愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.118
「お兄ちゃんだから我慢してね」は禁句です、きょうだい児の支援
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
発達障害のあるお子さんのきょうだい(「きょうだい児」と呼ばれます)は、保護者の注意が障害のあるきょうだいに集中しがちな中で、寂しさや複雑な気持ちを抱えていることがあります。きょうだい児への配慮は、家族全体の幸せにつながります。今回は、きょうだい児の気持ちと支援のポイントをお伝えします。
Q1.「きょうだい児はどんな気持ちを抱えていますか?」
——上の子がADHDで、下の子に手が回らないことが多いです。下の子は大丈夫でしょうか?
きょうだい児は、表面上は問題なく見えても、複雑な感情を内に抱えていることが多いです [1]。メタ分析では、知的障害・発達障害のあるきょうだいを持つ子どもの一定割合が心理的な適応困難を経験すると報告されています [2](※比率は研究により幅があり、要確認)。
| きょうだい児が抱きやすい気持ち | 具体例 |
|---|---|
| 寂しさ | 「お母さんはいつもお兄ちゃんの方を見ている」 |
| 罪悪感 | 「自分だけ普通でごめんなさい」 |
| 怒り | 「なんでいつも我慢しなきゃいけないの」 |
| 不安 | 「自分も同じになるのかな」 |
| 責任感 | 「自分がしっかりしなきゃ」(過剰適応) |
| 恥ずかしさ | 友達の前できょうだいの行動が気になる |
ポイント
- きょうだい児の一定割合が心理的困難を経験(比率は研究により幅あり)
- 寂しさ、罪悪感、怒り、不安など複雑な感情を抱く
- 表面上「いい子」に見えるほど注意が必要
Q2.「きょうだい児への影響にはどんなものがありますか?」
——具体的にどんな問題が出ることがありますか?
きょうだい児に見られる影響は、ネガティブなものだけでなく、ポジティブなものもあります [3]。大切なのは、ネガティブな影響を最小限にし、ポジティブな成長を支えることです。
| ネガティブな影響 | ポジティブな影響 |
|---|---|
| 不安・抑うつ傾向 | 思いやり・共感性の発達 |
| 行動上の問題 | 忍耐力・問題解決能力 |
| 学業への影響 | 多様性への理解 |
| 自己肯定感の低下 | 成熟した人間性 |
| 身体症状(頭痛・腹痛) | 将来の対人援助職への関心 |
ポイント
- 影響にはネガティブとポジティブの両面がある
- 適切な支援でポジティブな成長を促せる
- 身体症状として現れることもある
Q3.「家庭でできるきょうだい児への支援は?」
——下の子にどう接すればいいですか?忙しくて時間がないのですが……
量より質が大切です。毎日5分でもいいので、きょうだい児だけに100%注目する時間を作ってください [4]。
| 支援のポイント | 具体的な方法 |
|---|---|
| ①1対1の時間 | 「あなただけの特別な時間」を毎日5-10分確保する |
| ②気持ちの受容 | 「嫌だと思ってもいいんだよ」とネガティブな感情も認める |
| ③年齢に応じた説明 | きょうだいの障害について正直に、わかりやすく伝える |
| ④役割からの解放 | 「お兄ちゃん・お姉ちゃんだから」と責任を押し付けない |
| ⑤特別扱いの透明化 | きょうだいへの配慮の理由を説明する |
「『お兄ちゃんだから我慢してね』は禁句です [5]。きょうだい児には、我慢を強いるのではなく、年齢相応に甘えることを保証してあげてください。」
ポイント
- 毎日5分の「あなただけの時間」が効果的
- ネガティブな感情を否定しない
- 「お兄ちゃんだから」と役割を押し付けない
Q4.「きょうだいの障害をどう説明すればいいですか?」
——下の子に、上の子のADHDをどう説明すればいいですか?
年齢に合わせた言葉で、正直に伝えることが大切です [6]。隠すことは、かえってきょうだい児の不安を大きくします。
| 年齢 | 伝え方の例 |
|---|---|
| 3-5歳 | 「○○ちゃんは、じっとしているのが難しいんだよ。みんな得意なことと苦手なことがあるでしょ?」 |
| 6-9歳 | 「○○くんの脳は、集中するスイッチの入り方がちょっと違うんだ。だからお薬で手伝ってもらっているんだよ」 |
| 10歳以上 | 「ADHDという特性があって、注意を持続させるのが難しいんだ。病気ではなくて脳のタイプの違い」 |
「説明する際は、①障害名を正しく伝える ②苦手なことだけでなく得意なことも伝える ③質問にはいつでも答えると安心させる、の3点を心がけてください。」
ポイント
- 隠すより年齢に合わせて正直に伝える
- 苦手だけでなく得意なことも一緒に伝える
- 「いつでも聞いていいよ」と安心感を与える
Q5.「きょうだい児の支援を受けられる場所はありますか?」
——家庭だけでの対応に限界を感じています。相談先はありますか?
きょうだい児への支援は近年注目されており、さまざまな支援の場があります [7]。
| 支援の種類 | 内容 |
|---|---|
| シブリングサポート | きょうだい児同士が交流するプログラム(NPO法人しぶたね等) |
| 家族支援プログラム | 家族全体を対象とした心理教育 |
| スクールカウンセラー | 学校での相談窓口 |
| 児童精神科 | きょうだい児自身の心理的問題がある場合 |
| 港区子ども家庭支援センター | 育児全般の相談 |
| ペアレントトレーニング | 保護者がきょうだい関係のスキルを学ぶ |
「きょうだい児自身が『自分の気持ちを話していい場所がある』と知ることが、大きな支えになります。」
ポイント
- シブリングサポートなど、きょうだい児向けプログラムがある
- 学校のスクールカウンセラーも相談先の一つ
- きょうだい児自身の問題には児童精神科も検討
今号のまとめ
- きょうだい児は複雑な感情を抱えやすく、一定割合が心理的困難を経験すると報告されています
- 毎日5分でも「あなただけの時間」を作ることが最も効果的な支援です
- 「お兄ちゃんだから」と我慢を強いることは避け、年齢相応に甘えさせてください
- きょうだいの障害は年齢に合わせて正直に伝えましょう
- シブリングサポートなどの外部支援も活用してください
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- Vol.099「自閉スペクトラム症(ASD)の基礎」
- Vol.101「ADHD(注意欠如・多動症)の基礎」
- Vol.117「発達障害の二次障害」
- Vol.138「ペアレントトレーニング」
ご質問・ご感想
「きょうだいの関係で悩んでいます」「こうやって乗り越えました」など、ご経験やご質問がございましたら、お気軽にお寄せください。きょうだい児の支援は、家族全体の幸せにつながります。
愛育病院 小児科 おかもん先生
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