愛育病院 小児科おかもん だより Vol.340
「学校の心臓検診で異常と言われたら」、慌てないために知っておきたいこと
今号のポイント
- 2学校心臓検診は日本独自の優れた制度。「要精密検査」の多くは治療不要な正常変異です
- 4本当に注意すべきはQT延長症候群・肥大型心筋症・Brugada症候群などごく一部
- 6精密検査(心エコー・ホルター心電図)を受ければ、ほとんどのケースで安心できます
こんにちは。愛育病院小児科のおかもんです。
新学期になると、小学校1年生・中学校1年生・高校1年生で心臓検診が行われます。「要精密検査」と書かれた紙を持って外来に来られるご家族は、本当に不安そうです。ただ、精密検査まで進んだお子さんのほとんどは、治療が必要ない範囲のものです。今回は、学校心臓検診の仕組みと「異常」と言われたときにどう受け止めればよいかを、Q&A形式でお話しします。
Q1. そもそも学校心臓検診って何ですか?
お母さん:学校から心臓検診の結果をもらったんですが、「要精密検査」と書いてあって……。
おかもん先生:ご心配ですよね。まず学校心臓検診の仕組みを説明しますね。日本では学校保健安全法に基づいて、小学校1年・中学校1年・高校1年で心電図検査を含む心臓検診が行われています[1]。これは実は世界でもほとんど例のない、日本独自の制度なんです。
お母さん:日本だけの制度なんですか?
おかもん先生:はい。1973年に制度化されて以来、50年以上の歴史があります。この制度のおかげで、症状が出る前に心臓の病気を見つけられるケースが数多くあります[2]。心電図は心臓の電気活動を記録するもので、不整脈や心筋の異常を検出するのに優れた検査です。
ポイント:学校心臓検診は日本独自の制度で、1973年から続く実績ある予防医療プログラムです。
Q2. 心電図で見つかる「異常」にはどんなものがありますか?
お父さん:「心電図異常」と言われても、何が異常なのかさっぱりわかりません。
おかもん先生:心電図で指摘される所見にはいくつかの種類があります。よく見つかるものとしては:
- 不完全右脚ブロック:小児では非常に多く見られる所見で、ほとんどの場合は正常変異です[3]。心臓の電気の伝わり方にわずかな個人差があるだけで、治療は不要です。
- WPW症候群(ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群):心臓に余分な電気の通り道(副伝導路)があるものです。多くは無症状ですが、まれに頻脈発作を起こすことがあります[4]。
- 期外収縮:心臓が予定外のタイミングで拍動するものです。健康な子どもでも見られることがあり、単発であれば多くの場合問題ありません。
- QT延長:心臓の電気活動の回復に時間がかかる状態です。これは注意が必要な場合があります。
お父さん:その中で、本当に心配なものはどれですか?
おかもん先生:特に注意が必要なのは以下の3つです:
- 2QT延長症候群:重症の不整脈や突然死のリスクがある遺伝性疾患です[5]。有病率は約2,000人に1人とされています。
- 4肥大型心筋症:心筋が異常に厚くなる疾患で、若年者の突然死の原因として最も多いものの一つです[6]。
- 6Brugada症候群:特徴的な心電図パターンを示し、致死的不整脈を起こす可能性があります[7]。
ポイント:心電図異常の多くは治療不要な正常変異ですが、QT延長症候群・肥大型心筋症・Brugada症候群は適切な管理が必要です。
Q3. 精密検査ではどんなことをするのですか?
お母さん:「要精密検査」と言われたので病院に行くのですが、子どもにどんな検査をするのか不安です。
おかもん先生:精密検査は基本的に痛くない検査ばかりなので安心してください。主な検査は以下の通りです:
- 2詳しい心電図(12誘導心電図):学校での検査より詳しく記録します。安静にしていれば5分ほどで終わります。
- 4心エコー(心臓超音波検査):超音波で心臓の形や動きをリアルタイムに見る検査です。心臓の構造的な異常(心筋の厚さ、弁の異常、心室中隔欠損など)を確認できます[8]。15〜30分程度かかりますが、痛みはありません。
- 6ホルター心電図(24時間心電図):小さな機器を体に貼り付けて、24時間の心電図を記録します。日常生活の中で不整脈が起きていないかを調べます。
- 8運動負荷心電図:必要に応じて、運動中の心電図変化を調べることもあります。
お母さん:検査の結果、どのくらいの子が「問題なし」になるのですか?
おかもん先生:精密検査を受けた子どもの約70〜80%は「経過観察」もしくは「異常なし」と判断されます[1]。つまり、「要精密検査」イコール「心臓の病気」ではないということを覚えておいてください。
ポイント:精密検査は心エコーやホルター心電図など痛みのない検査が中心です。精密検査を受けた子の7〜8割は問題ないと判断されます。
Q4. 運動制限はどうなりますか?
お父さん:もし何か見つかった場合、体育や部活の運動は制限されるのでしょうか?
おかもん先生:これはとても大切なご質問です。運動制限が必要かどうかは、診断名と重症度によって個別に判断されます。日本循環器学会と日本小児循環器学会が共同で作成した「学校心臓検診のガイドライン」に基づいて、管理指導表(管理カード)が発行されます[9]。
管理区分は大きく分けて以下のようになっています:
- 管理不要(E):通常通りの運動が可能
- 軽い運動制限(D):軽い運動は可、強い運動は主治医と相談
- 中等度の制限(C):同年齢の平均的な運動は不可
- 強い制限(B):軽い運動のみ可
- 運動禁止(A):運動不可、安静が必要
お父さん:不完全右脚ブロックと言われた場合はどうですか?
おかもん先生:不完全右脚ブロックだけで他に異常がなければ、管理不要(E)となり、何の制限もなく運動できます。WPW症候群も無症状であれば多くの場合、通常の運動が可能です[4]。一方、QT延長症候群では競技スポーツに制限がかかる場合があります。いずれにしても、お子さん一人ひとりの状態に合わせて主治医が判断しますので、しっかりと相談してくださいね。
ポイント:運動制限は個別に判断されます。「要精密検査」の多くは管理不要(制限なし)となります。
まとめ
- 学校心臓検診は日本が世界に誇る予防医療制度です
- 「要精密検査」と言われても、多くは治療不要な正常変異です
- 本当に注意が必要なのはQT延長症候群・肥大型心筋症・Brugada症候群などごく一部です
- 精密検査は心エコー・ホルター心電図など痛みのない検査が中心です
- 運動制限が必要なケースは限られており、個別に判断されます
- 「要精密検査」の結果を受けたら、慌てずに小児循環器の専門医を受診しましょう
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