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「様子を見ましょう」の前に知ってほしい、ASDの早期サイン
Vol.100発達

「様子を見ましょう」の前に知ってほしい、ASDの早期サイン

ASDのサインは6ヶ月頃から現れることがある

発達全年齢17
おかもん先生小児科専門医愛育病院 小児科

参考文献 18·Q&A 6問収録

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この記事のポイント

  • ASDのサインは6ヶ月頃から現れることがある
  • 共同注意の欠如と指さしの遅れは重要な早期サイン
  • 「様子を見ましょう」で待つだけでなく、早めに専門機関へつなげることが大切

愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.100

「様子を見ましょう」の前に知ってほしい、ASDの早期サイン

今号のポイント

  1. 2
    ASDのサインは6ヶ月頃から現れることがある
  2. 4
    共同注意の欠如と指さしの遅れは重要な早期サイン
  3. 6
    「様子を見ましょう」で待つだけでなく、早めに専門機関へつなげることが大切

こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。

前号(Vol.099)ではASDの基礎についてお伝えしました。記念すべきVol.100の今号では、「いつ、どんなサインに気をつければよいか」という、保護者の方が最も知りたいテーマに踏み込みます。

「何となく気になる」「でも、まだ小さいから……」「健診では"様子を見ましょう"と言われた」、このような状況で、具体的に何を観察すればよいのかを月齢別にお伝えします。早期発見は、お子さんへの支援を早く始めるための第一歩です [1]。

Q1.「ASDのサインは何歳頃から出るのですか?」

——ASDは3歳頃にわかると聞きましたが、もっと早く気づけるものですか?

良い質問です。ASDの確定診断は通常2〜3歳以降に行われますが、サインは早い場合6ヶ月頃から現れることがあります [2]。近年の研究により、1歳前後でもASDのリスクを評価できることがわかってきました [3]

月齢別の気になるサイン:

月齢気になるサイン
6ヶ月社会的微笑が少ない、あやしても笑わない、名前を呼んでも振り向かない [2]
9ヶ月喃語(バブバブ等)が少ない、表情の模倣が少ない [2]
12ヶ月指さしがない、バイバイなどの身振りがない、名前への反応が乏しい [4]
18ヶ月有意語がない、共同注意がない(親が指さした方を見ない)、一人遊びばかり [4][5]
24ヶ月2語文がない、ごっこ遊びがない、他の子どもへの関心がない、オウム返しが多い [4]
3歳友だちと遊ばない、会話のキャッチボールが難しい、強いこだわり、感覚過敏 [6]

ここで大切なのは、"このサインがあるから即ASD"というわけではないということです [2]。発達の個人差は大きく、一時的に遅れていても追いつくこともあります。しかし、複数のサインが同時にある場合や、月齢に比べて明らかに遅れている場合は、専門家に相談する意味があります。

ポイント

  • ASDのサインは6ヶ月頃から現れることがある [2]
  • 12ヶ月の指さし、18ヶ月の有意語は重要なマイルストーン [4]
  • サインがあっても即ASDではないが、複数重なれば相談を

Q2.「"共同注意"と"指さし"が大事だと聞きましたが、具体的に教えてください」

——"共同注意"という言葉を聞いたのですが、どういう意味ですか?

共同注意(Joint Attention)は、ASDの早期発見において最も重要な概念の一つです [5]。簡単に言うと、"お母さんと赤ちゃんが同じものを一緒に見る"という行動です。

共同注意の2つのタイプ:

タイプ内容出現時期
応答的共同注意他者が注目するものに注目を向ける [5]お母さんが「見て!」と指さした方を見る6〜9ヶ月頃
始発的共同注意自分から他者の注意を引く [5]飛行機を見つけて「あ!」と指さし、親の顔を見る9〜14ヶ月頃

特に始発的共同注意は重要です [5]。ASDのあるお子さんでは、"何かを見つけた喜びを親と共有しようとする"行動が見られにくい傾向があります。例えば、犬を見つけても親の顔を見て「見て!」と伝えようとしないのです。

指さしの種類と発達:

指さしの種類意味出現時期ASDとの関連
要求の指さし「あれちょうだい」10〜12ヶ月出ることが多い [7]
叙述の指さし「あれ見て!」(共有)12〜14ヶ月出にくい(ASDの重要サイン) [7]
応答の指さし「どれ?」→「これ」14〜16ヶ月出にくいことがある [7]

"叙述の指さし"が14ヶ月を過ぎても見られない場合は、注意が必要です [7]。ただし、要求の指さし(「あれちょうだい」)は出ているのに叙述の指さしが出ない、という場合もありますので、指さしの"種類"にも注目してください。

ポイント

  • 共同注意=「一緒に見る」行動。ASD早期発見の最重要概念 [5]
  • 特に始発的共同注意(「見て!」と伝えようとする行動)に注目
  • 叙述の指さしが14ヶ月過ぎても出ない場合は注意 [7]
  • 「要求の指さし」と「叙述の指さし」は別物

Q3.「スクリーニング検査にはどんなものがありますか?」

——健診で使われるASDのスクリーニング検査について教えてください

ASDの早期スクリーニングには、いくつかの標準化されたツールがあります [8]。最もよく使われているのがM-CHAT-R/Fです。

主なスクリーニングツール:

ツール名対象年齢内容感度/特異度
M-CHAT-R/F16〜30ヶ月保護者記入式20項目の質問票 [8]感度85%、特異度99%(フォローアップ面接後) [8]
PARS-TR幼児〜成人面接式の評価ツール(日本で開発) [9]日本の臨床で広く使用
ADOS-212ヶ月〜成人専門家による半構造化観察 [10]ゴールドスタンダード
ADI-R精神年齢2歳以上養育者への半構造化面接 [10]診断確定に使用

M-CHAT-R/Fの重要質問項目(一部):

  • お子さんが何かに興味を持った時、指をさして伝えようとしますか?
  • お子さんは他の子どもに興味がありますか?
  • お子さんはおもちゃを持ってきて見せてくれますか?
  • お子さんの名前を呼んだとき反応しますか?
  • お子さんの目を見つめると、見つめ返してくれますか?

M-CHAT-R/Fは1歳半健診で広く使用されています [8]。20項目の質問に保護者が"はい/いいえ"で回答する簡便な検査ですが、陽性(リスクあり)と判定された場合は、フォローアップ面接を行うことが重要です。M-CHAT-R/Fだけでは偽陽性(本当はASDではないのに陽性と出る)が多いため、必ずフォローアップで確認します [8]

日本ではPARS-TR(親面接式自閉スペクトラム症評定尺度テキスト改訂版)も広く使われています [9]。これは面接形式で、幼児期・児童期・思春期以降の3つの年齢区分で評価できます。

ポイント

  • M-CHAT-R/Fは1歳半健診で広く使用される代表的ツール [8]
  • 陽性でも即ASDではない。フォローアップ面接が必須 [8]
  • 日本ではPARS-TRも広く使用 [9]
  • ADOS-2は専門家による観察で、診断のゴールドスタンダード [10]

Q4.「健診で"様子を見ましょう"と言われました。本当に待っていていいのですか?」

——1歳半健診で"言葉が少し遅いけど、様子を見ましょう"と言われました。でも不安です

"様子を見ましょう"は、"何もしないで待ちましょう"という意味ではありません。ここは非常に重要なポイントです [11]

残念ながら、"様子を見ましょう"の一言で数ヶ月〜数年が過ぎてしまい、結果的に早期介入の機会を逃してしまうケースは少なくありません [11]。ASDの診断年齢の中央値は、米国のデータで約4歳5ヶ月 [12]、日本のデータでもほぼ同様です。つまり、1歳半で気になるサインがあっても、実際に診断と支援につながるまでに2〜3年かかっているのが現状です。

「様子を見る」のではなく「積極的に動く」:

「様子を見る」の落とし穴代わりにやるべきこと
何もせずに次の健診を待つ今できる支援を始める(関わり方の工夫、絵本の読み聞かせ等)
「そのうち追いつくだろう」と楽観視具体的な発達のマイルストーンを記録する
相談するのをためらうかかりつけ小児科や発達相談窓口に早めにつなげる
再評価の時期を決めない1〜2ヶ月後に再評価の予約を入れる

早期介入の効果(再掲・補足):

介入開始時期効果
1歳〜2歳で開始言語・認知・社会性の改善効果が最大 [1][13]
2歳〜3歳で開始有意な改善はあるが、1歳台開始より効果は小さい [13]
3歳以降で開始改善はあるが、早期開始群に比べ効果は限定的 [14]

脳の可塑性は年齢とともに徐々に低下します [1]。だからこそ、"様子を見る"だけで時間を使うのではなく、"様子を見ながら、同時に専門家に相談する"というスタンスが大切なのです。たとえ結果的にASDでなかったとしても、早めに相談したことは決して無駄にはなりません。

ポイント

  • 「様子を見ましょう」=「何もしない」ではない [11]
  • 診断までに平均2〜3年かかるのが現状 [12]
  • 脳の可塑性が高い1〜2歳台の介入が最も効果的 [1][13]
  • 「様子を見ながら、同時に専門家に相談する」が正しいスタンス

Q5.「女の子のASDは見逃されやすいと聞きました。本当ですか?」

——ASDは男の子に多いと聞きますが、女の子でも気をつけたほうがいいですか?

はい、女の子のASDは見逃されやすいという問題があります [15]。男女比は約4:1と報告されていますが、実際の差はもっと小さい可能性が指摘されています [15]

女の子のASDが見逃される理由:

理由詳細
カモフラージュ(社会的マスキング)周囲の行動を模倣して"合わせる"能力が高い [16]
症状の表れ方が異なる限局的興味が"人形""動物"など定型的に見えやすい [15]
内在化傾向外に出る問題行動より、不安・抑うつとして現れやすい [15]
診断バイアス「ASD=男の子」という先入観が専門家にもある [15]
対人関係の質の違い友人は少数いるが、関係の"質"に困難がある [16]

女の子は社会的に"合わせる"能力(カモフラージュ)が発達しやすいため、幼少期には気づかれず、思春期以降に不適応が顕在化するパターンが多いです [16]。女の子で以下のサインがある場合は、ASDの可能性も考慮してください。

女の子で注意すべきサイン:

  • 一見社交的だが、友人関係のトラブルが繰り返される
  • 特定の対象への強い興味(定型的な興味に見えることもある)
  • 感覚過敏(洋服のタグ、特定の食感、大きな音が苦手)
  • 不安が強い、完璧主義、変化への適応が困難
  • 疲れやすい(社会的場面でのカモフラージュにエネルギーを使う)

ポイント

  • 女の子のASDは見逃されやすい [15]
  • カモフラージュ(社会的マスキング)で一見適応しているように見える [16]
  • 思春期以降に不適応が顕在化するパターンに注意
  • 感覚過敏、不安の強さ、友人関係のトラブルに注目

Q6.「受診のタイミングと準備を教えてください」

——受診するとしたら、何を準備すればいいですか?

以下の"受診の目安"に一つでも当てはまれば、かかりつけの小児科にご相談ください。

受診の目安(一つでも当てはまれば相談を):

  • 12ヶ月を過ぎても指さし・バイバイ等の身振りがない [4]
  • 16ヶ月を過ぎても有意語がない [4]
  • 18ヶ月を過ぎても共同注意が見られない [5]
  • 24ヶ月を過ぎても2語文がない [4]
  • いったん獲得した言葉や社会的スキルが失われた(折れ線型) [17]
  • どの月齢であっても、保護者が「何か違う」と感じる [11]

受診時に準備すると良いもの:

準備するもの内容
発達の記録首すわり、寝返り、お座り、はいはい、歩き始め、初語の時期
気になる行動のメモ具体的な場面と頻度(動画があると非常に有用)
母子健康手帳健診の記録、成長曲線
園・学校からの情報保育士・教師からの指摘(あれば)
家族歴発達に関する家族の情報

スマートフォンで日常の様子を動画撮影しておくことを強くお勧めします。診察室ではお子さんが緊張して普段と違う行動をとることが多いため、家庭での自然な様子が最も参考になります [18]

港区の相談・支援機関:

電話番号

みなと保健所
03-6400-0081
港区子ども家庭支援センター
03-6453-7830
港区立児童発達支援センター
港区公式サイトで最新の連絡先を確認(2026年4月時点・年度更新要)
東京都発達障害者支援センター(TOSCA)
03-6413-0231

内容

みなと保健所
乳幼児健診、発達相談
港区子ども家庭支援センター
育児全般の相談
港区立児童発達支援センター
療育・発達支援
東京都発達障害者支援センター(TOSCA)
専門相談

ポイント

  • 保護者が「何か違う」と感じたら、それだけで受診の理由になる [11]
  • 動画撮影が最も有用な情報源 [18]
  • 港区には複数の相談窓口がある
  • 折れ線型(いったん獲得したスキルの喪失)は至急受診 [17]

今号のまとめ

  • ASDの早期サインは6ヶ月頃から現れることがある。特に指さし・共同注意に注目
  • M-CHAT-R/Fは1歳半健診で使用される代表的なスクリーニングツール
  • 「様子を見ましょう」で待つだけでなく、早めに専門家に相談することが重要
  • 女の子のASDは見逃されやすい。カモフラージュ、不安、感覚過敏に注意
  • 保護者の「何か違う」という直感は大切。動画を撮って受診を
  • 早期介入は早いほど効果が大きい。1〜2歳台の支援開始が最もインパクトが大きい

あわせて読みたい

  • Vol.099「自閉スペクトラム症(ASD)の基礎」
  • Vol.033「逆さバイバイは大丈夫?」
  • Vol.073「うちの子、言葉が遅い?」
  • Vol.091「5歳児健診FAQ」
  • Vol.097「健診で要経過観察と言われたら」

ご質問・ご感想

「うちの子のこの行動、相談したほうがいいでしょうか?」「どの専門機関に行けばいいかわからない」など、具体的なご質問をお待ちしています。お気軽に外来でお声がけいただくか、質問フォームからお寄せください。

次号からはADHD(注意欠如・多動症)について解説していきます。

愛育病院 小児科 おかもん先生

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※ この記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。お子さんの症状が心配な場合は、かかりつけの小児科医にご相談ください。

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