愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.76
「ほっぺが真っ赤!」、りんご病(伝染性紅斑)の正しい知識
今号のポイント
- 2りんご病はヒトパルボウイルスB19による感染症。両頬の蝶形紅斑が特徴
- 4発疹が出た時点ではもう感染力がない、「うつる時期」と「症状が出る時期」がズレている
- 6妊婦さんへの感染は胎児水腫のリスクがあり、流行時は特に注意が必要
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「急にほっぺが真っ赤になったんです」「これって何かのアレルギーですか?」、春から初夏にかけて、こうしたご相談が増えます。お子さんの両頬がりんごのように赤くなったら、それはりんご病(伝染性紅斑)かもしれません。
りんご病は、名前こそかわいらしいですが、妊婦さんへの影響など知っておいていただきたいポイントがいくつかあります。今回は、りんご病について詳しくお伝えします。
Q1.「りんご病って何ですか?どんなウイルスが原因ですか?」
——子どもの両頬が急に赤くなって驚きました。保育園でりんご病が流行っているそうなんですが……
りんご病は、ヒトパルボウイルスB19(Human Parvovirus B19)というウイルスが原因の感染症です [1]。正式名称は伝染性紅斑(でんせんせいこうはん)といいます。両頬に蝶が羽を広げたような赤い発疹(蝶形紅斑)が出るのが一番の特徴で、これが"りんごのほっぺ"に見えるため、りんご病と呼ばれています [1][2]
——パルボウイルスって犬のパルボウイルスとは違うんですか?
はい、まったくの別物です。犬のパルボウイルスはヒトには感染しませんし、ヒトパルボウイルスB19は犬には感染しません [1]。名前が似ているだけですのでご安心ください
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 伝染性紅斑(erythema infectiosum)[1] |
| 原因ウイルス | ヒトパルボウイルスB19 [1] |
| 好発年齢 | 5〜15歳(幼児〜学童期)[2] |
| 流行時期 | 冬〜春(日本では4〜7年周期で流行)[3] |
| 感染経路 | 飛沫感染、接触感染 [1] |
| 別名 | 第五病(Fifth Disease)[2] |
ポイント
- りんご病の原因はヒトパルボウイルスB19 [1]
- 両頬の蝶形紅斑が最大の特徴 [2]
- 5〜15歳に多く、冬から春に流行しやすい [2][3]
Q2.「どんな症状が出ますか?経過を教えてください」
——ほっぺが赤くなる前に、何かサインはあるんですか?
りんご病には2つの段階があります [1][4]。最初のウイルス血症期は風邪のような症状で、ここでは"りんご病"とはわかりません。その後しばらくして、特徴的な発疹が出てきます
症状
- 潜伏期(4〜14日)
- 症状なし
- 第1期(ウイルス血症期)
- 微熱、倦怠感、頭痛、筋肉痛など軽い風邪症状 [4]
- 無症状期(数日間)
- 症状が一旦おさまる
- 第2期(発疹期)
- 両頬の蝶形紅斑 → 体幹・四肢のレース状(網目状)紅斑 [2]
感染力
- 潜伏期(4〜14日)
- なし
- 第1期(ウイルス血症期)
- あり(この時期が最も感染力が強い) [1]
- 無症状期(数日間)
- 低下していく
- 第2期(発疹期)
- ほぼなし [1]
発疹の経過をもう少し詳しくお話しすると、まず両頬にパッと赤い発疹(平手打ち様紅斑/slapped cheek rash)が出ます [2]。1〜4日後に、腕や太ももにレース編みのような網目状の紅斑が広がります [2][4]。この発疹はかゆみを伴うこともあります
——発疹はどのくらい続きますか?
通常1〜3週間で自然に消えます [4]。ただし、入浴、運動、日光、温度変化で発疹が一時的に再燃することがあります [2]。"治ったと思ったらまた出た"と驚かれる方が多いですが、これはウイルスの再活性化ではなく、皮膚の血管反応によるものです
| 発疹の特徴 | 詳細 |
|---|---|
| 頬の発疹 | 両側性、蝶形、境界明瞭、熱感あり [2] |
| 体幹・四肢の発疹 | レース状(網目状)、左右対称 [2][4] |
| かゆみ | 約50%の症例でみられる [4] |
| 持続期間 | 1〜3週間(一旦消えても再燃あり)[2] |
| 再燃の誘因 | 入浴、運動、日光、温度変化 [2] |
ポイント
- りんご病は2段階で進行する [1][4]
- 最初は軽い風邪症状(この時期に感染力がある)→ 数日後に頬の紅斑 [1][2]
- 発疹は1〜3週間で自然に消えるが、入浴や運動で一時的に再燃する [2]
Q3.「発疹が出ているとき、保育園でうつしてしまいませんか?」
——ほっぺが赤い状態で保育園に行っても大丈夫ですか?周りのお友達にうつしませんか?
ここがりんご病の最も大事なポイントです。発疹が出た時点では、もうほとんど感染力はありません [1][5]。りんご病はウイルスが血液中に大量にいる時期(ウイルス血症期=第1期)に感染力があるのですが、この時期はまだ"風邪っぽい"だけで、りんご病とはわかりません [1]
りんご病と診断できるか
- 第1期(ウイルス血症期)
- わからない(ただの風邪に見える)
- 第2期(発疹期)
- りんご病とわかる
感染力
- 第1期(ウイルス血症期)
- 高い [1]
- 第2期(発疹期)
- ほぼなし [1][5]
つまり、"うつす時期"と"診断がつく時期"が完全にズレているのです [1]。これがりんご病の感染対策が難しい理由です。発疹が出た段階ではもう周囲にうつす心配はほとんどありませんので、元気であれば登園・登校は可能です [5][6]
——では、予防するにはどうすればいいですか?
残念ながらりんご病にはワクチンがありません [1]。予防は、流行時の手洗いと咳エチケットが基本です [5]。ただ、感染力がある時期に症状が軽すぎて気づけないことが多いため、完全な予防は難しいのが現状です
ポイント
- 発疹が出た時点ではもう感染力がほとんどない [1][5]
- 感染力があるのは発疹が出る前のウイルス血症期 [1]
- ワクチンはなく、手洗い・咳エチケットが予防の基本 [5]
Q4.「妊婦が感染すると危険と聞いたのですが……」
——今、二人目を妊娠中なのですが、上の子の保育園でりんご病が流行っていて心配です
とても大切なご質問です。妊婦さんがヒトパルボウイルスB19に初めて感染すると、胎児に深刻な影響を及ぼす可能性があります [7][8]。特に妊娠前半(〜20週)での感染がリスクが高いとされています [7]
パルボウイルスB19は、赤血球の前駆細胞(赤芽球)に感染し、赤血球の産生を一時的に止めてしまいます [1][7]。お母さん自身は一過性の貧血で済みますが、胎児は急速に成長しているため赤血球の需要が高く、重度の貧血に陥ることがあります。これにより胎児水腫(全身のむくみ)が起こることがあるのです [7][8]
| 妊婦のパルボウイルスB19感染の影響 | 詳細 |
|---|---|
| 胎児への感染率 | 母体感染時の約17〜33% [7] |
| 胎児水腫のリスク | 感染した胎児の約3〜10% [7][8] |
| 胎児死亡(流産・死産) | 感染した妊婦の約2〜6% [8] |
| ハイリスク時期 | 妊娠9〜20週が最もリスクが高い [7] |
| 成人の既感染率 | 約50〜60%(抗体保有率)[3] |
ただし、成人の50〜60%はすでにパルボウイルスB19に対する抗体を持っています [3]。過去に感染したことがある方は、基本的に再感染のリスクは低いです。心配な場合は産婦人科でパルボウイルスB19の抗体検査(IgG/IgM)を受けることができます [8]
| 対応 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 抗体検査 | パルボウイルスB19 IgG抗体が陽性→過去に感染→基本的に心配なし [8] |
| 流行時の注意 | 妊婦は流行している保育園・学校への立ち入りを避ける [8][9] |
| 感染が疑われる場合 | 産婦人科に連絡し、胎児超音波検査でモニタリング [7][8] |
| 胎児水腫の治療 | 胎児輸血が有効な場合がある [7] |
ポイント
- 妊婦の初感染は胎児水腫・流産のリスクがある [7][8]
- 妊娠前半(特に9〜20週)がハイリスク [7]
- 成人の50〜60%は既に抗体あり。心配なら抗体検査を [3][8]
- 流行時、妊婦は保育園・学校への立ち入りを避ける [8][9]
Q5.「治療法はありますか?保育園にはいつから行けますか?」
——りんご病に効く薬はあるんですか?
りんご病には特効薬はありません [1][4]。治療は対症療法が基本です。発疹のかゆみが強い場合は抗ヒスタミン薬、関節痛がある場合はアセトアミノフェンなどで対応します [4]。ほとんどの場合、自然に治ります
| 症状 | 対処法 |
|---|---|
| 発疹のかゆみ | 抗ヒスタミン薬(内服)、カラミンローションなど [4] |
| 関節痛 | アセトアミノフェン(カロナールなど)[4] |
| 発熱 | 解熱剤(通常は軽度で不要なことが多い)[4] |
| 発疹の再燃予防 | 入浴時のお湯の温度を低めに、直射日光を避ける [2] |
——保育園はいつから行けますか?
発疹が出た時点では感染力がほぼないため、本人の体調が良ければ登園・登校は可能です [5][6]。学校保健安全法でも、りんご病は出席停止の対象疾患には含まれていません [6][10]。ただし、園や学校によって独自のルールがある場合がありますので、確認しておくとよいでしょう
| 登園・登校の基準 | 内容 |
|---|---|
| 感染力 | 発疹出現時にはほぼなし [1][5] |
| 学校保健安全法 | 出席停止の対象外 [6][10] |
| 登園・登校の目安 | 本人の体調が良ければ可能 [5][6] |
| 園への報告 | りんご病であることは伝えておく(妊婦の職員への配慮のため)[9] |
一つ大切なことがあります。園にりんご病が出たことを伝える際、妊娠中の職員がいないか確認してもらうよう伝えてください [9]。発疹が出る前にすでにウイルスが広がっている可能性があるため、妊婦さんへの注意喚起が重要です
ポイント
- りんご病に特効薬はなく、対症療法で対応 [1][4]
- 発疹が出た後は登園OK(出席停止の対象外)[5][6][10]
- 園には報告を、妊娠中の職員への配慮を忘れずに [9]
まとめ
- りんご病の原因はヒトパルボウイルスB19 [1]
- 両頬の蝶形紅斑と、体幹・四肢のレース状紅斑が特徴 [2]
- 感染力があるのは発疹が出る前。発疹が出たらもう感染力はほぼなし [1][5]
- 特効薬はなく対症療法で対応。ほとんどは自然に治る [4]
- 妊婦の初感染は胎児水腫・流産のリスクがあるため、流行時は注意 [7][8]
- 発疹出現後は登園・登校OK。ただし園への報告と妊婦への配慮を [5][6][9]
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