退院してから最初に戸惑うケアのひとつが「おへそ」ではないでしょうか。臍の緒がまだついている状態、ジュクジュクしている状態、脱落した後にできる赤いしこり。どれも初めてだと心配になりますよね。今号では、おへそのケアの基本と、注意すべきサインを整理します。
臍の緒はいつ取れるのか#
臍の緒は通常、生後5日から2週間ほどで自然に乾燥して脱落します [1]。入院中に取れる赤ちゃんもいれば、退院後しばらくしてから取れる赤ちゃんもいます。脱落時期には個人差がありますので、2週間を過ぎてもまだついている場合でも、感染の徴候がなければ焦る必要はありません。
大切なのは「清潔と乾燥」を保つこと。日本では消毒用アルコール(エタノール)を用いた消毒が広く行われていますが、WHOは清潔な環境での出産であれば「ドライケア(乾燥させるだけで消毒しない)」でも十分としています [2]。ただし、日本の医療施設では消毒を指導されることが多いので、入院中に教わった方法を継続するのがよいでしょう。
脱落後にジュクジュクする場合#
臍の緒が取れた後、数日間は少量の出血やにじみがあることは珍しくありません。沐浴のたびに消毒を続け、乾燥を保てば通常1週間ほどで乾いてきます。
ただし、脱落後に赤くて湿った小さなしこりが残ることがあります。これが「臍肉芽腫(さいにくがしゅ)」です。臍の緒が取れた後に残った組織が過剰に増殖したもので、新生児の臍トラブルとしては最も多いものです [3]。
臍肉芽腫の治療は、硝酸銀による焼灼が一般的です。外来で硝酸銀の棒やスティックを肉芽に軽く当てて組織を縮小させる処置で、痛みはほとんどありません。数回の処置が必要なこともありますが、多くの場合2-3週間以内に治癒します [3]。
臍炎に注意するサイン#
臍周囲が赤く腫れている、膿が出ている、悪臭がある場合は「臍炎(さいえん)」の可能性があります。臍炎は臍の傷口から細菌が感染して起こるもので、まれに重症化すると腹壁の壊死性筋膜炎や敗血症に進行する危険があります [4]。
まれだけれど知っておきたいこと#
臍肉芽腫の処置を繰り返してもジュクジュクが治らない場合や、臍から透明または尿のような液体が持続的に出る場合は、「尿膜管遺残」という先天的な構造の問題が隠れていることがあります [5]。胎児期に膀胱と臍をつないでいた管(尿膜管)が閉鎖しないまま残っている状態で、精密検査と場合によっては手術が必要です。
また、臍の緒の脱落が生後3週間を過ぎても起こらない場合は、白血球の機能異常(白血球接着不全症)が背景にあるまれなケースが報告されています [4]。1ヶ月健診までに脱落していなければ、健診時に相談しましょう。
今号のまとめ#
- 臍の緒は生後5日から2週間で自然に脱落する。清潔と乾燥を保つのが基本 [1]
- 日本では消毒用アルコールによるケアが一般的。WHOは清潔環境ではドライケアも推奨 [2]
- 脱落後の赤いしこり(臍肉芽腫)は硝酸銀焼灼で治療可能 [3]
- 臍周囲の発赤・膿・悪臭は臍炎のサイン。早めの受診を [4]