愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.373
「麻疹の流行、いま何が起きているのか」、2026年の最新情報
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「先生、はしかってまた流行ってるんですか?」。先月の1歳半健診で、お母さんに聞かれました。ニュースを見て心配になったそうです。答えは「はい、世界で流行しています」。2025年は、ここ数年で最悪の1年でした。今号は、いま世界と日本で起きていることと、港区の親御さんに知っておいてほしい点をまとめます。
2025年、世界で何が起きたのか
WHO(世界保健機関)によると、2025年5月時点で全世界の麻疹報告は疑い例を含めて約20万件、確定例は6万2千件を超えました [1]。新型コロナ流行期に1回目の麻疹ワクチン接種率が81%まで下がった影響が、いま時間差で出てきています [1]。
米国はとくに深刻でした。2025年の確定例は2,287例、45の州・地域で48のアウトブレイクが起き、確定例の約90%(2,064例)がアウトブレイク関連でした [2]。1991年以来、34年ぶりの最多です [2]。
麻疹は「昔の病気」ではありません。米国では2024年の285例から2025年の2,287例へ、およそ8倍に増えました [2]。
日本も無縁ではない。2025年の動向
国立健康危機管理研究機構(旧・国立感染症研究所)のIASR報告によると、日本では2025年の第1〜19週だけで119例の麻疹が報告されました [3]。前年同期の1.6倍のペースです。
目を引くのは患者の年齢層です。中央年齢は24歳。20代が40例(34%)、30代が20例(17%)、40代が15例(13%)と、成人が中心でした [3]。子どもの病気というイメージが、いまは当てはまりません。
さらに深刻なのは接種歴です。患者の79%がMRワクチンの2回接種を完了していませんでした [3]。20〜30代では75%が未接種または不完全接種。つまり、いま麻疹にかかっているのは「子どもの頃にワクチンを打ちきれなかった世代」なのです。
発生の起点はほとんどが海外からの輸入例です [3]。日本国内で土着の麻疹はほぼ消えていますが、海外との往来が戻ったことで、免疫の穴を持つ人が次々に感染しています。
港区で暮らす家族が注意すべきこと
港区は羽田空港・成田空港へのアクセスが良く、海外出張や海外旅行の機会が多い地域です。保育園や学校に海外帰りの子が増える春・夏は、とくに警戒が必要な時期といえます。
患者報告は「発生届」として保健所を経由してIASRに集約されます [3]。定期接種のスケジュールを守っている家庭のお子さんは、原則心配いりません。問題は、大人の側の接種歴です。

おかもん先生より
外来でよく聞くのが「子どもはちゃんと打っているから大丈夫ですよね?」という質問です。お子さんは守られています。でも、送り迎えをしている親御さん自身の接種歴は、意外と不明なことが多いです。母子手帳を一度開いてみてください。そこに「麻疹」「MR」の記録が2回分あれば安心、1回だけ、あるいは記載がなければ、追加接種を検討する価値があります。家族全体で守る、これが2026年の麻疹対策の基本です。
これから半年、何に備えるか
2025年以降、SSPE(亜急性硬化性全脳炎)という麻疹の遅発性合併症が増えるだろうと専門家は予測しています [4]。SSPEは麻疹にかかってから7〜10年後に発症する、治療法のない進行性の脳障害です。いまの流行は、10年後の子どもたちに影を落としかねません。
だからこそ、いま予防できる手段、MRワクチンの2回接種、を、家族全員で確実に済ませておくことが何より大切です [5]。
母子手帳でお子さんの1期(1歳)・2期(就学前)の接種状況を確認する。保護者自身の接種歴を確認し、不明なら自費でも追加接種を検討する。海外渡航予定があるなら、出発4週間前までに動く。
まとめ
- 2025年、世界と日本で麻疹が急拡大した。米国は1991年以来の最多(2,287例)
- 日本の患者の中央年齢は24歳。20〜30代の成人で、MRワクチン未接種・不完全接種が中心
- 発生の起点は海外からの輸入例。羽田・成田に近い港区は引き続き警戒が必要
- 家族全員の接種歴を確認することが、2026年の基本対策