産後のお母さんの50~70%が腰痛を訴えています [1]。「育児中だから仕方ない」と放置すると慢性化して、数年単位で苦しむことになりかねません。今のうちに対策しておきましょう。
妊娠・出産のダメージに、育児の負荷が重なっている#
腰痛と肩こりがひどい。その原因は、妊娠・出産の影響と育児動作の影響の両方が重なっていることにあります。
リラキシンというホルモンが産後数か月間靭帯を緩めた状態が続いています。腹筋群は妊娠で伸びて弱くなっています。そこに、抱っこ(特に片手抱き)、授乳時の前かがみ姿勢、おむつ替えの中腰、夜間授乳による睡眠不足(筋肉の回復を妨げる)が加わります [1]。
授乳姿勢の工夫だけで、肩こりは大幅に軽減できます。赤ちゃんを自分に引き寄せる(自分が赤ちゃんに近づかない)。クッションや授乳枕で赤ちゃんの高さを調整する。背中を丸めず背もたれに寄りかかる [2]。抱っこ紐は赤ちゃんの頭にキスできる高さが正しい位置で、腰ベルトは骨盤の上にしっかり締めてください。
「骨盤矯正」のエビデンスは、正直なところ限定的です#
率直に言います。「産後の骨盤矯正」のエビデンスは限定的です。
骨盤は分娩後自然に元に戻る過程をたどり、リラキシンの影響は産後3~6か月で減少します。「骨盤が開いたまま」という表現は解剖学的に正確ではありません。骨盤ベルトは痛みの軽減に一定の効果がある可能性が示されていますが、エビデンスの質は高くありません [4]。
確実に効果があるのは、骨盤底筋トレーニング(ケーゲル体操)、コア筋群のトレーニング、全身の軽い運動(ウォーキング)です。
こんな症状があったら、整形外科に行ってください#
産後であることを伝えれば、それに配慮した治療を受けられます。痛みを我慢し続ける必要はありません。
今号のまとめ#
- 産後の腰痛は50~70%の母親が経験。放置すると慢性化のリスク
- 授乳姿勢の工夫(クッションで高さ調整、背もたれに寄りかかる)で肩こりを軽減
- 毎日5分のストレッチ(骨盤傾斜運動、キャットカウ、肩回し)が効果的
- 「骨盤矯正」のエビデンスは限定的。まず自宅トレーニングから
- 3か月改善しない、足のしびれがある場合は整形外科を受診