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前号(Vol.195)では扁桃肥大・アデノイド肥大についてお話ししました。今回は、その最も重要な合併症のひとつである小児の睡眠時無呼吸症候群について詳しく解説します。
「子どものいびきは、ぐっすり眠れている証拠でしょ?」、いいえ、子どものいびきは正常ではありません。習慣的ないびきは、睡眠時無呼吸症候群(OSA)の重要なサインです [1]。
子どもの睡眠時無呼吸って、どういう病気ですか?#
睡眠時無呼吸は大人の病気だと思っていました。子どもにもあるのですか?
はい。小児にも睡眠時無呼吸はありますし、実は決して珍しい病気ではありません [1]。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)とは:
睡眠中にのどの気道が繰り返し狭くなったりふさがったりして、呼吸が止まる(無呼吸)や呼吸が浅くなる(低呼吸)が起きる病態です [1][2]。
大人のOSAとの違い:
どんな症状に気をつければいいですか?#
いびき以外にも、何かサインはありますか?うちの子は落ち着きがないのですが、関係ありますか?
はい。実はOSAの症状はいびきだけではありません。夜間の症状と日中の症状の両方に注意してください。
夜間の症状:
日中の症状:
OSAとADHDの関連:
ここで特に知っていただきたいのが、OSAとADHDの関連です [5]。
- OSAの子どもの約25〜30%がADHD様の症状を示す [5]
- いびきのある子どもでADHDと診断される割合は、いびきのない子どもの約2〜3倍 [5]
- アデノイド・扁桃摘出術後にADHD様症状が改善するケースが報告されている [5][6]
- つまり、ADHDと思われていた症状の一部が、実はOSAによる睡眠不足が原因だった可能性がある [5]
どうやって診断するのですか?#
いびきがあるだけで病院に行っていいのでしょうか?どんな検査をするのですか?
もちろんです。習慣的ないびきがあれば、OSAのスクリーニングが推奨されています [1]。
診断の流れ:
終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)とは:
PSGは、一晩かけて睡眠中の呼吸状態を詳しく記録する検査です [7]。
| 記録項目 | 何を見るか |
|---|---|
| 脳波(EEG) | 睡眠の段階、覚醒反応 |
| 眼電図 | 睡眠段階の判定 |
| 筋電図 | 筋緊張の変化 |
| 鼻・口の気流 | 無呼吸・低呼吸の検出 |
| 胸腹部の動き | 呼吸努力の評価 |
| SpO2(経皮的酸素飽和度) | 低酸素の有無 |
| 心電図 | 不整脈の有無 |
| 体位・いびき | 体位依存性の評価 |
記録項目何を見るか
脳波(EEG)
睡眠の段階、覚醒反応
眼電図
睡眠段階の判定
筋電図
筋緊張の変化
鼻・口の気流
無呼吸・低呼吸の検出
胸腹部の動き
呼吸努力の評価
SpO2(経皮的酸素飽和度)
低酸素の有無
心電図
不整脈の有無
体位・いびき
体位依存性の評価
| 指標 | 正常 | OSA |
|---|---|---|
| 閉塞性無呼吸低呼吸指数(AHI) | <1回/時 | 1回/時以上 |
| 軽症OSA | AHI 1〜5回/時 | |
| 中等症OSA | AHI 5〜10回/時 | |
| 重症OSA | AHI >10回/時 |
指標
閉塞性無呼吸低呼吸指数(AHI)
正常
<1回/時
OSA
1回/時以上
指標
軽症OSA
正常
OSA
AHI 1〜5回/時
指標
中等症OSA
正常
OSA
AHI 5〜10回/時
指標
重症OSA
正常
OSA
AHI >10回/時
大人ではAHI 5以上が異常ですが、小児ではAHI 1以上で異常と判定される点に注意してください [7]。
治療はどうするのですか?#
OSAと診断されたら、どんな治療がありますか?手術は怖いのですが……。
治療法はいくつかありますが、最も多い原因であるアデノイド・扁桃肥大が原因の場合は、手術が第一選択です [1]。
治療の選択肢:
| 治療法 | 対象 | 有効率 |
|---|---|---|
| アデノイド・扁桃摘出術(AT) | アデノイド・扁桃肥大が原因の場合 | PSGでのAHI改善率 約70〜80% [8][9] |
| 体重管理・減量 | 肥満が関与している場合 | 肥満児のOSAを有意に改善 [1] |
| CPAP | 手術の適応がない場合、手術後も残存OSAがある場合 | 有効だがアドヒアランスが課題 [1][10] |
| 鼻腔ステロイド | 軽症OSA、術後残存OSA | 軽症例で改善の可能性 [11] |
| ロイコトリエン受容体拮抗薬(モンテルカスト) | 軽症OSA | リンパ組織縮小効果の報告あり [11] |
| 口腔内装置・顎顔面矯正 | 顎顔面の形態異常が関与 | 上顎拡大装置などの効果報告あり [1] |
アデノイド・扁桃摘出術について:
前号(Vol.195)でも詳しくお話ししましたが、改めて重要なポイントを整理します。
肥満児のOSAに対する注意:
肥満のお子さんでは、アデノイド・扁桃摘出術だけではOSAが残存する率が高い(約50%で残存)[9]。このため、手術と並行して減量を行い、必要に応じてCPAPを検討します [1]。
放っておくとどうなりますか?#
そこまで重症でなければ、様子を見てもいいのでしょうか?
OSAは放置すると複数の臓器に悪影響を及ぼす可能性があるため、程度に応じた対応が必要です [1]。
未治療OSAの影響:
| 影響される領域 | 具体的なリスク | エビデンス |
|---|---|---|
| 成長 | 成長ホルモン分泌の障害、身長の伸びの鈍化 | 深い睡眠(ノンレム睡眠のステージ3)の減少が原因 [1][12] |
| 神経認知発達 | 注意力低下、記憶力低下、学業成績の低下 | 間欠的低酸素と睡眠の分断が原因 [3][12] |
| 行動 | 多動、衝動性、攻撃性、情緒不安定 | ADHD様症状 [3][5] |
| 心血管系 | 肺高血圧、右心不全(肺性心)、血圧上昇 | 重症・長期例で報告 [12][13] |
| 代謝 | インスリン抵抗性、メタボリック症候群のリスク上昇 | 肥満OSAで特に顕著 [13] |
| QOL(生活の質) | 日中の活動性低下、社会的活動への影響 | 本人・家族ともにQOL低下 [9] |
- ダウン症候群: 約50〜80%にOSAが合併(筋緊張低下、中顔面低形成)
- 肥満児: 成人と同様にOSAリスクが高い
- 神経筋疾患: 筋ジストロフィーなど
- 頭蓋顔面形態異常: ピエール・ロバン症候群など
- 鎌状赤血球症: アデノイド・扁桃肥大の頻度が高い
受診の目安:
まとめ#
小児の睡眠時無呼吸症候群のポイントを最後に整理します。
お子さんの「いびき」は、「よく寝ている証拠」ではありません。気になる症状があれば、ぜひ一度ご相談ください。