「RSウイルスは陰性でした。でも咳がひどくてゼーゼーしています」、こうしたお子さんの中に、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)が原因のケースがあります。
2001年に発見された比較的新しいウイルスですが、実は以前からずっと存在していたことが分かっています [1]。今回は、hMPVについて詳しくお伝えします。
ヒトメタニューモウイルスって何ですか?#
聞いたことがないウイルスですが、珍しいのですか?
名前はあまり知られていませんが、とても身近なウイルスです。ヒトメタニューモウイルス(human metapneumovirus: hMPV)は、パラミクソウイルス科に属するRNAウイルスです [1]。RSウイルスと同じ科に属しており、症状もよく似ています
| 特徴 | RSウイルス | hMPV |
|---|---|---|
| 発見年 | 1956年 | 2001年 |
| 流行時期 | 秋〜冬(10〜2月) | 春(3〜6月) |
| 好発年齢 | 0〜2歳 | 0〜5歳 |
| 主な症状 | 細気管支炎、肺炎 | 細気管支炎、肺炎、喘鳴 |
| 迅速検査 | あり | あり(2014年保険収載) |
5歳までにほぼ全員が感染するとされ、生涯を通じて繰り返し感染します [2]。成人でも再感染しますが、通常は軽症です
どんな症状が出ますか?重症化しますか?#
風邪との違いは何ですか?
症状は風邪に似ていますが、乳幼児では下気道感染(気管支炎・細気管支炎・肺炎)に進行することがあります [3]
| 年齢 | 典型的な症状 |
|---|---|
| 0〜1歳 | 発熱、咳、鼻汁、喘鳴(ゼーゼー)、細気管支炎 |
| 1〜5歳 | 発熱、咳、喘息様発作、クループ症候群 |
| 学童以上 | 軽い風邪症状(鼻水、咳、微熱) |
| 高齢者 | 肺炎(重症化リスクあり) |
潜伏期間は4〜6日で、RSウイルスより少し長めです [3]。発熱は3〜5日程度続き、咳は1〜2週間残ることもあります
重症化リスクが高いお子さん [4]:
- 早産児・低出生体重児
- 先天性心疾患
- 慢性肺疾患
- 免疫不全
検査で診断できますか?#
RSウイルスの検査みたいに、すぐ分かりますか?
はい。hMPV迅速抗原検査が2014年に保険適用となり、外来で15〜20分程度で結果がわかります [5]
検査のポイント [5]:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 検査方法 | 鼻腔ぬぐい液による迅速抗原検査 |
| 所要時間 | 約15〜20分 |
| 保険適用 | 6歳未満の入院患者(外来では保険適用外の場合あり) |
| 感度 | 約70〜80%(陰性でも否定できない) |
保険適用の条件がRSウイルス検査と同様に制限があるため、すべてのお子さんに検査を行うわけではありません [5]。臨床症状と流行状況から総合的に判断します
治療法はありますか?#
RSウイルスと同じように治療するのですか?
はい、基本的な考え方は同じです。特効薬はなく、対症療法が中心です [6]
治療の基本 [6]:
| 対応 | 内容 |
|---|---|
| 水分補給 | こまめな水分摂取。母乳・ミルクも少量頻回で |
| 鼻吸引 | 鼻閉が強い場合。授乳・睡眠前に特に有効 |
| 解熱剤 | アセトアミノフェン(カロナール)。辛そうなときに |
| 気管支拡張薬 | 喘鳴が強い場合に吸入(効果は限定的) |
| 入院適応 | SpO2低下、哺乳不良、多呼吸、陥没呼吸 |
RSウイルスにはパリビズマブ(シナジス)という予防薬がありますが、hMPVには現時点で予防薬・ワクチンはありません [6]。手洗い・うがいなどの基本的な感染対策が重要です
受診の目安を教えてください#
どうなったら病院に行くべきですか?
以下の症状が見られたら、早めに受診してください [6][7]
| 緊急度 | 症状 |
|---|---|
| すぐに受診 | 呼吸が速い(1歳未満:60回/分以上)、陥没呼吸(肋骨の間がへこむ)、顔色が悪い・唇が紫色 |
| 早めに受診 | ゼーゼー・ヒューヒューが目立つ、水分が十分に取れない、ぐったりしている |
| 翌日でOK | 鼻水・咳はあるが元気、水分・食事が取れている、熱があっても機嫌がよい |
特に生後6ヶ月未満のお子さんは重症化しやすいので、ゼーゼーや哺乳量の低下があれば早めに受診してください [7]。風邪と思って様子を見ていたら急に悪化することもありますので、呼吸の状態をよく観察することが大切です
まとめ#
- hMPVはRSウイルスに似た呼吸器ウイルスで、春先に流行 [1][2]
- 乳幼児は細気管支炎・肺炎に進行する可能性がある [3]
- 迅速検査で診断可能だが、保険適用に制限あり [5]
- 特効薬はなく対症療法が中心。予防薬・ワクチンもなし [6]
- 呼吸困難の兆候(多呼吸、陥没呼吸、チアノーゼ)を見逃さない [6][7]
- 手洗い・うがいが最も有効な予防策