愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.68
子どもの「お口ぽかん」、口呼吸が引き起こす意外なトラブル
今号のポイント
- 2日本の子どもの約30%に口呼吸が見られ、「口腔機能発達不全症」として2018年から保険適用
- 4口呼吸は歯並び・顔貌・集中力・睡眠の質に悪影響を及ぼす
- 6原因を見極めたうえで、あいうべ体操やMFTで鼻呼吸への改善が期待できる
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「うちの子、いつも口が開いているんですが、大丈夫でしょうか……」、外来でよくいただくご相談です。お子さんの口がぽかんと開いている状態、いわゆる「お口ぽかん」は、単なるクセではなく、口呼吸のサインかもしれません [1]。日本の子どもの約30%に口呼吸が見られるとの報告があり [2]、2018年からは「口腔機能発達不全症」として歯科での保険診療の対象にもなりました [3]。
今回は、子どもの口呼吸の原因・影響・チェック方法・改善策 についてお伝えします。
Q1.「お口ぽかん」は放っておいて大丈夫?
——子どもがテレビを見ているとき、いつも口がぽかんと開いています。自然に治りますか?
放っておいて自然に治るとは限りません [1]。"お口ぽかん"は口呼吸の典型的なサインです。口呼吸が習慣化すると、歯並び・顔の成長・全身の健康にさまざまな影響を及ぼす可能性があります [4]
お口ぽかん(口呼吸)の基本情報:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 頻度 | 日本の子どもの約30% [2] |
| 好発年齢 | 幼児期〜学童期 |
| 保険適用 | 2018年から「口腔機能発達不全症」として歯科で保険適用 [3] |
| 正常な呼吸 | 安静時は鼻呼吸が基本 [5] |
ヒトの正常な呼吸は鼻呼吸です [5]。鼻は空気を加温・加湿し、異物やウイルスをフィルタリングする役割を持っています [5]。口呼吸ではこれらの防御機能が働かないため、さまざまな問題が起こりやすくなります
特に、成長期のお子さんの口呼吸は、顎の発育や歯並びに直接影響するため [4]、気づいた段階で対応することが大切です。"いずれ治るだろう"と様子を見ている間に、顎の成長が進んでしまうことがあります
ポイント
- お口ぽかんは 口呼吸のサインであり、放置は避けたい [1]
- 日本の子どもの約30%に口呼吸が見られる [2]
- 2018年から「口腔機能発達不全症」として保険適用 [3]
- 鼻呼吸には加温・加湿・フィルタリングの役割がある [5]
Q2. 口呼吸にはどんなデメリットがある?
——口で呼吸すると、具体的にどんな問題がありますか?
口呼吸は、お口の中だけでなく、顔の成長や全身の健康にも影響します [4][6]。主なデメリットを5つお伝えしますね
デメリット1: 歯列不正(歯並びが悪くなる)
- 口呼吸では舌が正しい位置(上顎)に収まらず、下がった状態になる [7]
- 舌の圧力が上顎にかからないため、上顎の成長が不十分になる
- 結果として歯並びが悪くなる(叢生、開咬、上顎前突など) [7]
デメリット2: アデノイド顔貌
- 慢性的な口呼吸により、特有の顔つき(アデノイド顔貌)になることがある [8]
- 特徴: 面長、口唇の弛緩、鼻翼の狭小化、二重あご [8]
- 成長期に顎の発育パターンが変わることが原因
デメリット3: 集中力・学習能力の低下
- 口呼吸に伴う睡眠の質の低下により、日中の集中力・注意力が低下 [9]
- 睡眠時無呼吸症候群(SAS)との関連も指摘されている [10]
- 海外の研究では、口呼吸の子どもは学業成績が低い傾向があると報告されている [9]
デメリット4: 口臭・虫歯の増加
- 口呼吸により口腔内が乾燥し、唾液の自浄作用が低下 [11]
- 唾液が減ることで虫歯菌や歯周病菌が繁殖しやすくなる [11]
- 口臭の原因にもなる [11]
デメリット5: 睡眠の質の低下
- 口呼吸の子どもはいびき、睡眠時無呼吸を起こしやすい [10]
- 睡眠の質が下がると成長ホルモンの分泌にも影響する可能性がある [10]
- 夜尿(おねしょ)との関連も報告されている [12]
このように、口呼吸は"たかが口が開いているだけ"では済まない、多くの問題につながります [4]。特にお子さんの成長期は、顎や歯の発育に直接影響する大切な時期ですので、早めの対応が重要です
ポイント
- 歯並び・顔貌・集中力・口腔衛生・睡眠の5つに悪影響 [4][6]
- 舌の位置異常が上顎の成長不全・歯列不正を引き起こす [7]
- 口腔乾燥により虫歯・口臭が増える [11]
- 睡眠の質の低下が集中力や成長にも影響する [9][10]
Q3. なぜ口呼吸になるの?原因は?
——どうして鼻で呼吸できずに、口で呼吸するようになるんですか?
原因は大きく分けて4つあります [13]。お子さんによって原因は1つとは限らず、複数の要因が重なっている場合もあります
原因1: アデノイド・口蓋扁桃の肥大
- アデノイド(咽頭扁桃)は鼻の奥にあるリンパ組織で、3〜6歳ごろに最も大きくなる [14]
- アデノイドが肥大すると鼻の気道が狭くなり、鼻呼吸が困難になる [14]
- 口蓋扁桃(のどちんこの横の扁桃腺)の肥大も同様に気道を狭くする [14]
- これが小児の口呼吸の最も多い原因の1つ [14]
原因2: アレルギー性鼻炎・慢性鼻炎
- アレルギー性鼻炎による鼻粘膜の腫脹・鼻汁で鼻が詰まる [15]
- 慢性的な鼻閉が続くと、口呼吸が習慣化しやすい [15]
- 日本の子どもの約30〜40%にアレルギー性鼻炎があるとされ、増加傾向 [15]
原因3: 口輪筋・舌筋の筋力不足
- 口唇を閉じる筋肉(口輪筋)や舌の筋力が弱いと、口が開きやすくなる [16]
- 離乳食の形態のステップアップが早すぎる場合や、軟らかい食事ばかりの場合に起こりやすい [16]
- 指しゃぶり、おしゃぶりの長期使用も口輪筋の発達に影響する [17]
原因4: 習慣・姿勢
- 鼻に問題がなくても、単に口呼吸が習慣化している場合がある [13]
- 猫背などの姿勢の悪さも口呼吸を助長する(頭部が前方に出ると口が開きやすい) [18]
- 長時間のスマートフォン・タブレットの使用による姿勢の悪化も一因
お子さんの口呼吸の原因を見極めることが、適切な治療につながります [13]。例えば、アデノイド肥大が原因なら耳鼻科での治療が必要ですし、筋力不足なら口腔筋のトレーニングが有効です。まずは小児科や耳鼻科で鼻の通りを確認してもらうことをおすすめします
ポイント
- 原因はアデノイド肥大、アレルギー性鼻炎、筋力不足、習慣の4つ [13]
- アデノイドは3〜6歳で最大になり、口呼吸の主要原因 [14]
- アレルギー性鼻炎も口呼吸を慢性化させやすい [15]
- 原因を見極めることが適切な治療の第一歩 [13]
Q4. 家でチェックする方法は?
——うちの子が口呼吸かどうか、家庭で確認する方法はありますか?
はい。日常生活の中で観察できるポイントがいくつかあります [1]。以下のチェックリストを確認してみてください
家庭でできる口呼吸チェックリスト
日中の様子:
- テレビやゲームに集中しているとき、口がぽかんと開いている [1]
- 食事中に口を開けたまま噛んでいる(くちゃくちゃ食べ) [16]
- 唇が乾燥している、荒れやすい [11]
- 口臭がある [11]
睡眠時の様子:
- いびきをかく [10]
- 寝ているときに口が開いている [1]
- 朝起きたとき、口やのどが乾燥している [11]
- よだれで枕が濡れている
その他のサイン:
- 風邪をひきやすい(鼻のフィルター機能が働いていない) [5]
- 鼻が詰まりやすい、鼻をよくこする [15]
- 姿勢が悪い(猫背、首が前に出ている) [18]
上のチェックリストで3つ以上当てはまる場合は、口呼吸の可能性が高いです [1]。もう1つ、簡単な確認方法があります
簡単テスト: 口閉じテスト
- 2お子さんに口を閉じた状態で1分間過ごしてもらう
- 4すぐに苦しそうにしたり、口が開いてしまう場合は、鼻呼吸が困難な可能性 [13]
簡単テスト: ティッシュテスト
- 2小さく切ったティッシュをお子さんの鼻の下に持つ
- 4口を閉じて鼻で呼吸してもらう
- 6ティッシュが揺れなければ、鼻の通りが悪い可能性 [13]
ただし、家庭でのチェックはあくまで目安です [1]。口呼吸が疑われる場合は、小児科や耳鼻科で鼻の状態やアデノイドの大きさを確認してもらいましょう [14]。必要に応じてX線検査やファイバースコープで評価します
ポイント
- 口がぽかんと開いている、いびき、朝の口の乾燥が代表的なサイン [1][10][11]
- チェックリストで3つ以上当てはまれば口呼吸の可能性が高い [1]
- 家庭での確認は目安であり、耳鼻科での精査が重要 [14]
- アデノイドの評価にはX線検査やファイバースコープが有用 [14]
Q5. どうすれば鼻呼吸に戻せる?
——口呼吸を治すには、どうすればいいですか?
治療のポイントは、まず原因疾患を治療し、そのうえで口腔機能のトレーニングを行うことです [13]。原因によってアプローチが異なります
ステップ1: 原因疾患の治療
アデノイド・扁桃肥大の場合:
- 軽度: 経過観察(成長とともに縮小することが多い) [14]
- 中等度〜重度: アデノイド切除術・扁桃摘出術を検討 [14]
- 手術適応の目安: 睡眠時無呼吸、成長障害、反復性中耳炎がある場合 [14]
アレルギー性鼻炎の場合:
- 抗ヒスタミン薬の内服 [15]
- 鼻噴霧ステロイド薬(鼻閉に有効) [15]
- 環境整備(ダニ・花粉の対策)
- 舌下免疫療法(ダニ・スギ花粉)の検討 [15]
ステップ2: あいうべ体操
原因の治療と並行して、口周りの筋肉を鍛えるトレーニングが有効です [19]。中でも"あいうべ体操"は、家庭で簡単にできる方法として広く推奨されています [19]
あいうべ体操のやり方:
方法
- 「あー」
- 口を大きく開ける
- 「いー」
- 口を横に大きく広げる
- 「うー」
- 口を前に突き出す
- 「べー」
- 舌を前に突き出し、下に伸ばす
鍛える部位
- 「あー」
- 口輪筋(開口)
- 「いー」
- 頬筋・口輪筋
- 「うー」
- 口輪筋(閉口)
- 「べー」
- 舌筋
実施のポイント:
- 1セット4動作を、1日30セットが目標 [19]
- 朝・昼・夜に10セットずつなど、分けてもOK
- 大げさなくらい、しっかり動かすのがコツ
- 痛みがある場合は「いー」「うー」から始める [19]
- 2〜3ヶ月継続すると効果を実感しやすい [19]
福岡県のある小学校では、あいうべ体操を全校で取り組んだところ、インフルエンザの罹患率が大幅に低下したという報告もあります [19]。鼻呼吸への改善が感染予防にもつながる好例です
ステップ3: MFT(口腔筋機能療法)
- MFT(Myofunctional Therapy)は、歯科で行う専門的な口腔筋のトレーニング [20]
- 舌の正しい位置(スポットポジション)を覚える [20]
- 正しい飲み込み方(嚥下パターン)を習得する [20]
- 歯科矯正と併用することが多い [20]
その他のアプローチ
- 口閉じテープ: 就寝時に口にテープを貼り、鼻呼吸を促す方法。小児への使用は必ず医師に相談 [13]
- 姿勢の改善: 背筋を伸ばし、顎を引く姿勢を意識する [18]
- よく噛んで食べる: 食事での咀嚼は口周りの筋肉を自然に鍛える [16]
口呼吸の改善は、1つの方法だけでなく、複数のアプローチを組み合わせることが大切です [13]。そして何より、原因がある場合はまずその治療を優先してください。鼻が詰まったまま"口を閉じなさい"と言っても、お子さんにとっては苦しいだけです
ポイント
- まず原因疾患(アデノイド肥大、アレルギー性鼻炎)の治療を優先 [13][14]
- あいうべ体操(1日30セット)で口周りの筋力を鍛える [19]
- MFT(口腔筋機能療法)は歯科での専門的トレーニング [20]
- 複数のアプローチの組み合わせが効果的 [13]
まとめ
- 子どもの「お口ぽかん」は口呼吸のサインであり、日本の子どもの約30%に見られる
- 口呼吸は歯並び・顔貌・集中力・口腔衛生・睡眠の質に悪影響を及ぼす
- 原因はアデノイド肥大、アレルギー性鼻炎、口輪筋の筋力不足、習慣の4つ
- 家庭では口の開き、いびき、朝の口の乾燥をチェック
- 原因疾患の治療 + あいうべ体操 + MFTを組み合わせて改善を目指す
あわせて読みたい
ご質問・ご感想をお待ちしています
「こんなこと聞いていいのかな?」というギモンこそ大歓迎です。 外来受診時にお気軽にお声がけいただくか、質問フォームからお寄せください。
次号も
愛育病院 小児科 おかもん先生
本メルマガの内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。お子さまの症状についてはかかりつけの小児科医にご相談ください。