愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.374
「うちの子、ワクチン打ったけど大丈夫?」、MRワクチンの効果を正直に伝えます
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「先生、うちの子1歳のときMR打ったんですけど、本当に大丈夫ですか?」。麻疹のニュースが流れた翌週から、外来でこの質問が急に増えました。答えは「ほぼ大丈夫です。ただし2回打ってあれば」。今号は、MRワクチンの効果を、数字をごまかさずにお伝えします。
1回目だけでは、5%の子が守られない
MRワクチンの予防効果は、米国CDC・英国Cochraneレビューともほぼ同じ結論に達しています。1回接種で約93%、2回接種で約97%です [1][2]。
1回目で免疫がつかない子が、5〜7%ほどいます。専門用語で「一次ワクチン不全」と呼ばれます [1]。原因は体質や接種時の体調などさまざまで、抗体検査をしない限り本人も親も気づきません。だから、2回目を打つまでは「完全に守られている」とは言い切れないのです。
2回目を打つ意味は、一度で免疫がつかなかった子を拾い上げることにあります。2回打てば、免疫不全などの特殊な事情がない限り、ほぼ全員が麻疹に対する抗体を獲得できます [2]。
「1回打った」と「2回打った」は、医学的には別物です。母子手帳を開いて、1期(1歳)と2期(5〜7歳の就学前1年間)の両方にハンコがあるか確認してください。
未接種の子は、どれくらい危険なのか
MRワクチンを打っていない子が麻疹患者と同じ空間にいた場合、感染率は約90%です。つまり10人中9人がかかります。しかも麻疹は空気感染するので、マスクでは完全に防げません。患者が通り過ぎた廊下に2時間後に入っただけでも感染した例があります [1]。
かかってしまった場合、先進国でも1,000人に1〜3人が亡くなります [1]。脳炎は1,000人に1人の割合で起き、死亡率15%、生存しても25%に後遺症が残ります。そして何年か経ってから発症するSSPEという、治療法のない進行性脳症もあります [3]。
ワクチンの副反応(発熱約20%、軽い発疹10%、熱性けいれん3,000〜4,000人に1人程度)と比べても、麻疹そのもののリスクは桁違いに大きいです [4]。
海外渡航の予定があるなら、前倒し接種も選択肢
1歳を待たずに海外に行く機会がある場合、生後6か月以降であれば任意接種でMRワクチンを打つことができます [4]。ただしこの早期接種は母親由来の抗体とぶつかって免疫がつきにくいため、1歳以降に改めて定期の1期・2期を受ける必要があります。
海外渡航前の確認は、出発4週間以上前に済ませてください。ワクチンを打ってから免疫が十分に立ち上がるまで、それくらいの時間がかかります [4]。

おかもん先生より
外来で一番多い質問は「ワクチン打ったから大丈夫ですよね?」です。答えはほぼYesです。ただし、条件が一つ。2回打ち終わっていることです。1回だけ、あるいは1期が終わって2期がまだの状態だと、5人に1人くらいは免疫が足りていない可能性があります。2期を受けられるのは5〜7歳の1年間だけ。ここを忘れて小学校に入ってしまう家庭を、年に何件か見かけます。誕生日の近くにカレンダーに印をつけておくくらいの気持ちで、守ってほしいタイミングです。
「打っても意味ない」という噂について
SNSで「ワクチンを打っても麻疹にかかる人がいる」という声を目にすることがあります。確かに、2回接種済みでも、まれに感染する人(残り約3%)はいます。ただし、接種済みの人が発症したときは、症状が軽く、他人にうつしにくいこともわかっています [1]。
「完璧ではない」と「意味がない」は別の話です。2回接種した集団では、流行が始まっても拡大しません。これが「集団免疫」の力です [2]。
まとめ
- MRワクチンは1回で93%、2回で97%の予防効果
- 1回目で免疫がつかない5%の子のために、2回目は必須
- 就学前(5〜7歳)の2期接種を忘れない
- 海外渡航予定があれば出発4週間前までに接種計画を
- 親自身の接種歴の確認も合わせて