愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.091
集団生活で見えてくる「気になること」、5歳児健診FAQ
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
3歳児健診が終わると、次の公的な健診は就学時健診まで約2〜3年のブランクがあります。この間にお子さんは保育園や幼稚園で集団生活を経験し、3歳の時点では見えにくかった発達の特性が顕在化することがあります。5歳児健診は、このブランクを埋める大切な機会です。今回は、保護者の方からよくいただく質問にお答えします。
Q1.「5歳児健診は何のためにあるのですか?」
——3歳児健診が終わって安心していたのですが、5歳児健診のお知らせが届きました。何をチェックするんですか?
5歳児健診は、3歳児健診と就学時健診の間のブランクを埋めるために実施されています。3歳の時点では見えにくかった軽度の発達特性、例えばADHD(注意欠如・多動症)、自閉スペクトラム症(ASD)、学習障害(LD)、が、集団生活を経験する4〜5歳で顕在化することがあるのです [1]。5歳児健診の目的は、こうした特性を早期に見つけて、就学前に適切な支援につなげることです。就学前に支援が始まれば、小学校生活をよりスムーズにスタートできます [2]。
ポイント
- 3歳児健診では見つけにくい発達特性を、集団生活の経験をもとに評価する
- ADHD・ASD・LDの早期発見と就学前支援が目的
- 法定ではない自治体もあるが、港区では実施されている
Q2.「3歳児健診で問題なかったのに、5歳で引っかかることはありますか?」
——3歳の時は『問題なし』と言われたのに、5歳で何か見つかることがあるんですか?
あります。軽度のADHDや自閉スペクトラム症は、3歳の時点では『少し活発な子』『マイペースな子』として見過ごされることがあります [3]。集団生活が本格化する4〜5歳になって、『友達とうまく遊べない』『指示が通りにくい』『切り替えが苦手』などの形で初めて顕在化することは珍しくありません。小枝らの調査では、5歳児健診で発達上の課題が疑われた児の約半数が、3歳児健診では指摘されていなかったと報告されています [4]。
ポイント
- 軽度の発達特性は3歳では「個性の範囲」と見なされやすい
- 集団生活の中で「困りごと」として顕在化するケースが多い
- 5歳児健診で初めて指摘されることは珍しくない
Q3.「『発達に気になる点がある』と言われました。発達障害ということですか?」
——健診で『少し気になる点がある』と言われて、頭が真っ白になりました……
お気持ち、よくわかります。でも、『気になる点がある』は発達障害の確定診断ではありません。健診はスクリーニング(ふるい分け)の場であり、確定診断の場ではないのです [1]。『年齢相応の発達から少しずれがあるかもしれないので、もう少し丁寧に見てみましょう』という提案だとお考えください。その後の発達検査や専門医の評価を経て初めて、支援が必要かどうかが判断されます。仮に何らかの発達特性があったとしても、早期に気づいて環境調整や支援を受けることで、お子さんの『困りごと』を減らすことができます [5]。
ポイント
- 健診はスクリーニングの場であり、確定診断の場ではない
- 「気になる点がある」=「発達障害」ではない
- 早期発見・早期支援はお子さんにとって最善の選択
Q4.「園で特に問題を指摘されていませんが、受けたほうがいいですか?」
——保育園の先生からは何も言われていないので、健診は受けなくてもいいかなと思っているのですが……
ぜひ受けてください。園の先生は、保護者への伝え方に配慮して、気になる点をストレートに言わないこともあります。また、医師の目と園の先生の目では見るポイントが異なります [4]。園の先生は日常生活の中での行動を見ていますが、医師は発達の医学的な指標を系統的に評価します。問題がなければ安心材料になりますし、何か見つかれば就学前に対処できる貴重な機会です。
ポイント
- 園の先生と医師では評価のポイントが違う
- 問題なければ「安心」が得られる
- 就学前に課題を見つけて対処できるラストチャンス
Q5.「就学相談との関係はどうなりますか?」
——5歳児健診で何か指摘されたら、普通の小学校に行けなくなるんですか?
そんなことはありません。5歳児健診で発達面の課題が見つかった場合、港区の就学相談につなげることができます。就学相談では、お子さんに合った学びの場を一緒に考えます [6]。選択肢は通常学級だけでなく、通級指導教室(普段は通常学級で過ごし、週に数時間だけ個別指導を受ける)、特別支援学級などがあります。どの選択肢も、お子さんが最も伸びやすい環境を見つけるためのものです。就学相談は年長の夏頃から始まるため、5歳児健診で早めに相談を始めておくとスケジュールに余裕が持てます。
ポイント
- 通常学級・通級指導教室・特別支援学級など、複数の選択肢がある
- どれも「お子さんが最も伸びやすい環境」を見つけるためのもの
- 年長の夏から就学相談が始まるため、早めの相談がスケジュール的に有利
今号のまとめ
- 5歳児健診は、3歳児健診と就学時健診の間のブランクを埋める重要な機会です
- 3歳で問題がなくても、集団生活で顕在化する発達特性があることは珍しくありません
- 「気になる点がある」は確定診断ではなく、丁寧に見守りましょうという提案です
- 園で指摘がなくても、医師の評価は異なる視点からの確認として価値があります
- 就学相談は「排除」ではなく「最適な学びの場を見つける」ためのプロセスです
- 焦る必要はありませんが、チャンスは活かしましょう
あわせて読みたい
- Vol.67「チック症」
- Vol.73「うちの子、言葉が遅い?」
- Vol.33「逆さバイバイは大丈夫?」
- Vol.97「健診で『要経過観察』と言われたら」
ご質問・ご感想
「うちの子も5歳児健診で相談して安心した」「就学相談のことをもっと知りたい」など、ご感想やご質問がございましたら、お気軽にお寄せください。
愛育病院 小児科 おかもん先生
本メルマガの内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。お子さまの症状についてはかかりつけの小児科医にご相談ください。