くしゃみをしたとき。子どもを抱き上げたとき。笑ったとき。ふいに漏れる。
産後の尿漏れは、実は約3人に1人のお母さんが経験しています [1]。にもかかわらず、恥ずかしさから誰にも相談できないことが多い症状です。小児科医の私がこの話題を取り上げるのは、お母さんの体のことが子どもの育児環境に直結するからです。
3人に1人が経験しています。あなただけじゃない#
くしゃみや咳をすると漏れてしまう。自分だけなのではないかと不安になりますよね。決して珍しくありません。
産後の尿漏れの多くは「腹圧性尿失禁」と呼ばれるタイプです。原因は骨盤底筋群の損傷。妊娠中の子宮の重みによる持続的な圧迫と、分娩時の筋肉や神経の伸展・損傷が重なって起こります。特にリスクが高いのは、吸引・鉗子分娩、赤ちゃんが3,500g以上の場合、分娩第2期が長引いた場合、経産婦です [2]。
骨盤底筋トレーニング。地味だけど、いちばん確実です#
骨盤底筋トレーニング(ケーゲル体操)は、産後の尿漏れに対していちばんエビデンスが強い治療法です。約2,900人を対象にしたコクラン・レビューでは、腹圧性尿失禁の症状が有意に改善し、治癒率は約50~70%と報告されています [3]。
具体的なやり方はこうです。仰向けに寝て膝を立てる。尿を途中で止めるイメージで、膣・尿道・肛門周囲の筋肉をキュッと締める。510秒間保持してゆっくり緩める。10回1セット、1日3セット。お腹や太ももに力を入れず骨盤底筋だけを動かすこと、呼吸を止めないことがポイントです。効果が出るまで最低812週間かかります。
日常生活では、体重管理、便秘の改善、カフェイン制限も助けになります。子どもを抱き上げるときに骨盤底筋を締めてから持ち上げる「The Knack法」も有効です [5]。
いつまで待てばいいのか。受診のタイミング#
産後の尿漏れは多くの場合6~12か月で自然に改善します。でもいつまでも待っている必要はありません。
受診先は産婦人科(ウロギネコロジー外来があれば理想的)または泌尿器科です。「尿漏れで受診するのは大げさでは」と思うかもしれませんが、まったく大げさではありません。医師は毎日この相談を受けています。
パートナーに伝えるときは「3人に1人が経験する産後の一般的症状」と事実から始めると話しやすくなります。隠し続けることが孤立やストレスの原因になるより、共有して協力を得るほうが回復への近道です。
今号のまとめ#
- 産後の尿漏れは30~40%の女性が経験する一般的な症状
- 骨盤底筋トレーニング(ケーゲル体操)が最も効果的な保存的治療
- 1日3セット、8~12週間の継続が必要
- 6か月経っても改善しない場合は婦人科または泌尿器科を受診
- 恥ずかしがらず、パートナーや医療者に相談を