「ナッツアレルギーが怖いので、当分ナッツは与えないつもりです」。こうした声を外来でよく耳にします。ところが、2015年に発表されたLEAP試験の結果は、この常識を覆しました。ナッツを「避ける」よりも「早く少量から食べさせる」ほうがアレルギーを予防できることが、質の高い臨床研究で明らかになったのです。
今回は、ナッツアレルギーの予防と安全な導入法についてお伝えします。
LEAP試験はどんな研究ですか#
LEAP(Learning Early About Peanut Allergy)試験は、イギリスで行われた画期的なランダム化比較試験です [1]。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 重症湿疹または卵アレルギーのある高リスク乳児640名 |
| 方法 | 生後4〜11ヶ月からピーナッツ製品を食べる群 vs 完全除去群 |
| 結果 | 5歳時のピーナッツアレルギー発症率: 食べた群3.2% vs 除去群17.2% |
| 意義 | 早期摂取で約80%のリスク低下 |
さらに、LEAP-On研究(追跡研究)では、その後1年間ピーナッツを食べなくても予防効果が持続していたことが確認されています [2]。そして2024年に発表された思春期までの追跡データでも、早期導入群の予防効果は持続していました。
この結果を受けて、2017年に米国NIAID(国立アレルギー感染症研究所)は「高リスク乳児には生後4〜6ヶ月からピーナッツ製品を導入すべき」というガイドラインを発表しています [3]。
日本の子どもにも当てはまりますか#
日本ではピーナッツアレルギーの頻度はアメリカよりも低いですが、近年増加傾向にあります。また、クルミやカシューナッツなどの木の実(ツリーナッツ)アレルギーが急速に増えており、特にクルミは消費者庁が2025年から特定原材料(表示義務)に追加しました [4]。
日本におけるナッツアレルギーの現状:
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| ピーナッツ(落花生) | 豆科。日本でも増加傾向 |
| クルミ | 木の実類で最も報告が増えている。2025年から表示義務化 |
| カシューナッツ | クルミに次いで多い。ピスタチオと交差反応あり |
| アーモンド | 比較的まれだが増加中 |
食物アレルギー診療ガイドライン2021では、「アレルギー予防目的での特定食物の除去は推奨しない」と明記されています [4]。つまり、ナッツだからといって避ける必要はないということです。
ナッツの安全な始め方を教えてください#
ピーナッツの導入方法 [3]:
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1 | ピーナッツバター(粒なしのスムースタイプ)を用意 |
| 2 | 小さじ1/4程度を、お湯や離乳食に混ぜてペースト状に |
| 3 | 体調のよい日の午前中に、少量から試す |
| 4 | 問題なければ週2〜3回、少量ずつ継続 |
高リスク児(重症湿疹、他の食物アレルギーがある)の場合は、導入前にアレルギー専門医に相談することが推奨されています [3]。
木の実類についても同様に、ペースト状やパウダー状にして少量から始めることが基本です。
ナッツアレルギーは治りにくいのですか#
ナッツアレルギーの自然寛解率は、卵や牛乳に比べて低いことが知られています [5]。
| 食物 | 自然寛解率 |
|---|---|
| 卵 | 約80%(就学前まで) |
| 牛乳 | 約90%(就学前まで) |
| 小麦 | 約70〜80%(学童期まで) |
| ピーナッツ | 約20%(10歳まで) |
| 木の実類 | 約10% |
だからこそ、予防が特に大切なのです。一度発症すると長く付き合うことになるナッツアレルギーを、早期導入という方法で予防できる可能性があることは、大きな希望です。
ナッツアレルギーと診断された場合は、エピペンの処方と使い方の練習、緊急時の対応計画の作成を主治医と相談してください。
まとめ#
- LEAP試験で早期ピーナッツ導入によるアレルギー約80%低下が証明された
- 日本でもクルミ、カシューナッツなどの木の実アレルギーが増加中
- 粒のままのナッツは5歳未満に与えてはいけない(誤嚥リスク)
- ナッツアレルギーは自然寛解率が約20%と低く、予防が重要
- 高リスク児は専門医に相談の上、早期導入を検討