愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.425
耳あかの自己処理
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「お風呂のたびに綿棒で耳掃除してます」「奥から大きな耳あかが出ました」。外来でよく話題になります。実は、耳あかは家庭で触りすぎないほうがよい、というのが近年の耳鼻科の標準的な考え方です [1]。
耳あかの役割は
耳あか(耳垢)は「不要なごみ」ではなく、耳の自浄システムの一部です [1]。
| 耳あかの機能 | 内容 |
|---|---|
| 外耳道の保護 | 皮膚を保湿・保護 |
| 抗菌作用 | 細菌・真菌の繁殖を抑える |
| 異物の排出 | 埃や小さな虫を外に押し出す |
| pH調整 | 弱酸性で感染を防ぐ |
耳あかは、外耳道の皮膚が少しずつ外側に移動する「自浄作用(epithelial migration)」で自然に外に運び出されます [1]。この機能があるため、健康な耳では特別な掃除は不要です。
| 耳あかのタイプ | 特徴 |
|---|---|
| 湿性(ウェット) | 黄〜茶色、粘り気あり |
| 乾性(ドライ) | 灰〜茶色、カサカサ |
日本人の約8割は乾性です [2]。これは遺伝子(ABCC11)で決まり、どちらも正常です。
自浄作用で外に運ばれる仕組みがあるので、無理に取り除く必要はありません。
ポイント
- 耳あかは自浄システム [1]
- 基本は放置でよい
- 湿性・乾性はどちらも正常 [2]
綿棒で取ってはいけないのですか
AAO-HNS(米国耳鼻咽喉科学会)のガイドラインは「外耳道に綿棒・ヘアピン・耳かきを入れない」と明記しています [3]。
| 綿棒の問題点 | 内容 |
|---|---|
| 押し込み | 耳あかを奥に押し込む [3] |
| 鼓膜損傷 | 深く入れすぎるリスク |
| 外耳道炎 | 皮膚を傷つけて感染 |
| 自浄作用の妨害 | 皮膚の移動を乱す |
| 依存 | 「取らないと気持ち悪い」癖 |
子どもは特に動きが予測できないため、綿棒を深く入れるのは危険です [3]。突然頭を動かして、鼓膜損傷に至るケースもあります。
耳の入口の汚れを拭く程度ならOK。奥まで入れるのは危険です。
| 安全な「耳の掃除」の範囲 | 内容 |
|---|---|
| 耳介(外側) | 優しく拭く |
| 耳の入口 | 濡れたタオルで軽く拭く |
| 外耳道の奥 | 触らない |
ポイント
- 綿棒の奥への使用はNG [3]
- 耳の入口だけで十分
- 鼓膜損傷のリスク
子どもの耳あかはどう見ればいい
耳の入口に見える耳あかは、そのうち自然に出てきます [1]。心配して頻繁にのぞき込む必要はありません。
| 様子を見ていい耳あか | 内容 |
|---|---|
| 入口に見える程度 | そのまま自然排出を待つ |
| 小さな塊 | 入浴時に柔らかくなって出る |
| 色が茶色 | 正常 |
| 塊が耳介に出てきた | ティッシュで拭き取る |
| 受診を検討する場合 | 内容 |
|---|---|
| 大きな塊で耳が詰まっている | 耳鼻科で除去 |
| 聞こえが悪い | 耳垢栓塞の可能性 |
| 痛がる | 外耳道炎、中耳炎 |
| 黄色い汁 | 中耳炎・外耳道炎 |
| 出血 | 外傷・鼓膜損傷 |
| 臭い | 感染 |
| 頭をよく振る・耳を触る | 違和感 |
ポイント
- 入口の耳あかは様子見 [1]
- 詰まっている時は耳鼻科へ
- 他の症状と合わせて判断
耳垢栓塞とは
耳あかが外耳道を完全に塞いだ状態を「耳垢栓塞(じこうせんそく)」といいます [4]。
| 耳垢栓塞の症状 | 内容 |
|---|---|
| 難聴 | 片耳だけ聞こえにくい |
| 耳閉感 | 詰まった感じ |
| 耳鳴り | ブーンという音 |
| 違和感 | 耳を触る、頭を振る |
家庭で取ろうとすると、押し込みや外耳道の損傷を起こしやすいので、耳鼻科で安全に除去してもらうのがベストです [4]。
| 耳鼻科での除去方法 | 内容 |
|---|---|
| 鉗子・耳かき | 器具でつまむ |
| 吸引 | 掃除機のように吸う |
| 洗浄 | ぬるま湯で流す |
| 軟化剤 | 事前に柔らかくする |
痛みもなく数分で済むことが多いです。
ポイント
- 耳垢栓塞は耳鼻科で [4]
- 家庭で無理に取らない
- 安全・簡単・短時間
耳あかが多い子のケアは
湿性耳垢や耳あかが溜まりやすい子は、定期的に耳鼻科でチェックしてもらうのが安全です [5]。
| 定期チェックの目安 | 内容 |
|---|---|
| 湿性耳垢 | 半年〜1年に1回 |
| 耳あかが溜まりやすい | 数か月に1回 |
| 補聴器・イヤホン使用 | 定期的に |
| 外耳道が狭い | 専門医と相談 |
家庭でできるケアは、入浴時に耳の入口をタオルで拭く程度です [5]。お風呂でお湯が耳に入っても、自然に出てくるので心配いりません。
| よくある誤解 | 実際 |
|---|---|
| 「耳に水が入ると中耳炎」 | 通常は入らないし、入っても中耳炎にならない |
| 「毎日掃除が必要」 | 不要 |
| 「黒ずんだ耳あかは汚い」 | 単なる色、異常ではない |

おかもん先生より
僕自身、昔は綿棒で毎日耳掃除をしていましたが、耳鼻科の先生から「触らない方がいい」と教わり、やめました。それからは全く問題ありません。子どもの耳も同じで、触らない方が健康です。気持ち的には「何かしたい」のですが、ここは我慢が正解です。
ポイント
- 溜まりやすい子は定期チェック [5]
- 家庭は入口を拭くだけ
- 「何もしない」が正解
今号のまとめ
- 耳あかは自浄作用で自然に排出
- 綿棒を外耳道の奥まで入れない
- 耳の入口を拭く程度で十分
- 耳垢栓塞は耳鼻科で安全に除去
- 湿性の子は定期チェックが安心
- 「何もしない」が最善のケア
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ご質問・ご感想
「耳あかが気になる」「取った方がいい?」などは外来でお気軽に。
愛育病院 小児科 おかもん先生
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