「夜になると"足が痛い"と泣くんです」「毎晩のように痛がるのですが、朝になるとケロッとしています」、こうしたご相談は、外来で非常に多くいただきます。
いわゆる「成長痛」は、子どもの足の痛みの中で最も一般的なものです [1]。しかし、この名前のせいで「成長しているから仕方ない」と片づけられてしまいがちです。一方で、「何か重い病気ではないか」と不安になる保護者の方も少なくありません。
今回は、成長痛について正しく理解し、適切に対処するためのポイントをお伝えします。
成長痛ってどんな症状ですか#
とても典型的な成長痛の訴えですね。成長痛は、3〜12歳のお子さんに見られる、夕方から夜間にかけての両下肢の痛みのことです [1][2]。正式な医学用語としては"Benign nocturnal limb pains of childhood"(小児の良性夜間四肢痛)とも呼ばれます [2]
| 成長痛の特徴 [1][2][3] | 詳細 |
|---|---|
| 好発年齢 | 3〜12歳(ピークは4〜6歳) |
| 頻度 | 小児の約10〜37%が経験する |
| 痛む時間帯 | 夕方〜夜間(特に就寝前〜就寝中) |
| 痛む部位 | 両膝の前面、ふくらはぎ、太ももの前面、すねが多い |
| 左右差 | 両側性(左右どちらも痛むことが多い) |
| 翌朝の状態 | 完全に消失(朝は何事もなかったように元気) |
| 痛みの性質 | 深部の鈍い痛み、うずくような痛み |
| 痛みの持続 | 30分〜数時間 |
| 頻度 | 週に1〜2回〜月に数回(間欠的) |
大事なポイントは、"朝になると完全に消える"ということです [1]。朝起きた時に痛みが残っている場合は、成長痛以外の原因を考える必要があります。また、成長痛では関節そのものが腫れたり、赤くなったり、熱を持ったりすることはありません [1][2]
"成長"が原因で痛いんですか?骨が伸びるから痛い#
実は、これはよくある誤解です。"成長"そのものが痛みの原因ではありません [2][4]。"成長痛"という名前がとても誤解を生みやすいのですが、骨の成長板(骨端線)には痛覚神経がほとんどなく、骨が伸びること自体は痛みを引き起こしません [4]
実際に、成長痛が起こる3〜6歳の時期は、成長速度が特に速いわけではありません [4]。最も成長が速い乳児期や思春期のほうが成長速度は速いのに、成長痛はその時期には少ない。これは、"成長"が原因ではないことの傍証です [2][4]
| 「成長が原因」説への反証 [2][4] | 説明 |
|---|---|
| 骨端線に痛覚がない | 成長板(骨端線)には痛覚神経がほとんどない [4] |
| 成長速度との不一致 | 成長痛のピーク(4〜6歳)と最も成長が速い時期(乳児期・思春期)がずれている [4] |
| 身長との相関なし | 背が高い子に成長痛が多いというデータはない [2] |
| 片側の骨だけ伸びるわけではない | 両側同時に成長しているのに、痛む場所が日によって変わる [2] |
では、何が原因なのか。現在最も有力とされているのは、日中の活動(走る・跳ぶ・遊ぶ)による筋肉の疲労・過負荷です [2][5]
| 有力な原因仮説 [2][4][5] | 説明 |
|---|---|
| 筋疲労・過活動説(最有力) | 日中の激しい運動による下肢の筋疲労が、夕方以降に痛みとして現れる [2][5] |
| 痛み閾値の低下説 | 成長痛のある子は痛み閾値(痛みを感じやすさ)が低い傾向がある [5] |
| 関節可動域の過大説 | 関節が柔らかすぎる(過可動性)ことが筋肉への負担を増やす [4] |
| 心理的要因 | ストレスや不安が痛みの感じ方に影響する可能性 [5] |
| ビタミンD不足 | ビタミンD不足との関連を示す報告もあるが、まだ確定的ではない [6] |
Evans et al.(2004)の研究では、成長痛のある子どもは、そうでない子どもに比べて痛みの閾値が低い(痛みを感じやすい)ことが報告されています [5]。つまり、同じ量の運動をしても、成長痛のある子はより痛みを感じやすいということです。"大げさに言っている"のではなく、本当に痛いのです
他の病気と見分けるポイントはありますか?心配な症状は#
とても大事な質問です。成長痛は"除外診断"です [1][3]。つまり、他の病気がないことを確認して初めて「成長痛」と診断できます。以下のような症状がある場合は、成長痛ではない可能性があるため、必ず受診してください [1][3][7]
| 成長痛の特徴 | 心配な症状(成長痛ではない可能性) |
|---|---|
| 両側に痛む | 片側だけに痛む [1][3] |
| 夜間のみ痛む | 朝も痛みが残る、日中も痛む [1] |
| 翌朝には消える | 痛みが持続する [1][3] |
| 腫れ・発赤・熱感なし | 腫れ・発赤・熱感がある [1][7] |
| 歩行は正常 | 跛行(びっこをひく)がある [3][7] |
| 特定の場所に限局しない | いつも同じ場所が痛む [7] |
| 活動の制限なし | 痛みで運動や遊びができない [3] |
| 除外すべき疾患 | 特徴 | 検査 |
|---|---|---|
| 若年性特発性関節炎(JIA) | 関節の腫れ・こわばり、朝のこわばりが6週間以上持続 [7] | 血液検査(CRP、ESR)、関節エコー |
| 骨肉腫 | 思春期に多い。一箇所の持続的な骨の痛み、腫脹 [8] | X線、MRI |
| 白血病 | 骨痛、倦怠感、発熱、あざができやすい、顔色不良 [8] | 血液検査(CBC、末梢血塗抹) |
| 骨髄炎 | 限局した骨の痛み、発熱、局所の腫れ・発赤 [7] | 血液検査(CRP)、MRI |
| ペルテス病 | 4〜8歳男児に多い。股関節痛、跛行 [3] | X線、MRI |
| オスグッド・シュラッター病 | 思春期。膝のお皿の下の痛み・腫脹 [3] | 臨床診断(X線で確認) |
| 単純性股関節炎 | 3〜10歳。急に股関節〜膝が痛くなり跛行 [3] | X線、エコー |
繰り返しますが、成長痛の最大の特徴は"翌朝には完全に消える"ことです [1]。逆に、朝も痛い、痛みがどんどん強くなる、同じ場所がずっと痛い、腫れがある、これらは"レッドフラッグ"(危険サイン)です [3][7]。迷ったら受診してください
成長痛が出たとき、家でどう対処すればいいですか#
成長痛の対処法は、お子さんの痛みを和らげてあげることが中心です [1][2][9]。特効薬はありませんが、いくつかの方法が効果的です
| 対処法 | 具体的な方法 | エビデンス |
|---|---|---|
| マッサージ | 痛む部位をやさしくさする・もむ [1][9] | 多くの保護者が効果を実感 [9] |
| 温罨法(おんあんぽう) | ホットタオル、湯たんぽ、温かいお風呂 [1][9] | 筋肉の緊張緩和 [9] |
| ストレッチ | 就寝前に下肢のストレッチ(大腿四頭筋、ハムストリング、ふくらはぎ)[2][9] | Baxter et al.が有効性を報告 [9] |
| 鎮痛薬 | アセトアミノフェン(カロナール)やイブプロフェン [1][2] | 痛みが強い場合に頓用で使用 |
| 安心させる | 「大丈夫だよ」と抱きしめる、そばにいてあげる [1] | 心理的安心が痛みの軽減に効果 [5] |
特にストレッチは予防にも効果があります [9]。Baxter et al.(2016)の研究では、毎晩就寝前にふくらはぎと大腿のストレッチを行ったグループで、成長痛の頻度と強度が有意に減少したと報告されています [9]
| ストレッチ | 方法 | 時間 |
|---|---|---|
| ふくらはぎ | 壁に手をつき、片足を後ろに引いてかかとを床につけたまま伸ばす | 左右各20〜30秒 |
| 太もも前面 | 片足立ちで、反対の足首を手で持ってお尻に引き寄せる | 左右各20〜30秒 |
| 太もも裏面 | 座って足を伸ばし、つま先に向かって手を伸ばす | 20〜30秒 |
鎮痛薬については、痛みが強い場合はアセトアミノフェン(カロナール)を頓用で使っていただいてかまいません [1][2]。ただし、毎日のように鎮痛薬が必要な場合は、成長痛以外の原因を再評価する必要がありますので、受診してください
どんなときに病院を受診すべきですか#
以下のいずれかに当てはまる場合は、早めに小児科を受診してください [1][3][7][8]
| 受診すべきサイン | 理由 |
|---|---|
| 痛みが2週間以上持続する | 成長痛は間欠的。持続する痛みは他の疾患の可能性 [1][3] |
| 朝も痛みが残る | 成長痛は翌朝に消える。朝の痛みはレッドフラッグ [1][7] |
| 同じ場所がいつも痛む | 成長痛は場所が変わる。固定された痛みは骨・関節の異常を疑う [3][7] |
| 片側だけ痛む | 成長痛は両側性が多い [1] |
| 腫れ・発赤・熱感がある | 関節炎、骨髄炎などの炎症を疑う [7] |
| 跛行(びっこ)がある | 成長痛では歩行は正常 [3][7] |
| 発熱がある | 感染症、悪性腫瘍の可能性 [7][8] |
| 体重減少がある | 悪性腫瘍、慢性疾患の可能性 [8] |
| 痛みで活動できない | 成長痛では日中の活動は制限されない [3] |
| 痛みがだんだん強くなる | 進行性の痛みは精密検査が必要 [7][8] |
| あざができやすい | 白血病など血液疾患の可能性 [8] |
もう一つ、"親の直感"も大切にしてください [3]。"いつもの成長痛と何か違う"と感じたら、それは受診の十分な理由になります。お子さんを一番よく見ているのは保護者の方ですから
逆に、"夕方〜夜だけ痛む、翌朝には消える、両側性、腫れなし"であれば、多くの場合は成長痛です [1][2]。過度に心配する必要はありませんが、初回は一度小児科で診察を受けて、他の疾患がないことを確認しておくと安心です
まとめ#
- 成長痛は3〜12歳に多い、夕方〜夜間の両下肢の痛み [1][2]
- 翌朝には完全に消えるのが最大の特徴 [1]
- 「成長」が原因ではなく、筋疲労・過活動が有力な原因 [2][4][5]
- 対処法はマッサージ、温罨法、ストレッチが基本。就寝前ストレッチは予防にも有効 [9]
- 片側のみ、朝も痛い、腫れ、跛行、発熱がある場合は他の病気の除外が必要 [1][3][7]
- 痛みが2週間以上持続したり、どんどん強くなる場合は早めに受診を [7][8]