午前3時。授乳を終えて、やっとベッドに横になる。次の授乳まで2時間あるはずだ。でも目が冴えて眠れない。眠らなきゃと焦るほど、眠れなくなる。
産後の悩みで最も多いのが「睡眠不足」です。ある調査では45.4%のお母さんが挙げています [1]。今回は、産後の睡眠不足がからだとこころにどんな影響を与えるのか、そしてどうすれば少しでも眠れるのかを一緒に考えましょう。
正直に言います。毎日3~4時間では、からだはもちません#
授乳が2~3時間おきで、まとまって眠れた記憶がない。その状態が続いているなら、率直に言って、からだには限界が来ています。ただし、それはあなたの頑張りが足りないからではありません。新生児の生理的なリズムがそうさせているだけです。
新生児の睡眠は多相性(ポリフェージック)で、大人のような昼夜のリズムが確立するのは生後3~4か月頃。産後しばらくはお母さんの睡眠が「こま切れ」になるのは、避けられない構造的な問題です。
こま切れ睡眠の問題は、総睡眠時間だけでは測れません。深い睡眠(徐波睡眠)に入るには少なくとも90分程度の連続した睡眠が必要です。2~3時間おきに起こされると深い睡眠に十分到達できず、脳の回復が追いつかなくなります [2]。
慢性的な睡眠不足は、「さっき何をしようとしていたか忘れる」認知機能の低下、些細なことで感情が爆発する扁桃体の過敏化、免疫力の低下、不安感の増大を引き起こします。そして何より、睡眠障害は産後うつのリスクを明らかに高めることが研究で示されています [3]。
「寝られるときに寝なさい」が難しいのは、わかっています#
赤ちゃんが寝ているうちに家事をしないと、と思ってしまう。不安や緊張で赤ちゃんが寝ていても自分は眠れない。「寝られるときに寝なさい」というアドバイスは、半分正しくて半分は現実的ではありません。
より現実的な目標は「24時間のうちに、4時間以上の連続睡眠を1回確保する」ことです。4時間は、深い睡眠を含む睡眠サイクルを少なくとも2回まわすために必要な時間です [2]。これを最低ラインにしてください。
「起こしてくれれば手伝う」は、じつは負担を増やしている#
パートナーの「起こしてくれれば手伝う」という言葉。悪気はないのだと思います。でもそれは、「起こす」という仕事をお母さんに追加しているんです。交代制は「起こす側の負担」をなくすことがポイントです。
効果的なシフト制の例を紹介します。21時翌2時はお母さんが「確実に眠れる時間」。この間の授乳やおむつ替えはパートナーが担当します(搾乳した母乳またはミルクを使用)。2時7時はパートナーが眠る時間で、お母さんが授乳を担当します。これで双方が5時間の連続睡眠を確保できます。
いちばん大事なのは「アラームで自分で起きる」ルールです。パートナーが自分のアラームで起きて、自分のシフトを担当する。お母さんが管理者にならない仕組みにすること。それが続けるための鍵です [4]。
授乳中にウトウトする。それは限界のサインです#
授乳中に意識が飛びそうになる。赤ちゃんを落としそうで怖い。そう感じたことがあるなら、それは体が「もう限界です」と教えてくれているSOSです。
特にソファでの授乳中に寝落ちすると、赤ちゃんの転落事故や窒息のリスクが高まることが知られています [5]。
港区には産後ケア事業(宿泊型・日帰り型)があり、助産師が夜間の授乳を代行してくれます。「まだ頑張れる」と思う前に、使える制度は使ってください。
今号のまとめ#
- 産後の睡眠不足は悩みの第1位(45.4%)であり、構造的に避けられない問題
- こま切れ睡眠は脳の回復を妨げ、記憶力低下、感情の不安定、免疫低下を引き起こす
- 睡眠不足は産後うつのリスク因子であり、「気合い」では解決しない
- 最低ラインは「24時間に4時間以上の連続睡眠」
- パートナーとの交代制は「管理者にならない仕組み」がポイント