「娘がほとんど食べなくなりました」「食べた後にトイレにこもっています」、摂食障害は命に関わることもある深刻な精神疾患です。近年、発症年齢の低年齢化が指摘されており、小学生での発症も珍しくなくなっています [1]。早期発見・早期治療が予後を大きく左右します。
摂食障害とはどんな病気ですか?#
| 種類 | 主な特徴 |
|---|---|
| 神経性やせ症(AN) | 体重増加への強い恐怖、極端な食事制限、やせ [2] |
| 神経性過食症(BN) | 過食+排出行動(嘔吐・下剤等) [2] |
| 過食性障害(BED) | 過食発作を繰り返すが排出行動なし [2] |
| ARFID | 食への興味の欠如、感覚的嫌悪による食事制限 [2] |
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 有病率(AN) | 生涯有病率 約0.3〜1%(女性) [1] |
| 有病率(BN) | 生涯有病率 約1〜3%(女性) [1] |
| 好発年齢 | 14〜19歳が多いが低年齢化傾向 [1] |
| 男女比 | 女性に圧倒的に多い(約10:1)が男児も罹患する [1] |
| 死亡率(AN) | 精神疾患の中で最も高い(約5〜10%) [3] |
どのようなサインに注意すべきですか?#
| 身体面のサイン | 行動面のサイン |
|---|---|
| 急激な体重減少 | 食事を避ける、少量しか食べない |
| 成長曲線の停滞・低下 | 食後にトイレに行く |
| 月経の停止・遅延 | カロリーを過度に気にする |
| 疲労感、めまい | 過度な運動 |
| 皮膚の乾燥、うぶ毛の増加 | 体重を頻繁に測る |
| 手の甲のたこ(嘔吐の証拠) | 食品のラベルを過度にチェック |
緊急受診が必要なサイン
- BMIが年齢別の3パーセンタイル未満
- 心拍数が50回/分未満
- 失神、意識障害
- 電解質異常(低カリウム等)
- 食事を全く摂れない
ポイント
- 成長曲線の変化が最も重要な早期発見の手がかり [4]
- 食後のトイレ、過度な運動は要注意サイン
- 上記の緊急サインがあればすぐに受診を
摂食障害の原因は何ですか?#
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 遺伝的要因 | 遺伝率は約50〜80%(AN) [5] |
| 脳の神経伝達物質 | セロトニン系の機能異常 [5] |
| 心理的要因 | 完璧主義、低い自尊感情、身体イメージの歪み [4] |
| 社会的要因 | やせ礼賛文化、SNS、ダイエット情報 [4] |
| きっかけ | ダイエット、いじめ、部活での体重管理、転校 [4] |
ダイエットが摂食障害の最大のリスク因子です [4]。子どもに安易なダイエットをさせないでください。
治療はどのように行いますか?#
| 治療の柱 | 内容 |
|---|---|
| 栄養回復 | 安全な体重増加、管理栄養士による食事計画 [3] |
| 家族療法(FBT) | 家族が食事管理をリードする。小児ANに最もエビデンスあり [6] |
| 認知行動療法(CBT-E) | BNに対して高いエビデンス [3] |
| 身体管理 | 心電図、電解質、骨密度のモニタリング [3] |
| 入院治療 | 重症例(バイタル不安定、自殺リスク等) [3] |
家族療法(FBT)の3段階
- 第1段階:親が食事管理をリードし、体重回復を目指す
- 第2段階:食事管理を段階的に本人に戻していく
- 第3段階:通常の思春期の課題(自立等)に取り組む
家庭で気をつけることは?#
| 予防のためにできること | 具体的な方法 |
|---|---|
| 体型への否定的なコメントを避ける | 「太った?」「やせた方がいい」は禁句 |
| 家族で一緒に食事をする | 規則正しい食事習慣の土台を作る |
| 多様な体型を肯定する | 「体は人それぞれ」と伝える |
| 自己肯定感を育てる | 外見以外の長所を認める |
| 安易なダイエットをさせない | 成長期のダイエットの危険性を知る |
回復期の家族の役割
- 食事を責めない、食事中の緊張を減らす
- 治療チームと密に連携する
- 親自身のメンタルヘルスにも配慮する
- きょうだいへのケアも忘れない
ポイント
- 体型への否定的なコメントは摂食障害のリスクを高める [4]
- 家族の食卓を安全な場所にすることが大切
- 回復には時間がかかるため、長期的な支援が必要
今号のまとめ#
- 摂食障害は命に関わりうる深刻な精神疾患
- 成長曲線の変化が早期発見の鍵
- ダイエットが最大のリスク因子
- 小児のANには家族療法(FBT)が第一選択
- 体型への否定的コメントを避けることが予防に重要