赤ちゃんの肌や白目が黄色っぽくなる「黄疸」。入院中に指摘されて驚いた方も多いのではないでしょうか。黄疸はほとんどの新生児に見られる生理的な現象ですが、まれに治療が必要になることがあります。今号では、黄疸の仕組み、光線療法の基準、そして母乳性黄疸について整理します。
なぜ新生児は黄色くなるのか#
赤ちゃんの体内では、胎児期に多く作られた赤血球が生後急速に分解されます。赤血球が壊れるとビリルビンという黄色い色素が放出されますが、新生児の肝臓はまだこのビリルビンを処理する力が十分に発達していません。その結果、血液中のビリルビン濃度が上昇し、皮膚や白目が黄色く見えるようになります [1]。
これが「生理的黄疸」です。生後2-3日目から現れ始め、4-5日目にピークを迎え、通常は1-2週間で自然に消えていきます。正期産児の約60%、早産児の約80%に見られるごく一般的な現象です [1]。
光線療法はどんなときに必要か#
ビリルビンが一定の基準を超えると、まれにビリルビンが脳に沈着して神経障害を起こす「核黄疸」のリスクがあります。これを防ぐために行うのが光線療法です。
2022年に改訂されたAAP(米国小児科学会)のガイドラインでは、在胎週数、神経毒性のリスク因子(溶血性疾患の有無、在胎35-37週の早産など)、そして日齢に応じた光線療法開始のビリルビン閾値が示されています [2]。以前のガイドラインに比べて閾値がやや引き上げられ、不必要な治療を減らす方向に見直されました。
光線療法そのものは、特殊な青い光を赤ちゃんの皮膚にあてることで、ビリルビンを水に溶けやすい形に変え、体外に排泄しやすくする治療です。痛みはなく、多くの場合1-2日で効果が得られます。
また2022年のガイドラインでは「エスカレーション・オブ・ケア」という概念が新たに導入されました。交換輸血の閾値まで2 mg/dL以内に迫った場合は緊急事態とみなし、NICUでの集中的な光線療法が推奨されています [2]。
「母乳性黄疸」と「母乳不足黄疸」の違い#
母乳に関連する黄疸には2つのタイプがあります。混同されやすいので、ここで整理しておきます。
まず「母乳不足黄疸(breastfeeding jaundice)」。これは生後数日のうちに、母乳の摂取量が十分でないことで起こります。哺乳量が少ないと腸の動きが鈍くなり、メコニウム(胎便)の排泄が遅れ、腸管内のビリルビンが再吸収されてしまうのです [3]。対処法は授乳回数を増やすこと。1日8-12回以上の頻回授乳が勧められます。
一方、「母乳性黄疸(breast milk jaundice)」は生後1-2週以降に始まり、2-3ヶ月まで続くことがある黄疸です。母乳に含まれるベータグルクロニダーゼという酵素が、腸管内でビリルビンの再吸収を促進することが原因と考えられています [3]。
母乳性黄疸で大切なのは、母乳を中断する必要はほとんどないということです。赤ちゃんが元気で、体重増加が順調で、ビリルビン値が光線療法の基準に達していなければ、母乳を続けながら経過をみます。ビリルビン値は徐々に下がっていきますが、完全に消えるまで8-12週かかることもあります [3]。
退院後の黄疸フォローアップ#
入院中に黄疸の値をチェックして退院しますが、ビリルビン値は退院後にピークを迎えることがあります。AAP 2022ガイドラインでは、退院前にすべての新生児の総血清ビリルビンまたは経皮ビリルビンの測定(ユニバーサルスクリーニング)を推奨しています [2]。
退院後は、1ヶ月健診の前であっても、黄疸が強まっている印象がある場合は受診してください。早めの対応で光線療法だけで済むケースがほとんどです。
今号のまとめ#
- 新生児の約60%に生理的黄疸が出現する。生後2-3日に始まり、1-2週間で自然に消える [1]
- 2022年AAP改訂ガイドラインでは、在胎週数とリスク因子に応じた光線療法の閾値が示されている。閾値は従来よりやや引き上げられた [2]
- 母乳性黄疸は生後1-2週以降に始まり2-3ヶ月続くこともあるが、母乳の中断は通常不要 [3]
- 生後24時間以内の黄疸、便色の異常(白色便)は病的黄疸のサインであり、早急な受診が必要