「子どもの口の周りに水ぶくれができました」「ヘルペスってうつりますか?」、ヘルペスウイルスに関する相談は外来でもよく受けます。
実は「ヘルペスウイルス」は8種類もあり、それぞれ異なる病気を起こします [1]。今回は、ヘルペスウイルスの全体像と子どもに特に重要な感染症についてお伝えします。
ヘルペスウイルスにはどんな種類がありますか?#
ヘルペスって1種類じゃないんですか?
実は8種類のヒトヘルペスウイルスが知られています [1]。すべてに共通するのは、一度感染すると生涯潜伏感染し、免疫低下時に再活性化する点です
ヒトヘルペスウイルス一覧 [1]:
| 名称 | 略称 | 主な疾患 |
|---|---|---|
| 単純ヘルペスウイルス1型 | HSV-1 | 口唇ヘルペス、ヘルペス性歯肉口内炎 |
| 単純ヘルペスウイルス2型 | HSV-2 | 性器ヘルペス、新生児ヘルペス |
| 水痘・帯状疱疹ウイルス | VZV (HHV-3) | 水ぼうそう、帯状疱疹 |
| EBウイルス | EBV (HHV-4) | 伝染性単核球症 |
| サイトメガロウイルス | CMV (HHV-5) | 先天性CMV感染症 |
| ヒトヘルペスウイルス6型 | HHV-6 | 突発性発疹 |
| ヒトヘルペスウイルス7型 | HHV-7 | 突発性発疹(2回目) |
| ヒトヘルペスウイルス8型 | HHV-8 | カポジ肉腫(小児ではまれ) |
子どもに特に関わりが深いのは、HSV-1(口唇ヘルペス)、HHV-6/7(突発性発疹)、VZV(水ぼうそう)です。EBVとCMVについてはvol139、vol142で詳しくお伝えしました
口唇ヘルペスと子どものヘルペス性歯肉口内炎について教えてください#
子どもの口の中がただれてご飯が食べられません。ヘルペスですか?
HSV-1の初感染で起こるヘルペス性歯肉口内炎の可能性があります [2]。口唇ヘルペスの親御さんからお子さんにうつることが多いです
| 症状 | 説明 |
|---|---|
| 好発年齢 | 1〜5歳(初感染時に発症) |
| 発熱 | 38〜40度の高熱が3〜5日続く |
| 口腔内病変 | 歯肉の発赤・腫脹、口腔粘膜に多数の小潰瘍 |
| 口臭 | 特徴的な口臭を伴う |
| 流涎(よだれ) | 痛みで唾液が飲めず、よだれが増える |
| 哺乳・食事困難 | 痛みで食べられない・飲めない |
手足口病とは違うのですか?
似ていますが区別できます [3]
| 特徴 | ヘルペス性歯肉口内炎 | 手足口病 |
|---|---|---|
| 歯肉の腫れ | あり(特徴的) | なし |
| 口腔内の水疱 | 口腔前方に多い | 口腔後方に多い |
| 手足の発疹 | なし | あり |
| 発熱の程度 | 高熱が持続 | 軽い発熱 |
治療法はありますか?家庭でのケアを教えてください#
痛がって何も食べてくれません。どうしたらいいですか?
ヘルペス性歯肉口内炎には抗ウイルス薬(アシクロビル)が有効です [4]。早期に開始するほど効果が高いです
治療とホームケア [4]:
| 対応 | 内容 |
|---|---|
| 抗ウイルス薬 | アシクロビル内服(発症72時間以内に開始が理想) [4] |
| 解熱鎮痛薬 | アセトアミノフェン(カロナール)で痛みと熱を緩和 |
| 水分補給 | 冷たい飲み物、経口補水液をストローで少量ずつ |
| 食事の工夫 | 冷たくて柔らかいもの(ゼリー、アイス、冷ましたおかゆ) |
| 入院適応 | 脱水が進行した場合は点滴が必要 |
酸っぱいもの、塩辛いもの、熱いものは避けてください。冷たいゼリーやアイスクリームは痛みを和らげながら水分・カロリーも摂れるのでおすすめです [4]
口唇ヘルペスは赤ちゃんにうつりますか?新生児ヘルペスとは?#
私が口唇ヘルペスを持っています。赤ちゃんにキスしても大丈夫ですか?
口唇ヘルペスの水疱が出ている時期は、赤ちゃんへの口でのキスは避けてください [5]。特に新生児期のHSV感染(新生児ヘルペス)は重篤です
| 病型 | 頻度 | 症状 |
|---|---|---|
| 皮膚・眼・口腔型(SEM) | 約45% | 水疱、結膜炎。適切な治療で予後良好 |
| 中枢神経型 | 約30% | 脳炎。けいれん、意識障害 |
| 全身型 | 約25% | 敗血症様。肝不全、DIC。死亡率最も高い [6] |
新生児ヘルペスの最大のリスクは分娩時の母体性器ヘルペスです [6]。特に分娩前後の初感染は胎児への感染率が30〜50%と非常に高いため、帝王切開が検討されます。産科と連携して対応します
ヘルペスは繰り返すと聞きました。予防法はありますか?#
口唇ヘルペスが何度も再発します。子どもにもうつし続けてしまいますか?
HSV-1は三叉神経節に潜伏し、疲労・ストレス・紫外線・発熱などをきっかけに再活性化(再発)します [7]。ただし、再発時のウイルス量は初感染時より少ないため、感染力はやや低くなります
| 対策 | 内容 |
|---|---|
| 水疱が出たら | 触らない、キスしない、タオルの共有を避ける |
| 手洗い | 水疱に触れた後は必ず手洗い |
| 再発予防 | 十分な睡眠、ストレス管理、紫外線対策 |
| 抗ウイルス薬 | 頻回に再発する場合はアシクロビル・バラシクロビルの予防内服 [8] |
お子さんが一度感染してしまえば、同じHSV-1に対する免疫ができます。過度に恐れず、水疱がある時だけ注意していただければ大丈夫です [7]。なお、HSV-1のワクチンは現時点では開発中でまだ実用化されていません
まとめ#
- ヘルペスウイルスは8種類。子どもに多いのはHSV-1、HHV-6/7、VZV [1]
- HSV-1の初感染でヘルペス性歯肉口内炎(高熱+歯肉腫脹+口腔内潰瘍) [2][3]
- アシクロビルが有効。冷たくて柔らかい食べ物で脱水を予防 [4]
- 新生児ヘルペスは重篤。口唇ヘルペスの水疱がある時は赤ちゃんへのキスを避ける [5][6]
- 再発は水疱がある時期だけ注意。頻回なら予防内服も検討 [7][8]