愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.172
「薬で発疹が出ました」、小児の薬物アレルギー
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「薬を飲んだら発疹が出ました。薬アレルギーでしょうか」。外来でとても多い相談です。実際に検査で薬物アレルギーと確定するのはごく一部で、ウイルス感染そのものによる発疹のことも珍しくありません。今回は小児の薬物アレルギーについて整理します。
Q1.「薬を飲んだら発疹が出ました。薬アレルギーですか?」
——抗菌薬を飲み始めて3日目に発疹が出ました
薬の服用後に発疹が出た場合、原因は3つ考えられます [1]。
頻度
- ウイルス性の発疹
- 最も多い
- 薬疹(アレルギー性)
- やや稀
- 薬の副作用(非アレルギー性)
- まれ
特徴
- ウイルス性の発疹
- 風邪のウイルスによる発疹。薬とは無関係
- 薬疹(アレルギー性)
- 薬に対する免疫反応
- 薬の副作用(非アレルギー性)
- 用量依存性の反応
「一番多いのはウイルス性の発疹です。アモキシシリン服用中にEBウイルス感染症があると高率で発疹が出ますが、これは薬アレルギーではありません [1]。」
ポイント
- 薬の後の発疹=薬アレルギーとは限らない
- ウイルス性の発疹が最も多い
- 正確な診断のためにかかりつけ医に相談
Q2.「薬物アレルギーの症状は?」
——どんな症状が出たら薬アレルギーを疑うべきですか?
薬物アレルギーの症状は軽症から重症まで幅があります [2]。
症状
- 軽症
- 限局性の発疹、かゆみ
- 中等症
- 全身の蕁麻疹、広範な発疹
- 重症
- アナフィラキシー(呼吸困難、血圧低下)
- 最重症
- スティーブンス・ジョンソン症候群(皮膚粘膜の水疱・びらん)
対応
- 軽症
- 薬の中止、経過観察
- 中等症
- 薬の中止、受診
- 重症
- 救急対応(エピペン、119番)
- 最重症
- 緊急入院
| すぐに受診すべきサイン |
|---|
| 唇・口の中に水疱ができる |
| 目が充血し、痛みがある |
| 高熱(38.5℃以上)を伴う発疹 |
| 呼吸が苦しい |
| 顔が腫れる |
ポイント
- 軽症の発疹から重症のアナフィラキシーまで幅がある
- 粘膜症状(口・目)を伴う発疹は要緊急対応
- 高熱+発疹の組み合わせは速やかに受診
Q3.「小児で多い薬物アレルギーは?」
——どの薬にアレルギーが出やすいですか?
小児で薬物アレルギーの報告が多い薬は以下の通りです [3]。
| 薬の種類 | アレルギーの特徴 |
|---|---|
| ペニシリン系抗菌薬 | 小児で最も報告が多い。ただし真のアレルギーは数%程度 |
| セフェム系抗菌薬 | ペニシリンとの交差反応は1-2%程度(側鎖の類似性で変動) |
| NSAIDs | アスピリン、イブプロフェンなど。喘息悪化に注意 |
| 抗てんかん薬 | カルバマゼピン等で重症薬疹のリスク |
| 造影剤 | CT検査時に使用。予防投薬が可能 |
「ペニシリンアレルギーと言われている方の約90%は、きちんと評価し直すと実はアレルギーではない、と報告されています [3]。不必要に抗菌薬の選択肢を狭めないためにも、専門施設での再評価が大切です。」
ポイント
- ペニシリン系が最も報告が多い
- ペニシリンアレルギーの約90%は実際にはアレルギーではない
- 正確な評価が重要
Q4.「薬物アレルギーの検査はできますか?」
——本当に薬アレルギーかどうか、検査で分かりますか?
薬物アレルギーの検査にはいくつかの方法がありますが、万能な検査はありません [4]。
内容
- 血液検査(特異的IgE)
- 一部の薬のみ測定可能
- 皮膚テスト
- プリックテスト、皮内テスト
- 薬物負荷試験
- 実際に少量から薬を投与
- パッチテスト
- 遅延型反応の評価
注意点
- 血液検査(特異的IgE)
- 感度が低い(陰性でも否定できない)
- 皮膚テスト
- 一部の薬で有用(ペニシリン等)
- 薬物負荷試験
- 最も確実だが、アレルギー専門施設で実施
- パッチテスト
- 接触性皮膚炎の診断に有用
「最も確実なのは薬物負荷試験(実際に少量から薬を試す)ですが、アレルギー専門施設で安全管理下に行う必要があります。」
ポイント
- 万能な検査はない
- 薬物負荷試験が最も確実
- アレルギー専門施設での評価が推奨
Q5.「薬物アレルギーがある場合、どう対応すればいいですか?」
——薬アレルギーがある場合、他の薬は使えますか?
薬物アレルギーと診断された場合の対応です [5]。
| 対応 | 内容 |
|---|---|
| ①記録を残す | 薬の名前、症状、発症時期をメモ |
| ②お薬手帳に記載 | アレルギー歴を必ず記載 |
| ③受診時に伝える | 全ての医療機関で必ず伝える |
| ④代替薬の確認 | かかりつけ医と代わりの薬を確認 |
| ⑤アレルギーカードの携帯 | 緊急時に備える |
「ペニシリンアレルギーがあっても、セフェム系との交差反応は1-2%程度とされています [5]。多くの場合は使用可能ですが、第1世代など側鎖が似ている薬はリスクがやや上がります。個別にかかりつけ医と相談してください。」
ポイント
- アレルギー歴はお薬手帳に必ず記載
- 代替薬はかかりつけ医に確認
- ペニシリン系とセフェム系の交差反応は低い
今号のまとめ
- 薬の後の発疹=薬アレルギーとは限らない(ウイルス性が最多)
- 粘膜症状(口・目)+高熱+発疹は緊急受診
- ペニシリンアレルギーの約90%は実際にはアレルギーではない
- 薬物負荷試験が最も確実な診断法
- お薬手帳にアレルギー歴を必ず記載してください
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- Vol.167「アナフィラキシー」
- Vol.155「抗菌薬の正しい使い方」
- Vol.157「ワクチンの副反応」
- Vol.139「EBウイルス感染症」
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