愛育病院 小児科おかもん だより Vol.19
「ワクチン4本同時は多すぎない?」、同時接種の安全性を解説
今号のポイント
- 2同時接種は世界中で安全性が確認されており、日本小児科学会・WHOも推奨している
- 4同時接種と単独接種で副反応の頻度に差はない(大規模調査で確認済み)
- 61本ずつ打つと免疫獲得が遅れ、病気にかかるリスクがかえって上がる
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
生後2ヶ月のワクチンデビューのとき、「今日は3〜4本同時に打ちますね」と言われて驚かれる保護者の方は少なくありません。「1回にそんなに打って大丈夫?」「副反応が強くなるのでは?」というご心配は、本当にもっともだと思います。先に結論をお伝えすると、同時接種は世界中で何十億回という実績があり、安全性はしっかり確認されています。
今回は、同時接種の安全性について、エビデンスに基づいて整理します。
Q1.「同時接種って、本当に安全なんですか?」
——生後2ヶ月の予防接種で、看護師さんから「今日は4本打ちますね」と言われてびっくりしました。赤ちゃんの体に負担がかかりすぎませんか?
お気持ちはよくわかります。しかし、日本小児科学会は同時接種を「推奨」しています [1]。2011年の公式見解(2020年更新)で、「同時接種は医師が必要と認めた場合に行うことができる安全な医療行為」と明確に示しています
——でも、免疫系に負担がかかりませんか?
これはとても多い誤解です。赤ちゃんの免疫系は、理論上約1万種類のワクチンに同時に対応できる能力を持っていると計算されています [2]。ワクチンに含まれる抗原(免疫システムが認識する異物のこと)の数は、日常生活で赤ちゃんの体が触れる細菌やウイルスの数と比べると、ごくわずかです。ワクチン数本で免疫系が「パンク」することは、科学的にありえません
ポイント
- 日本小児科学会は同時接種を推奨している [1]
- 赤ちゃんの免疫系は約1万種類のワクチンに同時対応できる能力がある [2]
- ワクチン数本で免疫系に過負荷がかかることは科学的にありえない
Q2.「同時接種だと副反応が強くなりませんか?」
——1本ずつ打ったほうが副反応は少ないのでは?
これについても大規模な研究で結論が出ています。日本小児科学会の調査(2011-2015年)や、米国ACIP(米国予防接種諮問委員会)の長年のデータでは、同時接種と単独接種で副反応の頻度に差はありません [1][3]
同時接種
- 発熱(37.5℃以上)
- 約10-30%
- 接種部位の腫れ
- 約20-40%
- 不機嫌
- 約30-50%
- 重篤な副反応
- 0.01-0.02%
単独接種
- 発熱(37.5℃以上)
- 約10-30%
- 接種部位の腫れ
- 約20-40%
- 不機嫌
- 約30-50%
- 重篤な副反応
- 0.01-0.02%
つまり、「4本打ったから4倍つらい」ということにはならないのです。副反応はワクチンの種類ごとに独立して起こるもので、本数で足し算にはなりません
——数字で見ると差がないんですね
もちろん、接種後に発熱したり不機嫌になったりすることはあります。でもそれは体が免疫を作っている証拠です。通常は1〜2日で落ち着きます
ポイント
- 同時接種と単独接種で副反応の頻度に差はない(大規模調査で確認)[1][3]
- 4本打っても副反応が4倍になるわけではない
- 接種後の発熱や不機嫌は免疫ができている証拠
Q3.「世界では同時接種が普通なんですか?」
——海外ではどうなっているんですか?
実は日本はワクチンの同時接種が遅れていた国なんです。世界の状況を見てみましょう
| 国 | 生後2ヶ月の標準スケジュール |
|---|---|
| アメリカ | 5〜6種類を同時接種(6種混合+ロタ+肺炎球菌など) |
| イギリス | 6種混合+ロタ+髄膜炎菌を同時接種 |
| ドイツ・フランス | 6種混合ワクチン+肺炎球菌を同時接種 |
| 日本 | 5種混合+ロタ+肺炎球菌+B型肝炎を同時接種 |
WHOも同時接種を推奨しています。世界中で何十億回もの同時接種が行われてきた実績があり、安全性のデータは極めて豊富です
ポイント
- 世界中で同時接種が標準(アメリカでは生後2ヶ月で5-6種類)
- WHOも同時接種を推奨
- 何十億回という実績で安全性が確認されている
Q4.「では、なぜ同時接種が推奨されるのですか?」
——安全なのはわかりましたが、1本ずつ打っても同じでは?
1本ずつ打つことには、実は大きなデメリットがあるんです
同時接種のメリット:
- 2早期に免疫がつく: VPD(Vaccine Preventable Diseases=ワクチンで防げる病気)から早く守れる。1本ずつだと全てのワクチンが終わるまで数ヶ月余計にかかる
- 4通院回数の削減: 同時接種なら4〜5回の通院で済むところが、1本ずつだと15回以上になる
- 6痛い思いの回数が減る: トータルの注射回数は同じでも、来院のたびに泣く回数が減る
- 8接種忘れの防止: 通院が多いとスケジュール管理が複雑になり、接種漏れが起きやすい
特に重要なのは1番目です。百日咳やHib(ヒブ=インフルエンザ菌b型)感染症は生後6ヶ月未満が最もリスクが高いのに、1本ずつ打っていたら免疫がつくのが遅れてしまいます。その「空白期間」に感染するリスクは、同時接種の副反応よりもはるかに大きいのです
ポイント
- 1本ずつ打つと免疫獲得が遅れ、病気にかかるリスクが上がる
- 同時接種は通院回数の削減、接種忘れ防止にもつながる
- 空白期間のリスク > 同時接種の副反応リスク
Q5.「同時接種ができないケースはありますか?」
——全員が同時接種できるんですか?
一部、注意が必要なケースがあります
同時接種を控える場合:
- 前回の接種で重篤なアレルギー反応(アナフィラキシー)があった場合 → 個別に判断
- 中等度以上の急性疾患にかかっている場合 → 体調が回復してから
- 医師が個別に判断して延期が望ましいと判断した場合
同時接種に制限はない場合:
- 軽い風邪(鼻水、軽い咳)→ 接種OK
- 前回の接種で発熱した → 次回も同時接種OK
- 早産児 → むしろ早期の免疫獲得が重要なので同時接種が推奨
軽い風邪をひいているから延期するという必要はありません。むしろ、延期してスケジュールが遅れることのほうがリスクです。不安なことがあれば、接種当日にかかりつけ医にご相談ください
ポイント
- 軽い風邪では接種を延期する必要はない
- 重篤なアレルギー歴がある場合は個別に判断
- 迷ったら接種当日にかかりつけ医に相談
まとめ
- 日本小児科学会は同時接種を推奨(安全性は大規模データで確認済み)
- 同時接種で副反応が増えることはない
- 世界中で標準的な接種方法(アメリカでは生後2ヶ月で5-6種類)
- 1本ずつ打つと免疫獲得が遅れ、病気にかかるリスクが上がる
- 軽い風邪では延期不要
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