愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.37
「熱が下がったら発疹が……」、突発性発疹の正しい知識
今号のポイント
- 2突発性発疹は生後6ヶ月〜2歳に多く、ほぼすべての子どもが経験する
- 43〜4日の高熱の後、解熱とともに発疹が出るのが特徴
- 6特別な治療は不要。対症療法で経過をみるが、熱性けいれんに注意
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「3日間高熱が続いて心配していたら、熱が下がった途端に全身に発疹が……」。外来で本当によく聞くお話で、ほとんどが突発性発疹の典型経過です。
ほぼすべての乳幼児が経験するウイルス感染症で [1]、はじめての高熱が突発性発疹だったというお子さんも多い。心配にはなるけれど、たいていは後遺症なく治ります [2]。今回は症状・経過・ホームケアを整理します。
Q1.「突発性発疹ってどんな病気ですか? どのくらい多いんですか?」
——突発性発疹という病名を初めて聞きました。どんな病気なんですか?
突発性発疹は、ヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)、または7型(HHV-7)というウイルスによる感染症です [1]。正式には『突発性発疹症(exanthem subitum)』といい、別名『第6病』『3日熱発疹』とも呼ばれます
突発性発疹の基本情報:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 原因ウイルス | HHV-6(約90%)、HHV-7(約10%)[1][3] |
| 好発年齢 | 生後6ヶ月〜2歳(ピークは7〜13ヶ月)[1][4] |
| 罹患率 | 2歳までに約90%以上、3歳までにほぼ全員が感染する [1][2] |
| 季節性 | 通年発生(やや春〜初夏に多い傾向)[4] |
| 潜伏期間 | 約5〜15日(平均9〜10日)[3] |
——ほとんどの子が感染するんですか! それなら珍しくないんですね
はい。突発性発疹は『赤ちゃんが初めて経験する高熱』として最も多い病気のひとつです [2]。日本では2歳までに約90%以上、3歳までにほぼ全員が感染し、抗体を持つようになります [1]。母親からもらった移行抗体(お母さんの免疫が赤ちゃんに移行したもの)が切れる生後6ヶ月以降に発症しやすくなります [4]
——一度かかれば、もうかからないですか?
基本的には一度感染すれば免疫ができて再発しません [2]。ただし、HHV-6とHHV-7は別のウイルスなので、理論上は2回かかる可能性があります。実際には、1回目の症状が典型的で診断がついても、2回目は軽症で気づかないことが多いです [3]
ポイント
- 突発性発疹の原因は HHV-6(約90%)またはHHV-7 [1][3]
- 生後6ヶ月〜2歳、ピークは7〜13ヶ月 [1][4]
- 2歳までに約90%以上、3歳までにほぼ全員が感染する [1][2]
- 「赤ちゃんの初めての高熱」として最も多い病気のひとつ [2]
Q2.「突発性発疹の症状と経過を教えてください」
——どんな症状が出るんですか? どうやって突発性発疹だとわかるんですか?
突発性発疹の最大の特徴は、『3〜4日間の高熱 → 解熱 → 発疹出現』という特徴的な経過です [1][2]。この経過を知っているだけで、保護者の方の不安が大きく減ります
突発性発疹の典型的な経過 [1][2][3]:
第1期:発熱期(3〜4日間)
- 突然の高熱(38.5〜40℃)
- 発疹はまだ出ていない
- 比較的機嫌はよい(高熱のわりに元気)
- 軽い咳、鼻水、下痢を伴うこともある
- 食欲は低下
診察所見:
- のどが赤い(咽頭発赤)
- 首の後ろのリンパ節が腫れる(後頸部リンパ節腫脹)[5]
- 大泉門(赤ちゃんの頭のてっぺんのやわらかい部分)が少し膨らむこともある
第2期:解熱期(1日目)
- 熱が急に下がる(24時間以内に平熱に)
- 解熱とほぼ同時、または数時間後に発疹が出現 [1]
第3期:発疹期(2〜3日間)
発疹の特徴 [2][5]:
- 体幹(お腹・背中)から始まり、顔・手足に広がる
- 淡いピンク色の小さな発疹(2〜5mm)
- 発疹同士はくっつかない(融合しない)
- かゆみはない
- 2〜3日で自然に消える(色素沈着なし)
第4期:機嫌悪期(発疹期と重なる)
- 「不機嫌病」と呼ばれるほど、機嫌が悪くなることが多い [2][5]
- 泣き止まない、抱っこしても泣く
- 食欲不振が続く
- これも2〜3日で改善
——熱が下がってから発疹が出るんですね。熱が出ている間は発疹がないから、診断がつかないんですか?
その通りです。これが突発性発疹の診断の難しさです。発熱期には突発性発疹と診断できません [2]。発疹が出て初めて『やっぱり突発性発疹でしたね』と診断がつきます。つまり、突発性発疹は『後からわかる病気』なのです [3]
——じゃあ、熱が出ている間は他の病気の可能性もあるということですか?
はい。発熱期には、インフルエンザ、アデノウイルス、中耳炎、尿路感染症など、他の発熱性疾患を除外する必要があります [2][6]。特に生後6ヶ月未満の発熱や、ぐったりしている場合は、細菌感染症の可能性を考えて血液検査や尿検査を行うこともあります [6]
ポイント
- 典型的な経過: 3〜4日の高熱 → 解熱 → 発疹出現 [1][2]
- 発熱期は高熱のわりに機嫌がよいことが多い [2]
- 発疹は体幹から始まり、淡いピンク色、2〜3日で消える [2][5]
- 解熱後に不機嫌になるのが特徴(「不機嫌病」)[2][5]
- 発疹が出て初めて診断できる(発熱期には診断不可)[2][3]
Q3.「突発性発疹の治療はどうするんですか? 薬は必要ですか?」
——突発性発疹と診断されたら、どんな治療をするんですか?
突発性発疹には特別な治療法はありません [1][2]。抗ウイルス薬も通常は不要です。自然に治る病気なので、治療の基本は対症療法(症状を和らげる治療)とホームケアです [2]
突発性発疹の治療とホームケア [1][2][7]:
① 解熱剤の使用
- 高熱で辛そうなときのみ使用
- アセトアミノフェン(カロナール)またはイブプロフェン(ブルフェン)
- 解熱剤は病気を治す薬ではなく、一時的に熱を下げて楽にする薬 [7]
- 「熱を下げないと治らない」は誤解(vol.011参照)
② 水分補給
- 高熱で脱水になりやすい
- こまめに水分を与える(母乳、ミルク、麦茶、経口補水液)
- おしっこが8時間以上出ない場合は受診 [6]
③ 食事
- 食欲が落ちるのは普通
- 無理に食べさせなくてよい
- 食べやすいもの(おかゆ、バナナ、ヨーグルトなど)を少量から
④ 入浴
- 熱が下がって元気なら入浴OK [7]
- 高熱で辛そうなときは無理せず、体を拭く程度に
⑤ 保育園・幼稚園
- 解熱して機嫌がよければ登園可能 [8]
- 学校保健安全法では出席停止期間の定めなし
- ただし、不機嫌期は集団生活が難しいので、無理は禁物
——抗生物質は飲まなくていいんですか?
突発性発疹はウイルス感染症なので、抗生物質(細菌をやっつける薬)は効きません [2]。むしろ、不要な抗生物質は副作用(下痢、発疹など)や薬剤耐性菌のリスクを高めます(vol.012参照)。ただし、発熱期に細菌感染症(中耳炎、尿路感染症など)が合併している場合は、抗生物質が必要になることもあります [6]
——発疹にかゆみ止めは塗らなくていいですか?
突発性発疹の発疹はかゆみがないので、かゆみ止めは不要です [2]。2〜3日で自然に消えるので、何もしなくて大丈夫です
ポイント
- 突発性発疹に特別な治療法はない。自然に治る [1][2]
- 解熱剤は辛いときのみ。熱を下げることが治療ではない [7]
- こまめな水分補給が大切。おしっこが8時間出なければ受診 [6]
- 抗生物質は効かない(ウイルス感染症のため)[2]
- 解熱して機嫌がよければ登園可能 [8]
Q4.「合併症はありますか? 注意すべきことは?」
——突発性発疹で怖い合併症はありますか?
突発性発疹はほとんどの場合、後遺症なく治ります [2]。ただし、いくつか注意すべき合併症があります
突発性発疹の主な合併症 [2][3][9]:
① 熱性けいれん(最も多い)
- 突発性発疹の約10〜15%で熱性けいれんを起こす [9]
- 他の発熱性疾患より頻度が高い
- 高熱が急激に上がるため、けいれんが起こりやすい
熱性けいれんの対応(vol.014参照):
- 横向きに寝かせる
- 口に何も入れない
- 時間を測る
- 5分以上続く場合は救急車
② 脳炎・脳症(まれ)
- 非常にまれだが、HHV-6による脳炎・脳症の報告あり [10]
- 意識障害、けいれん重積(けいれんが止まらない)、異常行動が出現
すぐ受診すべきサイン:
- けいれんが5分以上止まらない
- 意識がもうろうとしている、呼びかけに反応しない
- 異常な言動、幻覚
③ 血小板減少(まれ)
- 突発性発疹に伴う血小板減少の報告あり [11]
- 症状: 点状出血(皮膚に赤い点々)、あざができやすい、鼻血
——熱性けいれんが心配です。予防できませんか?
残念ながら、解熱剤では熱性けいれんを予防できません [12](vol.014参照)。熱性けいれんの既往がある場合は、かかりつけ医と相談の上で予防薬(ダイアップ坐薬)を使うことがあります [12]。ただし、全員に必要なわけではありません
その他の注意点:
生後6ヶ月未満の発熱は要注意 [6]:
- 生後3ヶ月未満の発熱: 必ず受診(細菌感染症のリスクが高い)
- 生後3〜6ヶ月の発熱: 38℃以上なら受診を推奨
脱水のサイン [6]:
- おしっこが8時間以上出ない
- 泣いても涙が出ない
- 唇が乾いている
- ぐったりしている → これらがあれば受診
ポイント
- ほとんどは後遺症なく治る [2]
- 熱性けいれんが最も多い合併症(10〜15%)[9]
- けいれんが5分以上、または意識障害があればすぐ受診
- 生後6ヶ月未満の発熱は必ず受診 [6]
- 脱水のサイン(8時間以上尿なし、ぐったり)に注意 [6]
Q5.「突発性発疹はうつりますか? 兄弟に感染しますか?」
——上の子が突発性発疹になりました。下の子(生後3ヶ月)にうつりますか?
突発性発疹は感染力はあまり強くありません [3]。ただし、兄弟間での感染はありえます
感染経路と予防 [1][3][13]:
感染経路
- 唾液を介した飛沫感染・接触感染 [3]
- 家族内感染が主なルート
- 保育園などでの集団感染はまれ
感染力
- 感染力は弱い〜中等度 [3]
- インフルエンザやノロウイルスより感染力は低い
- 潜伏期間(5〜15日)が長いため、感染源の特定は困難
感染予防
- 手洗い(特におむつ替え後、食事前)
- タオルの共用を避ける
- おもちゃの消毒(アルコールまたは塩素系消毒液)
——生後3ヶ月の赤ちゃんも突発性発疹になりますか?
生後6ヶ月未満の赤ちゃんは、母親からもらった移行抗体(お母さんの免疫)によって守られているため、突発性発疹にかかりにくいです [4]。ただし、100%防げるわけではありません。もし生後3ヶ月で発熱した場合は、突発性発疹以外の原因(細菌感染症など)も考えて、必ず受診してください [6]
登園・登校の目安 [8]:
- 解熱して機嫌がよければ登園可能
- 学校保健安全法では出席停止期間の定めなし
- ただし、不機嫌期(解熱後2〜3日)は集団生活が難しい場合も
- 園によっては「解熱後24時間」など独自の基準がある場合もあるので確認を
——大人にもうつりますか?
大人はほぼ全員がすでに免疫を持っているため、感染しません [1]。ただし、妊娠中の方は念のため手洗いなど基本的な感染対策を心がけてください
ポイント
- 感染力は弱い〜中等度。インフルエンザより低い [3]
- 唾液を介した飛沫・接触感染。手洗いが重要 [3][13]
- 生後6ヶ月未満は移行抗体で守られていることが多い [4]
- 生後3ヶ月未満の発熱は必ず受診 [6]
- 解熱して機嫌がよければ登園可能 [8]
- 大人は免疫があるため感染しない [1]
まとめ
- 突発性発疹はHHV-6(または7)が原因で、2歳までに約90%以上、3歳までにほぼ全員が感染 [1][2]
- 典型的な経過: 3〜4日の高熱 → 解熱 → 発疹出現 → 不機嫌 [1][2]
- 発疹が出て初めて診断できる(発熱期には診断不可)[2][3]
- 特別な治療法はなく、対症療法。抗生物質は効かない [1][2]
- 合併症として熱性けいれん(10〜15%)に注意 [9]
- 生後6ヶ月未満の発熱、けいれん5分以上、意識障害はすぐ受診 [6]
- 解熱して機嫌がよければ登園可能 [8]
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