コンテンツへスキップ
MINATON
水ぼうそうのウイルスは体の中に"眠っている"、帯状疱疹と子ども
Vol.152感染症

水ぼうそうのウイルスは体の中に"眠っている"、帯状疱疹と子ども

帯状疱疹は水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化で起こる。水ぼうそうにかかった(またはワクチンを打った)人なら子どもでも発症しうる

感染症全年齢14
おかもん先生小児科専門医愛育病院 小児科

参考文献 11·Q&A 5問収録

プロフィール →

この記事のポイント

  • 帯状疱疹は水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化で起こる。水ぼうそうにかかった(またはワクチンを打った)人なら子どもでも発症しうる
  • 子どもの帯状疱疹は比較的軽症で済むことが多いが、免疫低下時や胎内感染後は注意が必要
  • 帯状疱疹の水疱からは水痘ウイルスが排出されるため、水痘の免疫を持たない人(乳児など)には水ぼうそうとしてうつる可能性がある

愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.152

水ぼうそうのウイルスは体の中に"眠っている"、帯状疱疹と子ども

今号のポイント

  1. 2
    帯状疱疹は水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化で起こる。水ぼうそうにかかった(またはワクチンを打った)人なら子どもでも発症しうる
  2. 4
    子どもの帯状疱疹は比較的軽症で済むことが多いが、免疫低下時や胎内感染後は注意が必要
  3. 6
    帯状疱疹の水疱からは水痘ウイルスが排出されるため、水痘の免疫を持たない人(乳児など)には水ぼうそうとしてうつる可能性がある

こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。

「帯状疱疹って、おじいちゃん・おばあちゃんの病気じゃないんですか?」と外来でよく聞かれます。確かに多いのは高齢者ですが、子どもでも起こります [1][2]。Vol.47の水ぼうそう(水痘)の続編として、今回は水ぼうそうウイルスが体の中で"目を覚ます"帯状疱疹について、子どもに絞ってお伝えします。

Q1.「帯状疱疹とは何ですか? なぜ子どもでもなるのですか?」

——5歳の娘のお腹の片側に、水ぶくれが帯のように並んでいます。痛いと言っています。これは何ですか?

お子さんの症状は帯状疱疹の可能性があります [1]。帯状疱疹のメカニズムについてご説明しますね

帯状疱疹の基本情報 [1][2][3]:

項目内容
原因水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化 [1]
メカニズム水ぼうそう(またはワクチン)の後、VZVは神経節に潜伏感染。何らかのきっかけで再活性化し、その神経の支配領域に沿って発疹が出る [1][2]
好発年齢50歳以上に多いが、子どもでも発症する [2][3]
小児の頻度小児の帯状疱疹の発症率は年間1,000人あたり0.2〜0.7人程度 [3]

なぜ帯状疱疹が起こるのか [1][2]:

ステップ説明
1. 初感染(水ぼうそう)VZVに初めて感染すると水ぼうそうを発症 [1]
2. 潜伏感染水ぼうそうが治った後も、VZVは脊髄後根神経節や脳神経節に潜伏し続ける [1]
3. 再活性化免疫力の低下や加齢などをきっかけに、潜伏していたVZVが再び活動を始める [2]
4. 帯状疱疹の発症再活性化したVZVが神経に沿って皮膚に到達し、片側の特定の領域に水疱を形成 [1]

子どもで帯状疱疹が起こるケース [2][3][4]:

ケース説明
水ぼうそうに罹患した後乳幼児期に水ぼうそうにかかった子が、数年後に帯状疱疹を発症 [3]
胎内感染母親が妊娠中に水ぼうそうにかかり、胎児がVZVに感染。出生後に帯状疱疹として発症することがある [4]
水痘ワクチン接種後ワクチン株VZVが神経節に潜伏し、再活性化することがある(後述)[3][5]
免疫低下状態がん治療中、ステロイド長期使用中、免疫不全などで再活性化のリスクが上がる [2]

つまり、水ぼうそうのウイルスは一度体に入ると、一生そこに住み続けるのです [1]。普段は免疫によって抑え込まれていますが、何らかの理由で免疫が弱まると、ウイルスが"目を覚まし"て帯状疱疹を引き起こします [2]。子どもの場合は免疫力が高いので高齢者ほど頻度は高くありませんが、起こりうるということは知っておいてください [3]

ポイント

  • 帯状疱疹は水痘ウイルス(VZV)の再活性化で起こる [1]
  • VZVは水ぼうそう(またはワクチン)の後、神経節に一生潜伏する [1]
  • 子どもでも発症し、頻度は年間1,000人あたり0.2〜0.7人 [3]
  • 胎内感染後、免疫低下時、ワクチン接種後にも起こりうる [2][3][4]

Q2.「子どもの帯状疱疹の症状はどんなものですか?」

——子どもの帯状疱疹は、大人と同じような症状ですか?

基本的な症状は大人と同様ですが、子どもの帯状疱疹にはいくつかの特徴があります [2][3][6]

帯状疱疹の典型的な症状 [1][2][6]:

時期症状
前駆期(0〜数日)発疹が出る部位にピリピリ・チクチクした痛みや違和感。子どもでは軽度または自覚しないことも [6]
発疹期(1〜2週間)片側の特定の皮膚分節(デルマトーム)に沿って、紅斑→水疱→膿疱→痂皮と変化する発疹 [1]
回復期痂皮化して治癒。通常2〜4週間で治る [2]

帯状疱疹の発疹の特徴 [1][6]:

特徴説明
片側性体の左右どちらか一方にのみ出る。正中線を越えない [1]
帯状に並ぶ神経の走行に沿って帯状(バンド状)に水疱が並ぶ [1]
好発部位胸部(肋間神経)が最も多い。次いで顔面、腰部 [2]
痛み神経痛を伴う。大人では激痛のことが多い [2]

子どもの帯状疱疹の特徴(大人との違い)[3][6][7]:

子ども

痛み
軽度〜中等度。痛みがないこともある [6]
帯状疱疹後神経痛(PHN)
極めてまれ [3][7]
重症化
健康な子どもでは軽症で済むことが多い [3]
経過
通常1〜2週間で自然軽快 [6]
合併症
まれ [3]

大人(特に高齢者)

痛み
激しい神経痛が多い [2]
帯状疱疹後神経痛(PHN)
高齢者の約20〜30%に持続 [2]
重症化
免疫低下者で重症化リスク [2]
経過
2〜4週間。PHNは数ヶ月〜数年 [2]
合併症
眼合併症、Ramsay Hunt症候群など [2]

子どもの帯状疱疹で安心できるポイントは、帯状疱疹後神経痛(PHN)がほとんど起こらないことです [3][7]。大人、特に高齢者では帯状疱疹が治った後も数ヶ月〜数年にわたって神経痛が続くことがありますが、子どもではこの問題はほとんどありません

——水ぼうそうの発疹とは見分けがつきますか?

帯状疱疹と水ぼうそうの見分け方 [1][6]:

帯状疱疹

発疹の分布
片側、帯状
正中線
越えない
発疹の段階
同じ段階のものが集まる
発熱
軽度または発熱なし
既往歴
水ぼうそうの既往あり

水ぼうそう

発疹の分布
全身に散在
正中線
関係なく全身に出る
発疹の段階
異なる段階が同時に存在
発熱
37〜38℃台
既往歴
初回感染

ポイント

  • 帯状疱疹は片側の帯状の水疱が特徴。正中線を越えない [1]
  • 子どもでは痛みが軽度で、帯状疱疹後神経痛はほとんど起こらない [3][7]
  • 健康な子どもでは1〜2週間で自然に治ることが多い [6]
  • 水ぼうそうとの違いは片側性かどうか [1][6]

Q3.「水痘ワクチンを打った後にも帯状疱疹になりますか?」

——うちの子は水ぼうそうにはかかっていませんが、ワクチンは打っています。それでも帯状疱疹になる可能性はあるんですか?

はい。ワクチン株のVZVも神経節に潜伏し、再活性化して帯状疱疹を起こすことがあります [5][8]。ただし、重要なポイントがあります

水痘ワクチン後の帯状疱疹 [5][8][9]:

項目内容
発症の可能性ワクチン株VZVが神経節に潜伏→再活性化→帯状疱疹 [5]
頻度自然感染(水ぼうそう)後の帯状疱疹より低い [8][9]
ワクチン接種者 vs 自然感染者ワクチン接種者の帯状疱疹発症率は、自然感染者の約3分の1〜2分の1 [9]
重症度ワクチン株による帯状疱疹は一般的に軽症 [5]

帯状疱疹の発症率の比較 [8][9]:

帯状疱疹発症率(年間/1,000人)
水痘ワクチン接種者(小児)約0.1〜0.3 [9]
水ぼうそう自然感染後(小児)約0.4〜0.7 [8]
成人(50歳以上)約5〜7 [2]

つまり、水痘ワクチンを打つことは、帯状疱疹のリスクをむしろ下げるのです [8][9]。自然に水ぼうそうにかかった場合の方が、帯状疱疹の発症率は高くなります。ワクチンを打つ→帯状疱疹になりやすくなる、という心配は不要です

ポイント

  • 水痘ワクチン後にも帯状疱疹は起こりうるが、自然感染後より頻度は低い [8][9]
  • ワクチン接種者の帯状疱疹発症率は自然感染者の約3分の1〜2分の1 [9]
  • ワクチン接種は帯状疱疹のリスクを下げる [8][9]

Q4.「帯状疱疹の子どもから水ぼうそうがうつりますか?」

——上の子が帯状疱疹になった場合、まだワクチンを打っていない下の赤ちゃんにうつりますか?

これは非常に重要なご質問です。帯状疱疹の水疱からは水痘ウイルスが排出されます [1][10]。そのため、水痘の免疫を持たない人に"水ぼうそう"としてうつる可能性があります [10]

帯状疱疹からの感染リスク [1][10]:

項目内容
感染経路帯状疱疹の水疱の中の液に触れることによる接触感染が主 [10]
空気感染帯状疱疹では水ぼうそうと異なり、空気感染のリスクは低い(限局性のため)[10]
感染する病気帯状疱疹ではなく水ぼうそう(水痘)として発症する [1]
リスクのある人水痘の免疫を持たない人(ワクチン未接種の乳児、免疫不全者)[10]
感染力の期間水疱が痂皮化(かさぶた)するまで [10]

帯状疱疹 vs 水ぼうそうの感染力の比較 [1][10]:

帯状疱疹

感染力
弱い〜中程度
主な感染経路
接触感染(水疱の液)
感染範囲
限局的(水疱部分のみ)
感染する病気
水ぼうそう

水ぼうそう

感染力
非常に強い
主な感染経路
空気感染+飛沫感染+接触感染
感染範囲
全身の水疱+呼吸器からの排出
感染する病気
水ぼうそう

帯状疱疹の感染力は水ぼうそうに比べるとかなり弱いですが、ゼロではありません [10]。特に、まだ水痘ワクチンを接種していない1歳未満の赤ちゃんがいるご家庭では注意が必要です。帯状疱疹の水疱を覆うガーゼや衣服で保護し、赤ちゃんが水疱に直接触れないようにすることが大切です

ポイント

  • 帯状疱疹の水疱からは水痘ウイルスが排出される [1][10]
  • 水痘の免疫がない人には水ぼうそうとしてうつる可能性 [10]
  • 帯状疱疹の感染力は水ぼうそうより弱いが、ゼロではない [10]
  • 水疱をガーゼ等で覆い、免疫のない乳児との接触を避ける [10]

Q5.「帯状疱疹の治療はどうしますか?」

——子どもの帯状疱疹はどう治療するのですか? 自然に治りますか?

健康な子どもの軽症の帯状疱疹は自然に治ることもありますが、早期に抗ウイルス薬を使用することで、症状の軽減と治癒の促進が期待できます [2][6][11]

帯状疱疹の治療 [2][6][11]:

治療内容
抗ウイルス薬アシクロビル(ゾビラックス)またはバラシクロビル(バルトレックス) [11]
開始時期発疹出現から72時間以内に開始するのが理想 [11]
投与期間通常5〜7日間 [11]
効果新しい水疱の形成を抑制、痛みの軽減、治癒の促進 [2]

治療が特に推奨されるケース [2][6][11]:

ケース理由
免疫低下状態の子ども重症化・播種性帯状疱疹のリスク [2]
顔面(特に眼周囲)の帯状疱疹角膜炎・視力障害のリスク [2]
広範囲の帯状疱疹複数のデルマトームにまたがる場合 [6]
強い痛みを伴う場合小児では比較的まれだが、痛みが強い場合 [6]

対症療法 [6]:

ケア内容
痛みの管理アセトアミノフェン(カロナール)。必要に応じてイブプロフェン [6]
水疱のケア清潔に保つ。水疱を破らない。ガーゼで保護 [6]
かゆみ対策抗ヒスタミン薬(内服)、カラミンローション [6]
入浴ぬるめのシャワーは可。ゴシゴシこすらない [6]

健康な子どもの軽い帯状疱疹であれば、自然に治ることも多いですが、できれば早期に抗ウイルス薬を開始することをおすすめします [11]。特に、目の周りに発疹が出た場合は必ず受診してください [2]。眼科的な合併症を防ぐために早期の治療が重要です

ポイント

  • 抗ウイルス薬(アシクロビル等)を発疹出現72時間以内に開始が理想 [11]
  • 健康な子どもの軽症例は自然治癒もありうるが、治療で回復が早まる [6]
  • 目の周りの帯状疱疹は必ず受診(角膜炎のリスク)[2]
  • 痛みにはアセトアミノフェン。水疱はガーゼで保護 [6]

まとめ

  • 帯状疱疹は水痘ウイルス(VZV)の再活性化で起こり、子どもでも発症する [1][2][3]
  • 子どもの帯状疱疹は軽症で済むことが多く、帯状疱疹後神経痛もまれ [3][7]
  • 水痘ワクチン接種者の帯状疱疹発症率は、自然感染者より低い。ワクチンは帯状疱疹リスクを下げる [8][9]
  • 帯状疱疹の水疱からは水痘ウイルスが排出される。免疫のない乳児には水ぼうそうとしてうつる可能性 [10]
  • 治療は抗ウイルス薬の早期投与。目の周りの帯状疱疹は必ず受診 [2][11]

あわせて読みたい

ご質問・ご感想

「帯状疱疹かもしれない発疹がある」「下の子への感染が心配」など、ご質問がございましたらお気軽にお寄せください。外来受診時にお声がけいただくか、質問フォームからどうぞ。

愛育病院 小児科 おかもん先生

本メルマガの内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。お子さまの症状についてはかかりつけの小児科医にご相談ください。

この記事は役に立ちましたか?

※ この記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。お子さんの症状が心配な場合は、かかりつけの小児科医にご相談ください。

関連記事

「口の周りにブツブツ!」、ヘルペスウイルスの種類と子どもの感染症
Vol.144感染症

「口の周りにブツブツ!」、ヘルペスウイルスの種類と子どもの感染症

ヘルペスウイルスは8種類あり、子どもに関わるものは主にHSV-1(口唇ヘルペス)とHHV-6/7(突発性発疹)

  • ヘルペスウイルスは8種類あり、子どもに関わるものは主にHSV-1(口唇ヘルペス)とHHV-6/7(突発性発疹)
  • 単純ヘルペスの初感染では高熱+口内炎(ヘルペス性歯肉口内炎)が特徴的
全年齢
読む
「子どもが突然吐きました!」、ノロウイルスの症状・感染経路・ホームケアを知ろう
Vol.6感染症

「子どもが突然吐きました!」、ノロウイルスの症状・感染経路・ホームケアを知ろう

ノロウイルスの症状、感染経路、ホームケアをQ&Aで解説

  • ノロウイルスは突然の噴水状嘔吐で発症し、多くは1〜3日で改善します。ただし乳幼児は脱水に注意が必要です
  • アルコール消毒は効きにくいため、次亜塩素酸ナトリウム(家庭用塩素系漂白剤の主成分)での消毒と丁寧な手洗いが重要です
全年齢
読む
「RSウイルスに似てる?」、ヒトメタニューモウイルスを知っておこう
Vol.140感染症

「RSウイルスに似てる?」、ヒトメタニューモウイルスを知っておこう

ヒトメタニューモウイルス(hMPV)はRSウイルスに次いで乳幼児の下気道感染症の原因として多い

  • ヒトメタニューモウイルス(hMPV)はRSウイルスに次いで乳幼児の下気道感染症の原因として多い
  • 春先(3〜6月)に流行のピークがあり、RSウイルスとは時期がずれる
全年齢
読む