愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.185
「ミルクを勢いよく吐きます」、肥厚性幽門狭窄症
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
肥厚性幽門狭窄症は、胃の出口(幽門)の筋肉が厚くなり、ミルクが腸に流れなくなる病気です。生後2-8週頃に発症し、噴水状の嘔吐が特徴的です。診断が遅れると脱水や栄養不良を起こすため、早期の発見が重要です。今回は、肥厚性幽門狭窄症についてお伝えします。
Q1.「肥厚性幽門狭窄症とは?」
——生後3週間の赤ちゃんが、ミルクをたくさん吐くようになりました
胃の出口(幽門)の筋肉が異常に厚くなり、ミルクが十二指腸に流れにくくなる病気です [1]。
| 基本情報 | 詳細 |
|---|---|
| 好発時期 | 生後2-8週(ピークは3-5週) |
| 頻度 | 出生1,000人に1-3人 |
| 男女比 | 男児に多い(4-5:1) |
| リスク因子 | 第一子、男児、家族歴、マクロライド系抗菌薬の使用 |
ポイント
- 生後2-8週に発症
- 男児に多い
- 胃の出口が狭くなりミルクが通らなくなる
Q2.「どんな症状が出ますか?」
——普通の吐き戻しとの違いは?
以下の特徴で区別できます [2]。
肥厚性幽門狭窄症
- 吐き方
- 噴水状に勢いよく飛ぶ
- 量
- ミルクの大部分を吐く
- 嘔吐物の色
- 白色(ミルク色)
- タイミング
- 授乳後すぐ〜30分後
- 食欲
- 吐いた後もまた飲みたがる
- 経過
- 日を追うごとに悪化
通常の吐き戻し
- 吐き方
- だらだらと流れ出る
- 量
- 少量
- 嘔吐物の色
- 白色
- タイミング
- 授乳後すぐ
- 食欲
- 通常通り
- 経過
- 改善傾向
| 受診すべきサイン |
|---|
| 噴水状の嘔吐が繰り返される |
| 体重が増えない、減っている |
| おしっこの回数が減った(1日6回未満) |
| ぐったりしている |
| 大泉門が凹んでいる |
ポイント
- 噴水状の嘔吐が最も特徴的
- 吐いた後もまた飲みたがる
- 日を追うごとに悪化する
Q3.「診断はどうやってしますか?」
——検査で分かりますか?
腹部エコー(超音波)検査で診断できます [3]。
| 検査 | 所見 |
|---|---|
| 腹部エコー | 幽門筋の厚さ≧4mm、長さ≧16mm(確定診断) |
| 身体診察 | 右上腹部にオリーブ状の腫瘤を触知(約80%) |
| 血液検査 | 低クロール性代謝性アルカローシス(特徴的) |
「腹部エコーは痛みがなく、短時間で確定診断ができます。経験のある小児科医が触診すると、右上腹部に厚くなった幽門筋を触れることもあります。」
ポイント
- 腹部エコーで確定診断
- 痛みのない検査で短時間
- 血液検査で特徴的な所見あり
Q4.「治療はどうしますか?」
——手術が必要ですか?
手術(ラムステッド幽門筋切開術)が標準治療です [4]。
| 治療の流れ | 内容 |
|---|---|
| ①脱水・電解質の補正 | 点滴で体液バランスを整える(1-2日) |
| ②手術 | 厚くなった幽門筋を切開(所要30-60分) |
| ③術後の授乳 | 手術翌日から少量ずつミルクを再開 |
| ④退院 | 通常、手術後2-3日で退院 |
| 手術の安全性 | 詳細 |
|---|---|
| 成功率 | ほぼ100% |
| 合併症 | 非常にまれ(創部感染、不完全切開等) |
| 傷跡 | 臍の周りの小さな傷(腹腔鏡の場合) |
| 再発 | ほとんどない |
「近年は腹腔鏡下手術が普及しており、傷が小さく、術後の回復も早いです。」
ポイント
- 手術が標準治療(成功率ほぼ100%)
- まず脱水を補正してから手術
- 腹腔鏡手術で傷が小さい
Q5.「手術後の経過は?」
——手術後、普通に成長しますか?
手術後は完全に治り、その後の発育に影響はありません [5]。
| 術後の経過 | 詳細 |
|---|---|
| 授乳の再開 | 手術翌日から少量ずつ増量 |
| 嘔吐 | 術後数日は少量の嘔吐があることも(正常) |
| 体重増加 | 退院後から順調に増加 |
| 長期予後 | 完全に正常。消化器の問題は残らない |
「手術後しばらくは少量のミルクを吐くことがありますが、徐々に改善します。退院後は通常通りの生活に戻れます。」
ポイント
- 手術後は完全に治る
- 長期的な消化器の問題は残らない
- 術後の発育は正常
今号のまとめ
- 肥厚性幽門狭窄症は生後2-8週に発症する病気です
- 噴水状の嘔吐が最も特徴的な症状
- 腹部エコーで確定診断。痛みなく短時間
- 手術の成功率はほぼ100%。腹腔鏡手術が普及
- 手術後は完全に治り、正常に発育します
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