愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.125
「元気がいいだけ」と「ADHD」の境界線、多動は個性?障害?
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「うちの子、落ち着きがなさすぎるんです。でも男の子だからこんなものかなとも思うし……」。ADHDと活発な性格の境界線は、保護者だけでなく専門家にとっても判断が難しいテーマです。今回は、「多動」の見方と、専門家に相談すべきタイミングについてお伝えします。
Q1.「多動と活発な子どもの違いは何ですか?」
——うちの子はとにかく動き回ります。ADHDなのか、ただ元気なだけなのか分かりません
活発さとADHDの多動の最大の違いは、『場面に応じたコントロールができるかどうか』です [1]。活発な子どもは、静かにすべき場面では程度の差はあれ自分をコントロールできます。一方、ADHDの多動は、本人が『静かにしたい』と思っていてもコントロールが難しいという特徴があります。
活発な子ども
- 場面に応じた調整
- ある程度できる
- 興味のある活動
- 集中できる
- 叱られた後
- 一時的に改善
- 成長に伴う変化
- 年齢とともに落ち着く
- 生活への支障
- 大きな問題にならない
ADHDの多動
- 場面に応じた調整
- 困難
- 興味のある活動
- 興味があっても集中の持続が難しいことがある
- 叱られた後
- すぐに同じ行動を繰り返す
- 成長に伴う変化
- 年齢相応には落ち着かない
- 生活への支障
- 学習・友人関係・家庭生活に支障
ポイント
- 場面に応じたコントロールの有無が最大の違い
- ADHDは「したくてもできない」状態
- 生活への支障の程度が判断の鍵
Q2.「多動はいつ頃から分かりますか?」
——何歳ぐらいからADHDかどうか分かるのですか?
ADHDの症状は3歳頃から目立ち始めることが多いですが、正式な診断は5-6歳以降が一般的です [2]。これは、幼児期はもともと落ち着きがない時期であり、年齢相応の多動と区別するのが難しいためです。
| 年齢 | 多動の見方 |
|---|---|
| 1-2歳 | 好奇心旺盛で動き回るのは正常。この時期の多動でADHDを疑う必要は低い |
| 3-4歳 | 集団保育で他の子との違いが目立ち始める場合がある |
| 5-6歳 | 就学を見据えた評価が可能になる |
| 7歳以降 | 授業中の離席や忘れ物が目立つ場合、評価を検討 |
「3歳児健診や5歳児健診は重要なスクリーニングの機会です。気になることがあれば、健診で遠慮なくご相談ください。」
ポイント
- 3歳頃から目立ち始め、5-6歳以降に診断が可能
- 幼児期の多動は正常なことが多い
- 健診はスクリーニングの重要な機会
Q3.「男の子だから多動なのは普通ですか?」
——周りから『男の子はそんなもの』と言われます。本当ですか?
確かに統計的に見ると、男の子は女の子より活動量が高い傾向があります。しかし、ADHDの有病率にも男女差があり、男子は女子の約2-3倍です [3]。
「注意すべきは、『男の子だから仕方ない』という見方が、必要な支援の遅れにつながることがある点です。以下のような場合は、性別に関係なく相談を検討してください。」
| 相談のきっかけ |
|---|
| 保育園・幼稚園から繰り返し指摘される |
| 友達とのトラブルが頻繁 |
| ケガが極端に多い |
| 親が毎日叱り続けて疲弊している |
| 本人が「自分はダメだ」と言い始めている |
ポイント
- 男の子の活動量は高い傾向だが、ADHDの可能性を見逃さない
- 「男の子だから」で済ませると支援が遅れることがある
- 園からの繰り返しの指摘は重要なサイン
Q4.「多動は成長すれば治りますか?」
——大きくなれば落ち着くと言われました。本当ですか?
ADHDの多動・衝動性は、思春期にかけて目立たなくなることが多いです [4]。ただし、注意欠如の症状は成人期まで残ることが多く、ADHDそのものが『治る』わけではありません。
| 症状 | 年齢による変化 |
|---|---|
| 多動 | 外見的な多動は減少。内的落ち着きのなさに変化 |
| 衝動性 | やや改善するが、完全にはなくならない |
| 不注意 | 成人期まで持続することが多い |
「大切なのは、『成長すれば治る』と待つのではなく、今困っているなら今支援することです。ADHDの子どもが適切な支援なく過ごすと、二次障害(Vol.117参照)のリスクが高まります。」
ポイント
- 多動は年齢とともに目立たなくなるが、ADHDが治るわけではない
- 不注意は成人期まで続くことが多い
- 「待つ」のではなく「今できる支援」を始めることが大切
Q5.「相談に行くタイミングを教えてください」
——どの程度なら相談に行くべきですか?
以下の3つのうち1つでも当てはまれば、相談をお勧めします [5]。
| 相談の目安 | 具体例 |
|---|---|
| ①生活に支障がある | 園・学校の活動についていけない、友達ができない |
| ②本人が困っている | 「自分はダメだ」「学校が嫌だ」と言う |
| ③保護者が限界を感じている | 毎日叱り続けて疲弊、きょうだいへの影響 |
「相談先は、かかりつけ小児科→必要に応じて児童精神科や発達外来という流れが一般的です。港区では、子ども家庭支援センターでも相談を受けています。『様子を見ましょう』と言われて不安な場合は、セカンドオピニオンを求めることも大切です。」
ポイント
- 生活への支障、本人の困り感、保護者の疲弊が相談の目安
- かかりつけ小児科が最初の窓口
- 不安が残る場合はセカンドオピニオンも検討
今号のまとめ
- 活発さとADHDの違いは「場面に応じたコントロールができるか」が鍵です
- ADHDの多動は3歳頃から目立ち始め、5-6歳以降に診断が可能です
- 「男の子だから」と見過ごすと、必要な支援が遅れることがあります
- 多動は年齢とともに目立たなくなりますが、ADHDが「治る」わけではありません
- 生活に支障・本人の困り感・保護者の疲弊があれば相談を
あわせて読みたい
- Vol.101「ADHD(注意欠如・多動症)の基礎」
- Vol.102「ADHDの診断と評価」
- Vol.104「ADHDの薬物療法」
- Vol.117「発達障害の二次障害」
ご質問・ご感想
「うちの子も多動で悩みました」「受診してよかったです」など、ご経験やご質問がございましたら、お気軽にお寄せください。
愛育病院 小児科 おかもん先生
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