください
家庭でできる口呼吸チェックリスト#
日中の様子:
睡眠時の様子:
その他のサイン:
上のチェックリストで3つ以上当てはまる場合は、口呼吸の可能性が高いです [1]。もう1つ、簡単な確認方法があります
簡単テスト: 口閉じテスト#
- お子さんに口を閉じた状態で1分間過ごしてもらう
- すぐに苦しそうにしたり、口が開いてしまう場合は、鼻呼吸が困難な可能性 [13]
簡単テスト: ティッシュテスト#
- 小さく切ったティッシュをお子さんの鼻の下に持つ
- 口を閉じて鼻で呼吸してもらう
- ティッシュが揺れなければ、鼻の通りが悪い可能性 [13]
ただし、家庭でのチェックはあくまで目安です [1]。口呼吸が疑われる場合は、小児科や耳鼻科で鼻の状態やアデノイドの大きさを確認してもらいましょう [14]。必要に応じてX線検査やファイバースコープで評価します
どうすれば鼻呼吸に戻せる#
治療のポイントは、まず原因疾患を治療し、そのうえで口腔機能のトレーニングを行うことです [13]。原因によってアプローチが異なります
ステップ1: 原因疾患の治療#
アデノイド・扁桃肥大の場合:
アレルギー性鼻炎の場合:
ステップ2: あいうべ体操#
原因の治療と並行して、口周りの筋肉を鍛えるトレーニングが有効です [19]。中でも"あいうべ体操"は、家庭で簡単にできる方法として広く推奨されています [19]
あいうべ体操のやり方:
| 動作 | 方法 | 鍛える部位 |
|---|---|---|
| 「あー」 | 口を大きく開ける | 口輪筋(開口) |
| 「いー」 | 口を横に大きく広げる | 頬筋・口輪筋 |
| 「うー」 | 口を前に突き出す | 口輪筋(閉口) |
| 「べー」 | 舌を前に突き出し、下に伸ばす | 舌筋 |
実施のポイント:
- 1セット4動作を、1日30セットが目標 [19]
- 朝・昼・夜に10セットずつなど、分けてもOK
- 大げさなくらい、しっかり動かすのがコツ
- 痛みがある場合は「いー」「うー」から始める [19]
- 2〜3ヶ月継続すると効果を実感しやすい [19]
福岡県のある小学校では、あいうべ体操を全校で取り組んだところ、インフルエンザの罹患率が大幅に低下したという報告もあります [19]。鼻呼吸への改善が感染予防にもつながる好例です
ステップ3: MFT(口腔筋機能療法)#
- MFT(Myofunctional Therapy)は、歯科で行う専門的な口腔筋のトレーニング [20]
- 舌の正しい位置(スポットポジション)を覚える [20]
- 正しい飲み込み方(嚥下パターン)を習得する [20]
- 歯科矯正と併用することが多い [20]
その他のアプローチ#
- 口閉じテープ: 就寝時に口にテープを貼り、鼻呼吸を促す方法。小児への使用は必ず医師に相談 [13]
- 姿勢の改善: 背筋を伸ばし、顎を引く姿勢を意識する [18]
- よく噛んで食べる: 食事での咀嚼は口周りの筋肉を自然に鍛える [16]
口呼吸の改善は、1つの方法だけでなく、複数のアプローチを組み合わせることが大切です [13]。そして何より、原因がある場合はまずその治療を優先してください。鼻が詰まったまま"口を閉じなさい"と言っても、お子さんにとっては苦しいだけです
まとめ#
- 子どもの「お口ぽかん」は口呼吸のサインであり、日本の子どもの約30%に見られる
- 口呼吸は歯並び・顔貌・集中力・口腔衛生・睡眠の質に悪影響を及ぼす
- 原因はアデノイド肥大、アレルギー性鼻炎、口輪筋の筋力不足、習慣の4つ
- 家庭では口の開き、いびき、朝の口の乾燥をチェック
- 原因疾患の治療 + あいうべ体操 + MFTを組み合わせて改善を目指す