愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.463
「乳歯が抜けないけど大丈夫?」、学童期の歯のトラブルと矯正のタイミング
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「6歳臼歯が虫歯になりやすいと聞きました」「下の前歯が二重になって生えてきました」「矯正はいつ相談すればよいですか?」、小学生になると歯に関するご相談がぐっと増えます。学童期は乳歯から永久歯への生え変わりと、第一大臼歯の萌出が重なる「歯科的に最もリスクの高い時期」です。今回は、学童期の虫歯予防・生え変わり・矯正のタイミングについて整理します。
Q1.「6歳臼歯が生えてきました。何に注意すればよいですか?」
——一番奥に新しい歯が生えてきました。『6歳臼歯』と言われました
第一大臼歯(6歳臼歯)は6歳頃に乳歯の奥に生える永久歯で、咀嚼の要となる重要な歯です [1]。しかし萌出に1年以上かかり、背が低く歯ブラシが届きにくいため、最も虫歯になりやすい歯でもあります [1]。
| 6歳臼歯の特徴 [1] |
|---|
| 6〜7歳頃に乳歯の奥に萌出 |
| 乳歯が抜けずに生えるため気づきにくい |
| 噛み合わせの中心となる歯 |
| 複雑な溝(小窩裂溝)で汚れがたまりやすい |
| 完全萌出まで1年以上かかる |
| 予防のポイント [2] |
|---|
| 仕上げ磨きを小学校低学年まで続ける |
| 歯ブラシを横から入れる「横磨き」 |
| フッ化物配合歯磨剤(1,000-1,500ppm)使用 |
| シーラント(溝を樹脂で埋める予防処置)の検討 |
| 3〜6か月ごとの定期歯科健診 |
ポイント
- 6歳臼歯は最も虫歯になりやすい [1]
- 仕上げ磨きの継続が重要 [2]
- シーラントで溝を保護できる [2]
Q2.「乳歯が抜けないのに永久歯が生えてきました」
——下の前歯が二重に生えています。どうすればいいですか?
乳歯が残ったまま永久歯が内側から生える『二重歯列』は学童期によくみられます [1]。多くは乳歯が自然に抜けて永久歯が正しい位置に移動しますが、数か月経っても乳歯が抜けない場合は歯科で抜歯を検討します [1]。
| 永久歯の生える順番の目安 [1] |
|---|
| 6〜7歳:第一大臼歯・下顎中切歯 |
| 7〜8歳:上顎中切歯・下顎側切歯 |
| 8〜9歳:上顎側切歯 |
| 9〜11歳:犬歯・第一小臼歯 |
| 10〜12歳:第二小臼歯 |
| 11〜13歳:第二大臼歯 |
| 受診の目安 [1] |
|---|
| 永久歯が生えて3か月経っても乳歯が抜けない |
| 左右差が大きい(片側だけ生えない) |
| 生え変わりの時期が大きく遅れる |
| 永久歯が萌出しない |
ポイント
- 二重歯列の多くは自然に解消 [1]
- 3か月以上残る乳歯は歯科相談 [1]
- 左右差が大きい場合も要相談 [1]
Q3.「フッ素はどれくらい使えばよいですか?」
——歯磨き粉のフッ素量、いつまでどれくらい使えばよいですか?
日本口腔衛生学会等の合同推奨では、6歳以上は1,000〜1,500ppmのフッ化物配合歯磨剤を『えんどう豆大』(約1g)使用します [2]。歯磨き後のうがいは少量の水で1回程度にすると、フッ素が口腔内に残り効果が持続します [2]。
| 年齢別フッ素使用基準(日本口腔衛生学会他 4学会合同推奨) [2] |
|---|
| 歯が生えてから2歳:1,000ppm、米粒大(1〜2mm) |
| 3〜5歳:1,000ppm、グリーンピース大(5mm) |
| 6歳以上:1,000〜1,500ppm、えんどう豆大(1〜2cm) |
| 歯磨き後のうがい [2] |
|---|
| うがいはしないか、少量(5-15mL)で1回 |
| 歯磨き後30分は飲食を控えるとより効果的 |
| 歯科医院でのフッ素塗布 [2] |
|---|
| 高濃度フッ化物を3〜6か月ごとに塗布 |
| 自宅のフッ素入り歯磨剤と併用で効果倍増 |
| 港区の医療費助成で多くの歯科で自己負担軽減 |
ポイント
- 6歳以上は1,000〜1,500ppmが推奨 [2]
- 使用量はえんどう豆大 [2]
- うがいは少量・1回がコツ [2]
Q4.「学校の歯科健診で『要観察』と言われました」
——『CO』『GO』と書かれていました。どういう意味ですか?
学校歯科健診では虫歯(C)・歯周疾患(G)とその前段階(CO・GO)を区別して記録します [4]。『要観察』は虫歯や歯肉炎の初期段階で、生活改善と予防で進行を止められる状態です [4]。
| 学校歯科健診の記号 [4] |
|---|
| CO:虫歯の初期病変(要観察) |
| C:治療が必要な虫歯 |
| GO:歯肉炎の初期(要観察) |
| G:治療が必要な歯肉炎 |
| O:その他の疾患・異常 |
| CO・GOの対応 [4] |
|---|
| 3〜6か月ごとの歯科健診 |
| 歯磨き指導を受ける |
| フッ化物塗布 |
| 糖分の摂取頻度を見直す |
| 受診票が出たら [4] |
|---|
| 早めに歯科受診 |
| 港区のマル子医療証で自己負担なし |
| 治療結果を学校に提出 |
ポイント
- CO/GOは初期の「要観察」 [4]
- 生活改善で進行を止められる [4]
- 港区は歯科治療も自己負担なし [5]
Q5.「矯正はいつ相談すればよいですか?」
——歯並びが気になります。矯正はいつ始めるのがよいですか?
矯正相談は混合歯列期(乳歯と永久歯が混在する7〜10歳頃)が目安です [3]。不正咬合の種類により開始時期が異なり、反対咬合(受け口)は早期介入が有効とされます [3]。
| 矯正相談の目安時期 [3] |
|---|
| 反対咬合(受け口):3〜6歳でも相談可 |
| 上顎前突(出っ歯):7〜10歳 |
| 叢生(ガタガタ):永久歯萌出後(9〜11歳) |
| 開咬(前歯が噛み合わない):混合歯列期 |
| 交叉咬合:混合歯列期 |
| 治療の2段階 [3] |
|---|
| Ⅰ期治療(混合歯列期):顎の成長をコントロール |
| Ⅱ期治療(永久歯列):ワイヤー等で歯列を整える |
| 保険適用となる矯正 [3] |
|---|
| 厚生労働省指定の先天性疾患(口唇口蓋裂等) |
| 前歯・小臼歯の3歯以上の永久歯萌出不全 |
| 顎変形症 |
| 上記以外は自費診療 |
ポイント
- 矯正相談は7〜10歳が目安 [3]
- 反対咬合は早期介入が有効 [3]
- 一般的な矯正は自費診療 [3]
Q6.「スポーツ時の歯のケガ、どう対応しますか?」
——体育や部活で歯をぶつけたらどうすればよいですか?
歯が完全に抜けてしまった場合(完全脱臼)、30分以内の再植で生着率が高まります [6]。抜けた歯は乾燥させず、牛乳または歯牙保存液に浸して速やかに歯科を受診してください [6]。
| 歯のケガへの対応 [6] |
|---|
| 完全脱臼:抜けた歯を洗わずに牛乳・保存液で運搬 |
| 不全脱臼(ぐらつき):噛まずに安静、歯科受診 |
| 破折(欠けた):破片を保存し歯科受診 |
| 歯肉からの出血:清潔なガーゼで圧迫 |
| 完全脱臼歯の保存 [6] |
|---|
| 歯根を触らない(歯冠を持つ) |
| 汚れていれば生理食塩水で軽くすすぐ |
| 牛乳・歯牙保存液・生理食塩水に浸す |
| 30分以内の再植が目標 |
| 水道水・乾燥はNG |
| 学校でのケガ [4] |
|---|
| 災害共済給付制度の対象 |
| 学校を通じて申請 |
| マウスガードの着用でリスク低減 |
ポイント
- 完全脱臼は30分以内の再植が目標 [6]
- 抜けた歯は牛乳か保存液で運搬 [6]
- 水道水で洗う・乾燥させるのはNG [6]
今号のまとめ
- 第一大臼歯(6歳臼歯)は最も虫歯になりやすい [1]
- 6歳以上はフッ化物1,000〜1,500ppm、えんどう豆大が推奨 [2]
- 二重歯列は多くが自然解消、3か月以上残る乳歯は歯科相談 [1]
- 学校歯科健診のCO・GOは「要観察」、生活改善で進行を止められる [4]
- 矯正相談は混合歯列期(7〜10歳)が目安、反対咬合は早期介入 [3]
- 歯のケガは完全脱臼なら30分以内の再植を目指す [6]
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- Vol.178「小児の虫歯予防」
- Vol.245「歯のケガ」
- Vol.312「ハロウィンとお菓子と歯」
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