愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.281
「ママがいないとダメ!」、分離不安症の理解と対応
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「保育園に預けるとき、毎朝大泣きで離れられません」「トイレにまでついてきます」、親と離れることへの不安は小さな子どもにとって自然なことですが、年齢に不相応な強い分離不安が4週間以上続き、日常生活に支障をきたす場合は分離不安症として治療の対象になります [1]。
Q1.「正常な分離不安と分離不安症の違いは?」
——保育園で泣くのは普通ですよね? いつ心配すべきですか?
分離不安は発達の正常な過程で、生後8か月〜3歳頃にピークを迎えます [2]。問題は年齢に不相応な強さで長く続く場合です。
| 正常な分離不安 | 分離不安症 |
|---|---|
| 生後8か月〜3歳頃が中心 [2] | 学童期以降も持続 [1] |
| 短時間で落ち着く | 長時間泣き続ける |
| 親がいなくても遊べるようになる | 親がいないと何もできない |
| 特定の場面に限る | あらゆる分離場面で出現 |
| 日常生活への支障は軽度 | 登園・登校が困難になる |
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 有病率 | 小児の約3〜5% [1] |
| 好発年齢 | 7〜9歳 [1] |
| 男女比 | ほぼ同等〜やや女児に多い [1] |
| 診断基準の持続期間 | 小児で4週間以上 [1] |
| 経過 | 適切な治療で約70〜80%が改善 [3] |
ポイント
- 生後8か月〜3歳の分離不安は正常な発達過程 [2]
- 学童期以降に強い分離不安が4週間以上続くなら受診を [1]
- 適切な治療で約70〜80%が改善する [3]
Q2.「分離不安症の具体的な症状は?」
——どのような行動が分離不安症の症状ですか?
DSM-5-TRでは以下の8つの症状のうち3つ以上を満たす必要があります [1]。
| 症状 | 具体例 |
|---|---|
| 愛着対象からの分離への過度な苦痛 | 親が出かけると泣き叫ぶ、パニックになる |
| 愛着対象を失うことへの持続的な心配 | 「ママが事故に遭ったらどうしよう」 |
| 分離をもたらす出来事への心配 | 「誘拐されるかもしれない」 |
| 分離を恐れて外出を拒否 | 登校拒否、お泊まり会に行けない |
| 一人でいることへの恐怖 | 一人で部屋にいられない |
| 愛着対象なしで就寝できない | 親と一緒でないと眠れない |
| 分離に関する悪夢 | 親がいなくなる夢を繰り返す |
| 分離時の身体症状 | 腹痛、頭痛、嘔吐 |
ポイント
- 8つの症状のうち3つ以上、4週間以上で診断 [1]
- 身体症状(腹痛・頭痛)を伴うことが多い
- 登校しぶりの背景に分離不安があることも多い
Q3.「分離不安と不登校は関係ありますか?」
——分離不安症の子は不登校になりやすいですか?
分離不安症は小児の不登校の主要な原因の一つです [4]。特に小学校低学年の不登校では分離不安が背景にあることが多いです。
分離不安による不登校
- 年齢
- 低学年に多い
- 不安の対象
- 親から離れること
- 休日の様子
- 親と一緒なら元気
- 身体症状
- 登校前に出現、帰宅後消失
- 親への態度
- 過度にまとわりつく
その他の不登校
- 年齢
- 高学年〜中学生
- 不安の対象
- 学校環境そのもの
- 休日の様子
- 休日も不活発なことがある
- 身体症状
- 持続することがある
- 親への態度
- さまざま
「月曜日の朝に腹痛を訴え、学校を休むと元気になる、こうしたパターンは分離不安を疑うサインです [4]。」
ポイント
- 低学年の不登校の背景に分離不安があることが多い [4]
- 登校前の身体症状が帰宅後に消失するパターンに注目
- 親と一緒なら元気、という特徴がある
Q4.「治療はどうすればよいですか?」
——分離不安症はどう治療するのですか?
段階的な分離練習を含む認知行動療法(CBT)が第一選択です [3]。
| 治療法 | 内容 |
|---|---|
| 認知行動療法(CBT) | 段階的な分離練習、不安の対処法を学ぶ [3] |
| 親への心理教育 | 分離時の対応方法、過保護にならない関わり方 [5] |
| 学校との連携 | 登校支援計画、保健室登校の活用 [4] |
| 薬物療法 | 重症例にSSRI(CBTと併用) [6] |
| 段階的な分離練習の例 |
|---|
| 1. 親が同じ部屋で別の活動をする |
| 2. 親が隣の部屋にいる(ドアは開けたまま) |
| 3. 親が短時間(5分)外出する |
| 4. 外出時間を徐々に延ばす |
| 5. お泊まりなど長時間の分離に挑戦 |
ポイント
- 段階的な分離練習が治療の柱 [3]
- 一気に離すのではなく、少しずつ慣れさせる
- 学校との連携(保健室登校等)も重要 [4]
Q5.「家庭でできる工夫は?」
——毎朝の登園が本当につらいです。何かコツはありますか?
日々の関わり方にいくつかの工夫があります [5]。
| 家庭での工夫 | 具体的な方法 |
|---|---|
| お別れの儀式を決める | ハイタッチ、ハグなど短い定番の儀式 |
| 別れ際を短くする | 長引かせると不安が増す |
| 必ず戻ることを伝える | 「お迎えに来るからね」と具体的に |
| 移行対象を持たせる | 親の写真、お守りなど安心できる物 |
| 成功体験を褒める | 「今日は泣かずにバイバイできたね」 |
| 避けるべき対応 |
|---|
| こっそりいなくなる(信頼を損なう) |
| 「泣かないの!」と叱る |
| 泣くからといって登園を取りやめる |
| 別れ際に親が不安そうにする |
ポイント
- お別れの儀式を短く、一貫して行う
- こっそりいなくなるのは逆効果
- 親が毅然とした態度で送り出すことが大切 [5]
今号のまとめ
- 生後8か月〜3歳の分離不安は正常な発達過程
- 学童期以降の強い分離不安が4週間以上続くなら受診を
- 段階的な分離練習を含むCBTが第一選択
- 家庭では短い別れの儀式を一貫して行う
- 低学年の不登校の背景に分離不安がないか確認を
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- Vol.082「子どもの不安と分離不安」
- Vol.280「子どもの不安障害」
- Vol.134「発達障害と不登校」
- Vol.098「夜泣き対策」
ご質問・ご感想
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愛育病院 小児科 おかもん先生
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