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K2シロップの意味|母乳育児とビタミンK欠乏症
Vol.20栄養・食事

K2シロップの意味|母乳育児とビタミンK欠乏症

新生児に投与するK2シロップの必要性、母乳育児でビタミンKが不足する理由、頭蓋内出血予防について解説します。

栄養・食事0〜6ヶ月8
おかもん先生小児科専門医愛育病院 小児科

参考文献 4·Q&A 5問収録

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この記事のポイント

  • K2シロップをきちんと飲ませていれば、母乳育児でもビタミンK不足の心配はいらない
  • ビタミンK欠乏は頭蓋内出血など命に関わるが、K2シロップでリスクをほぼゼロにできる
  • K2シロップは副作用がほとんどない安全な補充療法で、全ての赤ちゃんに必要

愛育病院 小児科おかもん だより Vol.20

「K2シロップを飲ませないとどうなる?」、母乳とビタミンKの大事な話

今号のポイント

  1. 2
    K2シロップをきちんと飲ませていれば、母乳育児でもビタミンK不足の心配はいらない
  2. 4
    ビタミンK欠乏は頭蓋内出血など命に関わるが、K2シロップでリスクをほぼゼロにできる
  3. 6
    K2シロップは副作用がほとんどない安全な補充療法で、全ての赤ちゃんに必要

こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。

出産後の入院中、赤ちゃんに「K2シロップ」(ビタミンKを赤ちゃんが飲みやすいシロップ状にした補充薬)というオレンジ色の液体を飲ませたことを覚えていますか? これはビタミンKの製剤で、赤ちゃんの命を守る非常に大切な薬です。K2シロップをきちんと飲ませていれば心配はいりませんので、まずはご安心ください。

「母乳で育てているのに、なぜ薬が必要なの?」という疑問にお答えします。

Q1.「ビタミンKって何の役に関わる栄養素ですか?」

——入院中にK2シロップを飲ませましたが、何のためか正直よくわかっていませんでした

ビタミンKは血液を固める(止血する)ために必要不可欠な栄養素です。体の中で血を止める仕組み(凝固因子=血液を固めるためのタンパク質)を作るのに、ビタミンKがないと機能しません [1]

——ビタミンKが足りないと、血が止まりにくくなるということですか?

その通りです。これをビタミンK欠乏性出血症(VKDB)(ビタミンKが足りないために血が止まらなくなり、体のさまざまな場所で出血が起きる病気)と呼びます。大人はふだんの食事や腸内細菌からビタミンKを得ていますが、赤ちゃんは3つの理由でビタミンKが不足しやすいのです

  1. 2
    胎盤を通りにくい: お母さんのビタミンKが赤ちゃんに十分に届かない
  2. 4
    腸内細菌が未発達: ビタミンKを作ってくれる腸内細菌がまだ少ない
  3. 6
    母乳中の含有量が少ない: 母乳に含まれるビタミンKは人工乳の約10分の1〜50分の1

ポイント

  • ビタミンKは血を止めるために不可欠な栄養素
  • 赤ちゃんは胎盤通過性の低さ、腸内細菌の未発達、母乳の低含有量の3重苦
  • 母乳中のビタミンKは人工乳の約10分の1〜50分の1 [1]

Q2.「ビタミンKが足りないと、具体的にどうなるんですか?」

——血が止まりにくいだけなら、そんなに怖くないのでは?

いえ、非常に怖い病気です。ビタミンK欠乏性出血症には3つのタイプがあります

タイプ時期主な原因症状
早発型生後24時間以内母体の薬剤(抗てんかん薬など)頭蓋内出血、消化管出血
古典型生後2-7日ビタミンK不足消化管出血、臍出血
遅発型生後2週〜3ヶ月完全母乳栄養+K2シロップ未投与頭蓋内出血(約50%)

最も怖いのが遅発型です。完全母乳の赤ちゃんに起こりやすく、報告によりますが30〜60%が頭蓋内出血を合併します [2]。日本でもK2シロップが普及する前は、10万人あたり数人に発症していました

——頭蓋内出血……それは命に関わりますよね

はい。報告によって幅がありますが、死亡率は20〜50%、生き残っても脳性麻痺や発達遅延などの後遺症が3〜5割の子に残るとされます [2]。K2シロップは、このリスクを大幅に下げるための予防薬です

ポイント

  • 遅発型VKDBは30〜60%が頭蓋内出血を合併 [2]
  • 死亡率は報告で20〜50%と幅があり、命に関わる病気
  • K2シロップでリスクは大きく下げられる

Q3.「K2シロップはいつ、何回飲ませるんですか?」

——入院中に1回飲ませた記憶がありますが、それだけで十分ですか?

いいえ。日本の標準的なスケジュールでは3回投与します [3]

時期

1回目
出生時(生後24時間以内)
2回目
生後1週間(退院時)
3回目
生後1ヶ月(1ヶ月健診時)

場所

1回目
産院
2回目
産院
3回目
小児科

——1ヶ月健診でも飲ませるんですね。忘れそうです

1ヶ月健診で必ず確認しますのでご安心ください。さらに最近では、生後3ヶ月まで週1回投与するスケジュールを採用している施設もあります。これはヨーロッパの一部の国で行われている方法で、遅発型VKDBの予防効果がさらに高いとされています [3]

——母乳をあげていなくても(ミルクでも)必要ですか?

はい。人工乳にはビタミンKが添加されていますが、新生児期は腸内細菌叢が未発達で吸収能力に個人差があるため、日本小児科学会は全ての新生児にK2シロップの投与を推奨しています [3]

ポイント

  • K2シロップは出生時・生後1週・生後1ヶ月の3回が標準 [3]
  • 週1回×3ヶ月の投与スケジュールを採用する施設も増加中
  • ミルク育児でも全員に投与が推奨されている

Q4.「K2シロップを飲ませないとどうなりますか?」

——SNSで「K2シロップは不要」という投稿を見かけたのですが……

絶対に信じないでください。K2シロップを飲ませなかったことで赤ちゃんが命を落とした悲しい事例が実際にあります

2010年、山口県でK2シロップの代わりにホメオパシー(科学的根拠のない代替療法)のレメディ(砂糖玉)を投与された赤ちゃんが、生後2ヶ月で頭蓋内出血により亡くなりました [4]。この事件を受けて、日本助産師会はK2シロップの代替療法使用を禁止し、適切な投与の重要性を改めて周知しました

——それは……取り返しのつかないことですね

K2シロップは副作用がほとんどない安全な薬です。一方、飲ませないことのリスクは頭蓋内出血という命に関わる事態です。「自然派」や「薬を使わない育児」という考え方自体は尊重しますが、K2シロップだけは例外なく飲ませてください。これは「薬」というよりも、赤ちゃんに足りないビタミンを補充しているだけです

ポイント

  • K2シロップを飲ませなかったことで赤ちゃんが亡くなった実例がある [4]
  • K2シロップは副作用がほとんどない安全な補充療法
  • 「自然派育児」でもK2シロップだけは例外なく必要

Q5.「母乳育児とビタミンK、うまく両立するには?」

——母乳で育てたいのですが、ビタミンKが少ないなら不安です

母乳育児はとても素晴らしい選択です。ビタミンKが少ないからといって、母乳をやめる必要は全くありません。K2シロップをきちんと飲ませれば問題ありません

母乳育児+ビタミンKのポイント:

  1. 2
    K2シロップを確実に飲ませる: 3回投与を忘れずに
  2. 4
    お母さん自身の食事: 納豆、ほうれん草、ブロッコリーなどビタミンK豊富な食品を食べると、母乳中のビタミンKも多少増える
  3. 6
    1ヶ月健診を必ず受ける: 3回目のK2シロップ+全身チェック
  4. 8
    異常出血のサインに注意: 理由なく青あざが増える、便に血が混じる場合は受診

母乳のメリット(免疫物質の受け渡し、母子の絆、腸内環境の改善など)はビタミンKの問題を大きく上回ります。K2シロップという「保険」をかけた上で、安心して母乳育児を楽しんでください

ポイント

  • 母乳育児は素晴らしい選択。K2シロップと両立すれば問題なし
  • お母さんが納豆やほうれん草を食べると母乳のビタミンKも増える
  • 理由なく青あざが増える、血便がある場合は早めに受診

まとめ

  • 母乳中のビタミンKは人工乳の約10分の1と少ない
  • ビタミンK不足は頭蓋内出血を引き起こし、死亡率は報告で20〜50%
  • K2シロップは出生時・生後1週・1ヶ月の3回投与が標準
  • 全ての赤ちゃんに必要(ミルク育児でも)
  • K2シロップを飲ませれば、安心して母乳育児を続けられる

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愛育病院 小児科 おかもん

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