愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.355
「誰も教えてくれなかった」、産褥期の体の変化を全部教えます
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
出産という大仕事を終えた体は、妊娠前の状態に戻ろうとしています。この回復期間を「産褥期(さんじょくき)」と呼び、おおむね産後6~8週間を指します。子宮の収縮、悪露、会陰の痛み、抜け毛。体のあちこちで変化が起きているのに、そのことを詳しく教えてもらう機会は意外と少ないものです。「知っていれば怖くない」。それがこの記事のいちばん伝えたいことです。
出血、お腹の痛み、傷の痛み。全部起きていて、全部正常です
もう3週間経つのに出血が続いている。授乳のたびにお腹が痛くなる。不安ですよね。でも、どちらも正常の範囲です。産褥期に起きる変化をまとめてお伝えします。
悪露(おろ)は、子宮内に残った血液や組織片が排出されるもので、子宮が回復しているサインです。産後13日は鮮やかな赤色で量が多く、産後4日2週間で茶色っぽく変化し量が減り、産後26週間でクリーム色から透明になって少量に。通常46週間で完全に止まります [1]。
後陣痛は、スイカほどの大きさだった子宮がこぶし大に戻ろうとする収縮の痛みです。授乳中にオキシトシン(子宮収縮ホルモン)が出るため、授乳時に痛みが強まることがあります。経産婦のほうが強い傾向があり、通常は産後2~3日がピークで1週間程度で治まります [1]。
会陰切開や裂傷の痛みは産後12週間がピーク。多くは34週間で落ち着きます。円座クッションを使う、トイレ後にぬるま湯で洗い流す、処方された鎮痛薬は我慢せずに使う(授乳中でも使えるものがあります)、といった工夫で和らげられます。帝王切開の場合は完全な回復に6~8週間かかります [2]。
産後2週間を過ぎても鮮やかな赤色の出血が続く。レモン大以上の血の塊が出る。悪臭を伴う。38度以上の発熱がある。傷の赤み・腫れ・浸出液がある。これらの症状がある場合は産婦人科に連絡してください。
髪がごっそり抜ける。骨盤がグラグラする。でも一時的です
シャワーのたびに排水溝が真っ黒。歩くと腰が不安定。怖くなりますよね。でもどちらも多くの方が経験する変化で、一時的なものです。
産後の抜け毛は「分娩後脱毛症」と呼ばれます。妊娠中はエストロゲンの影響で本来抜けるはずの髪が留まっていますが、出産後にエストロゲンが急落すると一気に抜け始めます [3]。産後23か月頃から始まり、46か月がピーク、12か月頃までにほぼ回復します。「妊娠中に抜けなかった分がまとめて抜けているだけ」で、新しい髪は同時に生えてきています。
骨盤の不安定感は、妊娠中にリラキシンなどのホルモン変化や靭帯のゆるみ、力学的な負荷が複合して起こると考えられています [4]。産後3~6か月で徐々に改善します。骨盤底筋体操(ケーゲル体操)を早期から始めると回復が早まります [5]。骨盤ベルトは一時的な安定感を得るために使えますが、常時つけっぱなしにする必要はありません。
抜け毛が12か月を超えても回復しない場合は、甲状腺機能や鉄欠乏性貧血の検査を受けてみてください。骨盤矯正を謳う施術は科学的根拠が十分でないものも多いため、まずは産婦人科や整形外科に相談を。
いつから何をしていいのか。大まかな目安をお伝えします
いつから運動していいのか、お風呂に入っていいのか。わからないことだらけだと思います。体の回復には個人差がありますが、大まかな目安をお伝えします。
入浴は、悪露が落ち着くまで(通常34週間)はシャワーにしておくのが安全です。1か月健診で医師の許可が出ればお風呂に浸かって大丈夫。運動は、ケーゲル体操は産後すぐから始められます。ウォーキングなどの軽い運動は産後23週間から体調を見ながら。ランニングや激しい運動は産後3か月以降が目安です。
性交渉は一般的に産後6~8週間の1か月健診後から許可されることが多いですが、体と心の準備ができてからで大丈夫です。痛みがある場合は無理をしないでください。

おかもん先生より
産褥期は「何もしない」のが仕事です。家事は最低限にして、体の回復に集中してください。この時期に無理をすると、回復が遅れて結果的に大変な期間が長くなります。
今号のまとめ
- 産褥期(産後6~8週間)は体が妊娠前に戻ろうとする回復期間
- 悪露は4~6週間で終わる。色の変化を追うと回復の進み具合がわかる
- 会陰の痛みや後陣痛は正常な経過。鎮痛薬の使用をためらわないで
- 産後の抜け毛は一時的で、12か月頃にはほぼ回復する
- 知っていれば怖くない。予想外の変化に驚いたときは遠慮なく産婦人科に相談を
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ご質問・ご感想
「産後の体の変化でこんなことに驚きました」「この症状は大丈夫?」など、体験談やご質問がございましたら、お気軽にお寄せください。
愛育病院 小児科 おかもん先生
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