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「子どものいびき、放っておいて大丈夫?」、小児の睡眠時無呼吸症候群
Vol.196耳・鼻・のど

「子どものいびき、放っておいて大丈夫?」、小児の睡眠時無呼吸症候群

小児の閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の有病率は1〜5%で、最も多い原因はアデノイド・扁桃肥大

耳・鼻・のど全年齢14
おかもん先生小児科専門医愛育病院 小児科

参考文献 13·Q&A 5問収録

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この記事のポイント

  • 小児の閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の有病率は1〜5%で、最も多い原因はアデノイド・扁桃肥大
  • いびきだけでなく、夜尿・多動・学習困難もOSAの症状であり、ADHDと誤診されることがある
  • 未治療のOSAは成長障害・学習障害・心血管リスクにつながるため、早期の診断と治療が重要

愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.196

「子どものいびき、放っておいて大丈夫?」、小児の睡眠時無呼吸症候群

今号のポイント

  1. 2
    小児の閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の有病率は1〜5%で、最も多い原因はアデノイド・扁桃肥大
  2. 4
    いびきだけでなく、夜尿・多動・学習困難もOSAの症状であり、ADHDと誤診されることがある
  3. 6
    未治療のOSAは成長障害・学習障害・心血管リスクにつながるため、早期の診断と治療が重要

こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。

前号(Vol.195)では扁桃肥大・アデノイド肥大についてお話ししました。今回は、その最も重要な合併症のひとつである小児の睡眠時無呼吸症候群について詳しく解説します。

「子どものいびきは、ぐっすり眠れている証拠でしょ?」、いいえ、子どものいびきは正常ではありません。習慣的ないびきは、睡眠時無呼吸症候群(OSA)の重要なサインです [1]。

Q1.「子どもの睡眠時無呼吸って、どういう病気ですか?」

——睡眠時無呼吸は大人の病気だと思っていました。子どもにもあるのですか?

はい、実は子どもにも結構あるんです。決して珍しい病気ではありません [1]

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)とは:

睡眠中にのどの気道が繰り返し狭くなったりふさがったりして、呼吸が止まる(無呼吸)や呼吸が浅くなる(低呼吸)が起きる病態です [1][2]。

項目内容
有病率小児の1〜5%(習慣的いびきは10〜12%)[1][2]
好発年齢2〜8歳(アデノイド・扁桃の生理的肥大のピークと一致)[2]
最も多い原因アデノイド・扁桃肥大(小児OSAの約70〜80%)[1][2]
その他の原因肥満、頭蓋顔面の形態異常、神経筋疾患、ダウン症候群 [2]

大人のOSAとの違い:

大人のOSA

主な原因
肥満
性差
男性に多い
日中の眠気
著明
行動面への影響
眠気が中心
治療の第一選択
CPAP

子どものOSA

主な原因
アデノイド・扁桃肥大 [1]
性差
性差なし [2]
日中の眠気
目立たないことが多い [1]
行動面への影響
多動・不注意・攻撃性 [3]
治療の第一選択
アデノイド・扁桃摘出術 [1]

ポイント

  • 小児OSAの有病率は1〜5%。習慣的いびきは10〜12%に見られる [1][2]
  • 最も多い原因はアデノイド・扁桃肥大で、2〜8歳に多い [1][2]
  • 大人と異なり、日中の眠気よりも行動面の問題として現れることが多い [1][3]

Q2.「どんな症状に気をつければいいですか?」

——いびき以外にも、何かサインはありますか?うちの子は落ち着きがないのですが、関係ありますか?

はい。実はOSAの症状はいびきだけではありません。夜間の症状と日中の症状の両方に注意してください。

夜間の症状:

症状詳細
習慣的ないびき週3回以上。子どもの正常なサインではない [1]
無呼吸エピソード呼吸が止まる瞬間が観察される [1]
努力性呼吸胸やおなかが大きく動く、陥没呼吸 [1]
口呼吸常に口を開けて寝ている [2]
異常な寝相首を反らせる、うつぶせで頭を高くする [2]
夜尿(おねしょ)OSAの子どもの約30%に合併 [4]
多量の寝汗呼吸努力の増大による [2]

日中の症状:

症状詳細
注意力の低下授業に集中できない [3]
多動・衝動性ADHDに似た行動 [3][5]
攻撃性・イライラ行動面の問題 [3]
学習困難成績の低下 [3]
朝の頭痛起床時の頭痛 [2]
成長障害体重増加不良、身長の伸びが悪い [1]

OSAとADHDの関連:

ここで特に知っていただきたいのが、OSAとADHDの関連です [5]。

  • OSAの子どもの約25〜30%がADHD様の症状を示す [5]
  • いびきのある子どもでADHDと診断される割合は、いびきのない子どもの約2〜3倍 [5]
  • アデノイド・扁桃摘出術後にADHD様症状が改善するケースが報告されている [5][6]
  • つまり、ADHDと思われていた症状の一部が、実はOSAによる睡眠不足が原因だった可能性がある [5]

ポイント

  • 夜間のサイン: いびき、無呼吸、口呼吸、夜尿、異常な寝相 [1][2][4]
  • 日中のサイン: 多動、不注意、攻撃性、学習困難、朝の頭痛 [2][3]
  • ADHDの症状がOSAに起因している可能性がある。いびきがある子の行動面の問題は、まずOSAを疑おう [5][6]

Q3.「どうやって診断するのですか?」

——いびきがあるだけで病院に行っていいのでしょうか?どんな検査をするのですか?

もちろんです。習慣的ないびきがあれば、OSAのスクリーニングが推奨されています [1]

診断の流れ:

内容

1. 問診
症状の確認
2. 身体診察
扁桃・アデノイドの評価
3. PSG(推奨)
終夜睡眠ポリグラフ検査

詳細

1. 問診
いびきの頻度、無呼吸の有無、日中の症状 [1]
2. 身体診察
口蓋扁桃の大きさ(Brodsky分類)、BMI [1]
3. PSG(推奨)
OSA診断のゴールドスタンダード [1][7]

終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)とは:

PSGは、一晩かけて睡眠中の呼吸状態を詳しく記録する検査です [7]。

記録項目何を見るか
脳波(EEG)睡眠の段階、覚醒反応
眼電図睡眠段階の判定
筋電図筋緊張の変化
鼻・口の気流無呼吸・低呼吸の検出
胸腹部の動き呼吸努力の評価
SpO2(経皮的酸素飽和度)低酸素の有無
心電図不整脈の有無
体位・いびき体位依存性の評価

小児OSAの診断基準(PSG)[1][7]:

正常

閉塞性無呼吸低呼吸指数(AHI)
<1回/時
軽症OSA
中等症OSA
重症OSA

OSA

閉塞性無呼吸低呼吸指数(AHI)
1回/時以上
軽症OSA
AHI 1〜5回/時
中等症OSA
AHI 5〜10回/時
重症OSA
AHI >10回/時

大人ではAHI 5以上が異常ですが、小児ではAHI 1以上で異常と判定される点に注意してください [7]。

ポイント

  • 習慣的ないびきがあれば受診の適応があります [1]
  • PSG(終夜睡眠ポリグラフ検査)がOSA診断のゴールドスタンダード [1][7]
  • 小児ではAHI 1回/時以上でOSAと診断される(大人より厳しい基準)[7]

Q4.「治療はどうするのですか?」

——OSAと診断されたら、どんな治療がありますか?手術は怖いのですが……。

治療法はいくつかありますが、最も多い原因であるアデノイド・扁桃肥大が原因の場合は、手術が第一選択です [1]

治療の選択肢:

対象

アデノイド・扁桃摘出術(AT)
アデノイド・扁桃肥大が原因の場合
体重管理・減量
肥満が関与している場合
CPAP
手術の適応がない場合、手術後も残存OSAがある場合
鼻腔ステロイド
軽症OSA、術後残存OSA
ロイコトリエン受容体拮抗薬(モンテルカスト)
軽症OSA
口腔内装置・顎顔面矯正
顎顔面の形態異常が関与

有効率

アデノイド・扁桃摘出術(AT)
PSGでのAHI改善率 約70〜80% [8][9]
体重管理・減量
肥満児のOSAを有意に改善 [1]
CPAP
有効だがアドヒアランスが課題 [1][10]
鼻腔ステロイド
軽症例で改善の可能性 [11]
ロイコトリエン受容体拮抗薬(モンテルカスト)
リンパ組織縮小効果の報告あり [11]
口腔内装置・顎顔面矯正
上顎拡大装置などの効果報告あり [1]

アデノイド・扁桃摘出術について:

前号(Vol.195)でも詳しくお話ししましたが、改めて重要なポイントを整理します。

項目内容
いびきの改善率約80〜90% [8]
PSG上のOSA改善率約70〜80%(AHI正常化)[8][9]
行動面の改善注意力、学業成績、QOLの有意な改善 [9]
成長への効果体重増加、身長の伸びの改善 [1]
夜尿の改善術後に夜尿が改善するケースも多い [4]

肥満児のOSAに対する注意:

肥満のお子さんでは、アデノイド・扁桃摘出術だけではOSAが残存する率が高い(約50%で残存)[9]。このため、手術と並行して減量を行い、必要に応じてCPAPを検討します [1]。

ポイント

  • アデノイド・扁桃肥大が原因のOSAでは、手術が第一選択 [1]
  • 手術でいびき80〜90%、PSG上のOSA 70〜80%が改善 [8][9]
  • 肥満児では手術だけでは不十分なことがあり、減量やCPAPが追加で必要 [1][9]
  • 軽症OSAではステロイド点鼻やモンテルカストという薬物療法の選択肢もある [11]

Q5.「放っておくとどうなりますか?」

——そこまで重症でなければ、様子を見てもいいのでしょうか?

OSAは放置すると複数の臓器に悪影響を及ぼす可能性があるため、程度に応じた対応が必要です [1]

未治療OSAの影響:

具体的なリスク

成長
成長ホルモン分泌の障害、身長の伸びの鈍化
神経認知発達
注意力低下、記憶力低下、学業成績の低下
行動
多動、衝動性、攻撃性、情緒不安定
心血管系
肺高血圧、右心不全(肺性心)、血圧上昇
代謝
インスリン抵抗性、メタボリック症候群のリスク上昇
QOL(生活の質)
日中の活動性低下、社会的活動への影響

エビデンス

成長
深い睡眠(ノンレム睡眠のステージ3)の減少が原因 [1][12]
神経認知発達
間欠的低酸素と睡眠の分断が原因 [3][12]
行動
ADHD様症状 [3][5]
心血管系
重症・長期例で報告 [12][13]
代謝
肥満OSAで特に顕著 [13]
QOL(生活の質)
本人・家族ともにQOL低下 [9]

特に注意すべきハイリスクグループ [1][2]:

  • ダウン症候群: 約50〜80%にOSAが合併(筋緊張低下、中顔面低形成)
  • 肥満児: 成人と同様にOSAリスクが高い
  • 神経筋疾患: 筋ジストロフィーなど
  • 頭蓋顔面形態異常: ピエール・ロバン症候群など
  • 鎌状赤血球症: アデノイド・扁桃肥大の頻度が高い

受診の目安:

状況対応
習慣的ないびき(週3回以上)かかりつけ医に相談 [1]
無呼吸が目撃される早めに小児科または耳鼻科を受診 [1]
日中の行動面の問題(多動、不注意)OSAの可能性も含めて評価 [5]
成長が止まった・体重が増えない総合的な評価が必要 [1]
チアノーゼ(唇や顔が青くなる)救急受診

ポイント

  • 未治療のOSAは成長障害、学習障害、行動面の問題、心血管リスクにつながる [1][3][12][13]
  • ダウン症候群、肥満、神経筋疾患のお子さんは特にOSAのリスクが高い [1][2]
  • 習慣的ないびきがあれば、「様子を見る」のではなく受診を [1]

まとめ

小児の睡眠時無呼吸症候群のポイントを最後に整理します。

項目内容
有病率小児の1〜5% [1][2]
最も多い原因アデノイド・扁桃肥大(70〜80%)[1][2]
夜間の症状いびき、無呼吸、口呼吸、夜尿、異常な寝相 [1][2][4]
日中の症状多動、不注意、学習困難、成長障害 [1][3]
ADHDとの関連OSAがADHD様症状を引き起こすことがある。いびきがあれば要評価 [5][6]
診断PSG(終夜睡眠ポリグラフ検査)がゴールドスタンダード。AHI 1以上で異常 [1][7]
治療アデノイド・扁桃摘出術が第一選択。肥満児ではCPAPも検討 [1][8][9]
未治療のリスク成長障害、学習障害、心血管リスク、QOL低下 [1][3][12][13]

お子さんの「いびき」は、「よく寝ている証拠」ではありません。気になる症状があれば、ぜひ一度ご相談ください。

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