愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.124
「目が合わないんです」、視線が合いにくいお子さんの理解
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「うちの子、目が合わない気がするんです」。健診でよくいただく相談です。ネット検索で「自閉症」という言葉に当たって、不安になって来られる方も多いです。視線の合いにくさはたしかにASDの早期サインの一つに挙げられていますが、それだけでASDと判断できるものではありません。今回は、視線がどう育っていくか、気にしておくべきサインはどこかを、外来で話している順番で整理します。
Q1.「赤ちゃんの視線はいつ頃から合うようになりますか?」
——生後2ヶ月の赤ちゃんです。目が合っている気がしないのですが……
赤ちゃんの視線の発達には段階があります [1]。生後すぐは視力が0.01-0.02程度で、20-30cmの距離しかピントが合いません。生後2-3ヶ月頃から、人の顔をじっと見つめる『注視』が安定してきます。
| 月齢 | 視線の発達 |
|---|---|
| 新生児 | 20-30cmの距離で顔を一瞬見る |
| 2-3ヶ月 | 人の顔を注視する、追視ができる |
| 4-6ヶ月 | 相手の目を見て微笑む(社会的微笑の成熟) |
| 6-9ヶ月 | 視線を使ってコミュニケーション(共同注意の芽生え) |
| 9-12ヶ月 | 指さしの方向を目で追う |
ポイント
- 視線が安定するのは生後2-3ヶ月頃から
- 4-6ヶ月で目を見て微笑む反応が出る
- 6ヶ月以降は視線でのコミュニケーションが始まる
Q2.「視線が合いにくい原因は何ですか?」
——視線が合いにくい場合、どんな原因が考えられますか?
視線が合いにくい原因はいくつかあり、必ずしもASDとは限りません [2]。
| 原因 | 特徴 |
|---|---|
| 性格・気質 | 恥ずかしがり屋、人見知りが強い(家族とは合う) |
| 視力の問題 | 弱視、斜視、屈折異常 |
| ASD | 社会的な関心の低さに伴う視線回避 |
| 不安・緊張 | 特定の場面で視線を避ける(場面緘黙など) |
| 文化的要因 | 目を合わせない方が礼儀とされる文化 |
「最も大切な判別ポイントは、『特定の人(お母さんなど)とは視線が合うかどうか』です。お母さんや家族とは合うけれど、知らない人とは合わない場合は、人見知りの可能性が高いです [3]。誰とも視線が合いにくい場合は、評価をお勧めします。」
ポイント
- 視線が合いにくい=ASDとは限らない
- 家族とは合うが他人と合わない→人見知りの可能性
- 誰とも合わない場合は評価を検討
Q3.「視線が合わないのはASDのサインですか?」
——ネットで調べると、目が合わない=自閉症と書いてあって不安です
確かに視線の合いにくさはASDの早期サインの一つですが、視線の合いにくさだけでASDを診断することはできません [4]。ASDの場合は、視線以外にも以下のような特徴が見られます。
| ASDを疑う視線の特徴 | 単なる人見知りとの違い |
|---|---|
| 名前を呼んでも振り向かない | 名前には反応する |
| 指さした方向を見ない | 指さしの方向を目で追う |
| 物を見せに来ない、共有しない | おもちゃを見せに来る |
| 表情の変化が少ない | 状況に応じた表情がある |
| 一人遊びを好む | 一緒に遊びたがる |
「視線だけでなく、指さし・共同注意・社会的な関わりを総合的に見ることが大切です。Vol.100で詳しくお伝えしたASDの早期サインもあわせてご参照ください。」
ポイント
- 視線だけではASDは診断できない
- 指さし、共同注意、社会性を総合的に評価
- 心配な場合はかかりつけ医に相談を
Q4.「視線を合わせる練習は必要ですか?」
——目を合わせる練習をした方がいいですか?
無理に目を合わせる練習はお勧めしません [5]。視線を強制すると、お子さんにとってストレスになり、コミュニケーション自体が嫌な体験になってしまいます。
| やってほしいこと | 避けてほしいこと |
|---|---|
| お子さんの興味に合わせて遊ぶ | 「目を見て!」と強制する |
| 顔を近づけてゆっくり話しかける | 顔を無理やり向かせる |
| 楽しい場面で自然に目が合う機会を増やす | ご褒美で視線を誘導する |
| いないいないばあ等の顔遊び | 長時間のアイコンタクト訓練 |
「自然に目が合いやすい遊び(いないいないばあ、にらめっこ、くすぐり遊び等)を通じて、『お母さんの顔を見ると楽しいことが起こる』という経験を積み重ねることが大切です。」
ポイント
- 視線の強制は逆効果
- 楽しい遊びの中で自然に視線が合う機会を作る
- 「顔を見ると楽しい」という経験が重要
Q5.「心配な場合、いつ・どこに相談すればいいですか?」
——やっぱり心配です。どこに相談すればいいですか?
以下の場合は、かかりつけの小児科に相談してください [6]。
| 月齢・年齢 | 相談の目安 |
|---|---|
| 4ヶ月 | 顔を注視しない、追視しない |
| 6ヶ月 | 親の顔を見て笑わない |
| 9ヶ月 | 人に対する関心が薄い |
| 12ヶ月 | 名前を呼んでも振り向かない、指さしの方向を見ない |
| 18ヶ月 | 指さしをしない、言葉が出ない |
「港区では、乳幼児健診(4ヶ月・9-10ヶ月・1歳6ヶ月・3歳)が視線や発達の確認の重要な機会です。健診まで待てない場合は、かかりつけ小児科や港区子ども家庭支援センターにご相談ください。早期に気づくことで、必要な支援を早く始められます。」
ポイント
- 月齢ごとの目安を参考に相談を判断
- 乳幼児健診が確認の重要な機会
- 早期相談は早期支援につながる
今号のまとめ
- 視線が安定するのは生後2-3ヶ月頃、共同注意の芽生えは6ヶ月頃からです
- 視線が合いにくい原因はASDだけではなく、人見知り・視力の問題・不安なども含まれます
- 視線だけでASDは診断できません。指さし・共同注意・社会性を総合的に評価します
- 無理に視線を合わせる練習は逆効果。楽しい遊びの中で自然に目が合う機会を作りましょう
- 心配な場合は月齢の目安を参考に、早めにかかりつけ医に相談してください
あわせて読みたい
- Vol.100「ASDの早期サイン」
- Vol.123「指さし・共同注意の重要性」
- Vol.090「斜視・弱視のスクリーニング」
- Vol.033「逆さバイバイは大丈夫?」
ご質問・ご感想
「うちの子も視線が合いにくかったけど大丈夫でした」「相談してよかったです」など、ご経験やご質問がございましたら、お気軽にお寄せください。
愛育病院 小児科 おかもん先生
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