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おたふくかぜワクチン、難聴を防ぐための最も確実な方法
Vol.48予防接種

おたふくかぜワクチン、難聴を防ぐための最も確実な方法

おたふくかぜワクチンの必要性と接種時期

予防接種1〜3歳・3〜6歳14
おかもん先生小児科専門医愛育病院 小児科

参考文献 14·Q&A 5問収録

プロフィール →

この記事のポイント

  • おたふくかぜは難聴・髄膜炎・精巣炎などの合併症が起こりうる病気
  • ワクチンは任意接種だが、2回接種で90%以上の予防効果がある
  • 難聴は治療法がなく、予防が唯一の対策

愛育病院 小児科おかもん だより Vol.48

おたふくかぜワクチン、難聴を防ぐための最も確実な方法

今号のポイント

  1. 2
    おたふくかぜは難聴・髄膜炎・精巣炎などの合併症が起こりうる病気
  2. 4
    ワクチンは任意接種だが、2回接種で90%以上の予防効果がある
  3. 6
    難聴は治療法がなく、予防が唯一の対策

こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。

「おたふくかぜワクチンって、打ったほうがいいですか?」、この質問をよくいただきます。おたふくかぜワクチンは任意接種(自費)のため、接種率は約40%程度と低いのが現状です [1]。しかし、おたふくかぜによる難聴は治療法がなく、予防が唯一の対策です [2]。

今回は、おたふくかぜワクチンの効果・安全性・接種スケジュール についてお伝えします。

Q1.「おたふくかぜって、どんな病気ですか?」

——おたふくかぜは、ほっぺが腫れる病気ですよね? そんなに怖い病気なんでしょうか?

おたふくかぜは、正式にはムンプス(流行性耳下腺炎)といい、ムンプスウイルスによる感染症です [3]。耳の下の唾液腺(耳下腺)が腫れるのが特徴ですが、合併症が問題になります

おたふくかぜの基本情報:

項目内容
原因ムンプスウイルス [3]
感染経路飛沫感染、接触感染 [3]
潜伏期間16〜18日(12〜25日) [3]
感染力中等度(インフルエンザと同程度)
好発年齢3〜6歳(ワクチン接種なしの場合) [4]

おたふくかぜの典型的な症状:

  • 耳の下の腫れ(片側または両側)
  • 発熱(38〜39℃)
  • 痛み(食べ物を噛むとき、酸っぱいものを食べるとき)
  • 頭痛、倦怠感

多くの場合は1週間程度で自然に治りますが、合併症が問題です [5]。特に難聴は、一度発症すると治療法がなく、一生治らないのです [2]

おたふくかぜの主な合併症:

頻度

難聴
1,000人に1人 [2]
無菌性髄膜炎
約10% [6]
精巣炎
思春期以降の男性の約20〜30% [7]
卵巣炎
思春期以降の女性の約5% [7]
膵炎
約4% [8]
脳炎
まれ(0.02〜0.3%) [9]

特徴

難聴
治療法なし、永久的 [2]
無菌性髄膜炎
頭痛、嘔吐、発熱
精巣炎
痛み、腫れ、不妊のリスク
卵巣炎
下腹部痛
膵炎
腹痛、嘔吐
脳炎
けいれん、意識障害

ポイント

  • おたふくかぜは ムンプスウイルスが原因 [3]
  • 耳の下の腫れが特徴的だが、合併症が問題 [5]
  • 難聴は1,000人に1人の頻度で発症 [2]
  • 難聴は 治療法がなく、永久的 [2]

Q2.「おたふくかぜによる難聴について教えてください」

——難聴が怖いと聞きましたが、どのくらいの確率で起こるんですか?

おたふくかぜによる難聴(ムンプス難聴)は、1,000人に1人の頻度で起こります [2]。日本では年間約700〜800人が発症していると推定されています [10]

ムンプス難聴の特徴:

発症頻度と時期

  • 頻度: 1,000人に1人(0.1%) [2]
  • 発症時期: 耳下腺が腫れてから数日以内
  • 年齢: 5歳以上に多い [11]

難聴の特徴

  • 片側性が多い(約80%)[11]
  • 高度〜重度の感音性難聴(会話が聞こえないレベル) [11]
  • 突然発症する
  • めまい、耳鳴りを伴うことも

治療と予後

  • 有効な治療法はない [2]
  • ステロイド薬を試すが、ほとんど効果なし [12]
  • 一生治らない(永久的な難聴) [2]

ムンプス難聴でいちばん厳しいのは、治療法がないことです [2]。片側だと日常では気づきにくいのですが、音の方向が分からない、騒がしい場所で会話が取りづらい、といった影響は残ります [11]

日本耳鼻咽喉科学会の全国調査(2015〜2016年):

  • 調査期間中に348人がムンプス難聴を発症 [10]
  • そのうち300人(86%)が片側性、48人(14%)が両側性 [10]
  • 両側性の場合、日常生活に著しい支障がある [10]

つまり、毎年700〜800人の子どもが、治らない難聴になっている計算です [10]。ワクチンで防げるはずのものです

ポイント

  • ムンプス難聴は 1,000人に1人の頻度 [2]
  • 片側性が多い(80%)が、両側性もある [11]
  • 有効な治療法はなく、一生治らない [2]
  • 日本では 年間約700〜800人が発症 [10]

Q3.「おたふくかぜワクチンの効果と安全性を教えてください」

——ワクチンを打てば、おたふくかぜは防げるんですか?

はい。おたふくかぜワクチンは、2回接種で90%以上の予防効果があります [13]

おたふくかぜワクチンの効果:

接種回数発症予防効果
1回接種約72〜80% [13]
2回接種約86〜95% [13]

重要なのは、1回接種だけでは不十分ということです [14]。アメリカやヨーロッパでは、2回接種が標準になっています [15]。日本でも、日本小児科学会は2回接種を強く推奨しています [16]

世界のおたふくかぜワクチン接種状況:

定期/任意接種回数接種率
アメリカ定期2回約95% [15]
イギリス定期2回約90% [15]
オーストラリア定期2回約95% [15]
日本任意2回推奨約40% [1]

おたふくかぜワクチンの安全性:

よくある副反応(10〜20%)

  • 接種部位の発赤・腫れ
  • 発熱(38℃以上): 約10% [17]
  • 発疹: 約5%

まれな副反応

  • 耳下腺の腫れ: 接種後2〜3週間で1〜2%に起こる [17](軽症で自然に治る)
  • 無菌性髄膜炎: 約1,600〜2,300人に1人(自然感染の100人に10人よりはるかに低い) [18]
  • アナフィラキシー: 極めてまれ

ワクチンによる無菌性髄膜炎のリスクは、自然感染によるリスクよりはるかに低いです [18]。また、ワクチン株では難聴の報告はほぼありません [19]。つまり、ワクチンのリスク < 自然感染のリスクなのです

ポイント

  • 2回接種で86〜95%の予防効果 [13]
  • 世界では 2回接種が標準 [15]
  • 副反応は軽度(発熱、発疹など) [17]
  • ワクチンによる無菌性髄膜炎は 約1,600〜2,300人に1人で自然感染より低リスク [18]

Q4.「おたふくかぜワクチンの接種スケジュールを教えてください」

——いつ、何回打てばいいですか?

日本小児科学会の推奨スケジュールは、1歳と小学校入学前の2回接種です [16]

おたふくかぜワクチンの推奨スケジュール:

接種時期

1回目
1歳0ヶ月〜(できるだけ早く)
2回目
5〜7歳(小学校入学前)

理由

1回目
集団生活での感染リスクを減らす [16]
2回目
免疫を強化、集団での流行を防ぐ [16]

他の接種スケジュール案:

日本小児科学会は、以下のスケジュールも提示しています [16]:

  1. 2
    1歳と小学校入学前(標準)
  2. 4
    1歳と2歳(早期に免疫確立)
  3. 6
    1歳と4〜5歳(中間案)

どのスケジュールでも、2回接種が重要です [16]。2回接種すれば、集団での流行も防げます(集団免疫)

おたふくかぜワクチンの費用(自費):

  • 1回あたり: 5,000〜7,000円(医療機関により異なる)
  • 2回接種: 合計 約10,000〜14,000円

任意接種なので自費ですが、一生治らない難聴を防ぐ費用と考えると、私は強くお勧めします [2][10]

自治体による助成:

一部の自治体では、おたふくかぜワクチンの費用を助成しています。お住まいの自治体に確認してみてください。

他のワクチンとの同時接種:

  • MRワクチン(麻疹・風疹)と同時接種可能 [20]
  • 1歳の誕生日に「MRワクチン + おたふくかぜワクチン」を同時接種するのが効率的

ポイント

  • 推奨スケジュール: 1歳と小学校入学前の2回 [16]
  • 2回接種が重要 [16]
  • 費用: 1回 5,000〜7,000円(自費)
  • MRワクチンと同時接種可能 [20]

Q5.「なぜおたふくかぜワクチンは定期接種じゃないんですか?」

——こんなに大事なワクチンなら、定期接種(公費・無料)にすればいいのに、なぜ任意接種なんですか?

それは多くの保護者が疑問に思うことです。実は、日本小児科学会は定期接種化を強く要望しています [16]。しかし、現時点では任意接種のままです

定期接種化が進まない理由:

① 過去のワクチン副反応問題

  • 1989〜1993年に使用されたMMRワクチン(麻疹・おたふく・風疹の混合ワクチン)で、無菌性髄膜炎が高頻度(約1,000人に1人)に発生 [21]
  • 1993年にMMRワクチンが中止され、おたふくかぜワクチンへの不信感が残った [21]

ただし、現在使用されているおたふくかぜワクチン株は、当時と異なります [22]。現在の株(星野株・鳥居株)は、無菌性髄膜炎のリスクが約1,600〜2,300人に1人(添付文書ベース)と低く [22]、自然感染のリスク(100人に10人)よりはるかに低いのです [6]

② コストと優先順位

  • ワクチン政策では、費用対効果や疾患の重症度を総合的に判断
  • おたふくかぜは「ほとんどが軽症で治る」と認識されがち
  • 難聴のリスクが十分に認識されていない

世界の動き:

地域定期接種化の状況
WHO推奨定期接種を推奨 [23]
先進国ほとんどが定期接種 [15]
日本任意接種(定期接種化の議論は継続中) [16]

日本小児科学会の声明(2020年):

「おたふくかぜワクチンの2回接種を強く推奨し、定期接種化を求める」 [16]

定期接種化を待っていては、年間700〜800人の子どもが難聴になり続けます [10]。私は、定期接種化されていなくても、2回接種を強く勧めます [2][16]

ポイント

  • 日本小児科学会は 定期接種化を強く要望 [16]
  • 過去のMMRワクチン問題が影響 [21]
  • 現在のワクチンは安全性が高い [22]
  • 世界のほとんどの先進国は 定期接種 [15]

まとめ

  • おたふくかぜは 難聴(1,000人に1人)が最大の問題
  • 難聴は 治療法がなく、一生治らない
  • ワクチンは 2回接種で86〜95%予防可能
  • 推奨スケジュール: 1歳と小学校入学前の2回接種
  • 任意接種(自費)だが、強く推奨される

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