今回のテーマは「熱が出たとき、いつ病院に行くか」です。
夜中に子どもの額に手を当てて、じんわり汗ばんでいるのに気づく瞬間。体温計を見て39度の数字。「今すぐ救急に行くべき? それとも朝まで待っていい?」。この迷いは、外来で最もよくいただく質問のひとつです。
#8000(子ども医療でんわ相談)への相談件数は年間100万件を超えています [7]。そのなかでも発熱は最も多い相談主訴です。それだけ多くの方が、同じところで迷っているということです。
今号では、月齢別と症状別に「受診の判断軸」を整理します。体温の数字よりも、もっと大切な見きわめ方をお伝えします。

至急・赤(119番・即受診):ぐったり・反応が弱い、呼吸が苦しそう、けいれん5分以上、押して消えない紫斑、生後3か月未満の38℃。注意・黄(#8000で相談):生後3〜6か月で39℃以上、水分がとれない、迷ったら#8000。家庭・緑(様子見):機嫌よく水分がとれる、顔色で判断、解熱剤はつらさで。
Q1: 「夜中に39度、これは今すぐ救急ですか?」#
生後2か月の赤ちゃんです。夜11時に体温を測ったら39.2度でした。いつもより少し機嫌が悪い気がしますが、ミルクは飲めています。朝まで様子を見ていいですか。
これは、月齢によって答えがまったく変わります。生後2か月であれば、今すぐ受診してください。
生後3か月(60日)未満の赤ちゃんが38.0℃以上の発熱を起こした場合、見た目が元気でも重篤な細菌感染が隠れている可能性があります。1,821人の60日以下の発熱乳児を対象にした多施設研究では、重大な細菌感染(SBI)が9.3%、内訳は尿路感染8.3%、菌血症1.4%、細菌性髄膜炎0.5%に認められました [2]。多くは尿路感染ですが、血流や髄膜まで及ぶケースが約2%含まれます。「元気そう」だけでは見逃しうるという数字です。
この月齢では、赤ちゃんの免疫系がまだ未成熟で、外からもらった母体の抗体も十分ではありません。「元気そうに見える」「ミルクが飲めている」という様子だけでは、重症度を安全に判断することができないのです。アメリカ小児科学会(AAP)のガイドライン(2021年)でも、8〜60日の発熱乳児は全員を評価対象とし、血液・尿・髄液の検査を検討することを推奨しています [3]。
月齢別の発熱時の目安をまとめます。
- 生後3か月未満(0〜90日)38.0℃以上 → 時刻を問わず即受診(救急外来へ)
- 生後3〜6か月 39.0℃以上、または元気がない → 夜間でも受診を検討
- 生後6か月以降 顔色・水分・反応で判断(体温の数字は参考程度)

生後3か月未満:38℃以上は時刻問わず即受診。生後3〜6か月:39℃以上か元気がなければ夜間も受診。生後6か月以降:顔色・水分・反応で判断。
生後1か月未満は「こどもの救急ONLINE-QQ」(https://kodomo-qq.jp/)の対象外です。この月齢の発熱は即受診が原則です [6]。
Q2: 「#8000と救急外来、どう使い分けるんですか?」#
1歳3か月の子どもです。夜9時に39.8度になりました。水分は飲んでいて、泣いていますが呼びかけには反応します。救急に行くべきか、#8000に電話するべきか、迷っています。
この状況であれば、まず#8000に電話するのが正解です。
#8000(子ども医療でんわ相談)は、夜間・休日に看護師や医師が子どもの症状を電話で聞き、受診の要否を案内するサービスです。全都道府県で実施されており、深夜でも対応しています(時間帯は都道府県により異なります)。Kids Publicが実施した小児科オンラインの3,130件の夜間相談分析では、97.6%が「夜間の救急受診は不要」と医師が判定し、24時間以内に入院が必要だったケースは8件のみで、見逃しはありませんでした [5]。
夜間相談に上がるケースの大半は、急いで救急外来に行く必要がないという結果でした [5]。一方で、救急外来は本当に緊急の子が最優先で診られる場所です。迷いながら行くよりも、まず#8000で相談して方針を決めるほうが、お子さんにとっても親御さんにとっても良いことが多いのです。
ただし、以下の症状がある場合は#8000を待たずに119番か救急外来に直行してください。
- ぐったりして呼びかけても反応が弱い
- 呼吸が速い、または苦しそうにしている
- けいれんが5分以上続いている、または同じ発熱中に2回以上繰り返した [熱性けいれん診療GLの入院考慮基準より] [4]
- 体に赤い点々(紫斑)が出て、透明なコップを押し当てても消えない(non-blanching test)
- 水分がまったくとれず、半日以上おしっこが出ていない
- 生後3か月未満の発熱(前項参照)
NICEガイドライン(NG143、2019年)は同様の症状を「赤信号(Red)」として、即時医療を推奨しています [4]。体温が37度台でも、上のサインがあれば緊急です。
Q3: 「お風呂・解熱剤・冷やす、どう考えればいいですか?」#
38.5度の熱があります。お風呂には入れない方がいいですか。氷枕で冷やしたほうがいいですか。解熱剤はまだ使わないほうがいいですか。
一つずつ整理しますね。
お風呂については、熱があっても本人が元気でぐずらなければ入っても問題ありません。ただし長湯は避けて、短めに済ませてください。ぐったりしているときは無理に入れなくて大丈夫です。
冷やすことについては、氷枕や保冷剤を首・脇・足の付け根に当てることで、お子さんが気持ちよさそうにするなら使って構いません。ただし、「ぬるま湯で体を拭く(tepid sponging)」はNICEガイドラインで非推奨とされています [4]。拭かれることで体がふるえ(シバリング)が起きると、かえって体温が上がることがあるからです。
服装については、「薄着にしすぎても厚着にしすぎてもNG」です [4]。熱が上がっている途中でふるえているときは1枚多めに、汗をかき始めたら薄着に切り替えるのが基本です。
解熱剤については、体温の数字が基準ではなく、お子さんのつらさが基準です。AAPの公式見解では「治療の目的は体温を正常化することではなく、子どもの全体的な快適さを改善すること」とされています [1]。38.5℃でも元気に遊んでいるなら使わなくてよいし、37.8℃でもぐったりして眠れないなら使ってあげてください。使える解熱剤はアセトアミノフェン(カロナールなど)が第一選択です。イブプロフェンは日本の添付文書では5歳以上が対象で、5歳未満への安全性は確立していません。生後3か月未満は解熱剤を使う前に必ず受診してください。