愛育病院 小児科おかもん だより Vol.305
「おへそがジュクジュクする」、臍肉芽腫とおへそのケア
今号のポイント
- 2臍の緒は生後1〜2週間で自然に脱落。消毒は不要(WHO推奨のドライケア)
- 4臍肉芽腫は硝酸銀焼灼や結紮で治療。臍炎(発赤・腫脹・悪臭)は感染なので早めに受診
- 6臍ヘルニア(でべそ)とは別物。ジュクジュクが長引く場合は尿膜管遺残の可能性も
こんにちは。愛育病院小児科のおかもんです。
今回のテーマは臍肉芽腫(さいにくがしゅ)とおへそのケアです。
「おへそがまだジュクジュクしています」「臍の緒が取れた後に赤いものが残っています」、1ヶ月健診前後でとても多いご相談です。おへそのトラブルは見た目が気になるものですが、正しい知識があれば安心して対処できます。今号では、臍の緒のケアから臍肉芽腫・臍炎の見分け方まで、まとめてお伝えします。
Q1.「臍の緒はいつ取れるんですか?消毒は必要ですか?」
——退院して1週間経つのに、まだ臍の緒が取れません。毎日消毒したほうがいいですか?
臍の緒は通常生後1〜2週間で自然に脱落します [1]。早い子で5日、遅い子で3週間くらいかかることもありますが、焦る必要はありません。そして消毒についてですが、実は消毒は不要というのが現在の国際的な推奨です [2]
——え、消毒しなくていいんですか?病院では消毒していましたよね?
はい。WHO(世界保健機関)は2013年に、先進国の清潔な環境ではドライケア(乾燥させるだけ)を推奨するガイドラインを出しています [2]。消毒薬(アルコールやイソジンなど)を使うと、かえって正常な乾燥・脱落を遅らせる可能性があるとされています [2]。具体的には、おむつ替えの際におへその根元が濡れていたら清潔なガーゼで優しく拭いて乾かすだけで大丈夫です。おむつは臍の緒に当たらないように折り返してあげてください
——脱落した後はどうすればいいですか?
脱落した後も数日はわずかに出血や滲出液(しんしゅつえき=傷口から出る透明〜やや黄色い液体)が出ることがあります。これは正常です。清潔に保って乾燥させることを続けてください。通常は脱落後1週間程度で完全に乾きます [1]
ポイント
- 臍の緒は生後1〜2週間で自然脱落 [1]
- 消毒は不要。ドライケア(乾燥させるだけ)がWHO推奨 [2]
- おむつは臍の緒に当たらないように折り返す
Q2.「臍の緒が取れた後に赤いできものがあります。これは何ですか?」
——臍の緒が取れたんですが、おへその中に小さな赤いできものが残っていて、ずっとジュクジュクしています
それは臍肉芽腫(さいにくがしゅ)の可能性が高いです [3]。臍の緒が脱落した後に、根元部分の組織が過剰に増殖して残ったもので、小さな赤いポリープ状のできものとして見えます。触ると柔らかく、出血しやすいのが特徴です
——自然に治りますか?
ごく小さなもの(数mm程度)は自然に消えることもありますが、多くの場合は治療が必要です。最も一般的な治療法は硝酸銀焼灼(しょうさんぎんしょうしゃく)です [3]。硝酸銀という薬品を肉芽に塗布して、表面を化学的に処理する方法です。痛みはほとんどなく、外来で数分で終わります。通常1〜3回の処置で7〜14日以内に治癒します [3]
——他にも治療法はありますか?
やや大きな肉芽腫の場合は、結紮(けっさつ=糸で根元を縛る方法)を行うこともあります [4]。糸で根元を縛ると血流が途絶え、数日で肉芽が脱落します。どちらの方法も安全で、傷跡はほとんど残りません。ただし、何度処置しても治らない場合は、後ほどお話しする尿膜管遺残などの可能性があるため、追加の検査が必要になることがあります
ポイント
- 臍肉芽腫は臍の緒の脱落後に残る赤いポリープ状のできもの [3]
- 硝酸銀焼灼で外来治療。1〜3回の処置で7〜14日以内に治癒 [3]
- 大きいものは結紮(糸で縛る)で対応 [4]
Q3.「臍炎(感染)はどう見分けるんですか?」
——ジュクジュクしているだけなら臍肉芽腫かもしれないとのことですが、感染しているかどうかはどう見分ければいいですか?
非常に大切な質問です。臍炎(さいえん=おへその感染症)は、臍肉芽腫とは異なり、早急な治療が必要です。以下のサインがあれば臍炎を疑います [5]。
| 臍炎のサイン | 臍肉芽腫との違い |
|---|---|
| おへその周りの発赤(赤み) | 肉芽腫は赤いできものだけで周囲の皮膚は正常 |
| 腫脹(はれ) | 肉芽腫では周囲の腫れはない |
| 悪臭のある分泌物 | 肉芽腫の分泌物は無臭〜わずかに血性 |
| 触ると痛がる | 肉芽腫は触っても痛がらない |
| 発熱 | 肉芽腫では発熱しない |
臍炎は新生児の免疫が未熟な時期に起こるため、重症化すると敗血症(血液中に細菌が入り込む状態)に至る可能性があります [5]。発赤が臍の周囲に広がっている場合や、赤ちゃんの元気がない場合はすぐに受診してください。抗生物質による治療が必要です
——臍ヘルニアとの違いも教えてください
臍ヘルニアはおへそがポコッと膨らむもので、お腹の筋肉の隙間から腸の一部が押し出されている状態です [6]。ジュクジュクはしません。泣いたりいきんだりすると膨らみが大きくなりますが、指で押すと戻ります。85〜90%は1歳〜5歳で自然に閉じます [6]。臍肉芽腫のジュクジュクとは全く別の状態ですので、混同しないでくださいね
ポイント
- 臍炎は発赤・腫脹・悪臭・発熱が特徴。臍肉芽腫にはこれらがない [5]
- 臍炎は敗血症のリスクがあり、早急な受診が必要 [5]
- 臍ヘルニアは「膨らみ」であり「ジュクジュク」ではない。85〜90%は自然閉鎖 [6]
Q4.「ジュクジュクがなかなか治りません。何か他の原因はありますか?」
——硝酸銀の処置を2回受けましたが、まだジュクジュクが続いています。心配です
通常は硝酸銀焼灼を数回行えば治りますが、何度処置しても治らない場合は、臍肉芽腫以外の原因を考える必要があります [7]。
| 考えるべき原因 | 特徴 |
|---|---|
| 尿膜管遺残 | おへそからおしっこのような液体が出る。膀胱と臍が管でつながったまま残っている |
| 卵黄管遺残 | おへそから腸の内容物のような液体が出る。腸と臍が管でつながったまま残っている |
| 臍茸(さいじょう) | 肉芽腫に似るが、消化管の粘膜組織が残っている |
尿膜管遺残は、胎児期に膀胱と臍をつないでいた管(尿膜管)が出生後も閉じずに残っている先天的な問題です [7]。頻度はまれですが、放置すると感染のリスクがあるため、超音波検査で確認し、必要に応じて手術を行います。ジュクジュクが2〜3週間以上続く場合や、液体の量が多い場合は、遠慮なくご相談ください
ポイント
- 硝酸銀焼灼で治らない場合は尿膜管遺残・卵黄管遺残の可能性 [7]
- おへそからおしっこのような液体が出る場合は要精査 [7]
- ジュクジュクが2〜3週間以上続く場合は受診を
今号のまとめ
- 臍の緒は生後1〜2週間で自然脱落。消毒は不要でドライケアが推奨 [1][2]
- 臍肉芽腫は硝酸銀焼灼で治療。7〜14日で治癒することが多い [3]
- 臍炎(発赤・腫脹・悪臭・発熱)は感染症。すぐに受診を [5]
- 臍ヘルニアとは別物。ヘルニアは「膨らみ」で85〜90%が自然閉鎖 [6]
- ジュクジュクが長引く場合は尿膜管遺残などの可能性 → 受診を [7]
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愛育病院 小児科 おかもん
※ この記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。お子さんの症状が心配な場合は、かかりつけの小児科医にご相談ください。記事中の情報は掲載時点の医学的知見に基づいており、今後の研究の進展により変更される可能性があります。