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癇癪への対応、癇癪の理解と段階的な対応法
Vol.113発達

癇癪への対応、癇癪の理解と段階的な対応法

- 癇癪自体は正常な発達の一部で、多くのお子さんに見られる

発達1〜3歳11
おかもん先生小児科専門医愛育病院 小児科

参考文献 8·Q&A 5問収録

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この記事のポイント

  • - 癇癪自体は正常な発達の一部で、多くのお子さんに見られる
  • - 頻度・強度・持続時間・年齢で「通常の範囲」かどうかを判断
  • - 心配な場合は小児科や発達相談に相談しましょう

愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.113

癇癪への対応、癇癪の理解と段階的な対応法

こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。 「突然泣き叫んで手がつけられない」「スーパーで床に寝転がる」「叩いたり物を投げたり」、外来でも本当によく聞くご相談です。 癇癪は多くのお子さんに見られる行動ですが、発達特性のあるお子さんでは頻度・強度・持続時間が大きくなりやすい傾向があります。 今日は、癇癪を理解する視点と、家でできる関わり方を順番にお伝えしていきます。

Q1.「癇癪は普通のことですか?いつまで続くのですか?」

——3歳の息子の癇癪がひどくて、毎日何回も起きます。これは発達障害のサインですか?

まず安心してください。癇癪そのものは正常な発達の一部です [1][2]。1歳半から4歳ごろは、いわゆるイヤイヤ期。自我が育つにつれて癇癪も自然と増えてきます。

典型的な発達のなかでの癇癪は、こんな特徴を持っています。」

定型発達の癇癪

頻度
週に1〜3回程度
持続時間
5〜10分程度
強度
泣く、叫ぶ
年齢
1.5〜4歳がピーク、5歳以降減少
回復
比較的すぐに落ち着く
きっかけ
欲求が通らない等、理由が明確

注意が必要な癇癪

頻度
毎日複数回
持続時間
20分以上、または1時間超
強度
自傷、他害、物の破壊
年齢
5歳以降も続く、またはエスカレート
回復
なかなか切り替えられない
きっかけ
きっかけが分かりにくい、些細なことで

以下の場合は、発達の特性が背景にある可能性を考えます [2]

  • 5歳以降も癇癪が減らない、またはむしろ増える
  • 自傷(頭を打ちつける等)や他害がある
  • 30分以上収まらないことが頻繁にある
  • 些細な変化やきっかけで爆発的に起こる
  • 癇癪の後、長時間回復に時間がかかる

ただ、癇癪があるから発達障害だ、とは決まりません。コミュニケーション・社会性・こだわり・感覚など、全体の発達を見たうえで判断します。」

ポイント

  • 癇癪自体は正常な発達の一部で、多くのお子さんに見られる
  • 頻度・強度・持続時間・年齢で「通常の範囲」かどうかを判断
  • 心配な場合は小児科や発達相談に相談しましょう

Q2.「なぜ癇癪を起こすのですか?」

——わがままを通すために泣いていると思っていましたが、違うのですか?

癇癪は『わがまま』ではなくて、お子さんが自分の感情や状況をコントロールできなくなっている状態なんです [3][4]

背景には必ず理由があります。それを理解することが、対応の第一歩になります。」

癇癪の主な背景(氷山モデル):

表面に見えるもの:泣き叫ぶ、暴れる、物を投げる

水面下にあるもの:

背景要因
要求が通らない欲しいものが手に入らない、やりたいことができない
言葉で伝えられない気持ちを言語化できないフラストレーション
見通しが持てない次に何が起こるか分からない不安
感覚の問題騒がしい・暑い・眩しいなどの感覚的ストレス
切り替えの困難好きな活動を中断できない
疲労・空腹・睡眠不足基本的な欲求が満たされていない
こだわりの崩壊いつものルーティンが変わった
過度な要求本人の能力を超える課題を求められている

発達障害のあるお子さんの場合、以下の要因が特に大きく関わることが多いです [4]

  • ASD: 見通しの持てなさ、こだわりの崩壊、感覚過負荷、コミュニケーションの困難
  • ADHD: 衝動性のコントロールの困難、感情調節の未熟さ、待てない
  • 知的障害: 理解と表現のギャップ、状況把握の困難」

ポイント

  • 癇癪は「わがまま」ではなく「SOS」のサイン
  • 水面下の背景要因を探ることが対応の出発点
  • 背景要因を解消すれば、癇癪自体が減ります

Q3.「癇癪が起きたときはどう対応すればよいですか?」

——癇癪が始まると何を言っても聞きません。どうすればいいですか?

癇癪が起きている最中の対応と、起きないように予防する対応は、分けて考えてください。まずは最中の対応からです [3][5]

癇癪中の3つの原則:

  1. 2
    安全を確保する
  • 自傷の危険がある場合は、壁や床から頭を保護する
  • 周囲の危険物を片づける
  • 兄弟姉妹や他の子どもを離す
  1. 2
    穏やかに、最小限の関わりを
  • 大声で叱らない(火に油を注ぐ結果に)
  • 長い説明や説得をしない(聞ける状態にない)
  • 穏やかな声で短い言葉を使う「大丈夫だよ」
  • そばにいるが、過度に構わない
  1. 2
    落ち着くまで待つ
  • 嵐が過ぎるのを待つイメージ
  • 落ち着いてきたら穏やかに声をかける
  • 落ち着いたことを具体的に褒める
やるべきことやってはいけないこと
安全確保大声で叱る
穏やかにそばにいる「泣くのをやめなさい」と叫ぶ
落ち着くまで待つ要求に応じて癇癪を止めさせる
短い言葉で声かけ長い説教
落ち着いた後に褒める癇癪のことを後から蒸し返す

ここで大事なのは、癇癪を起こしたから要求を叶える、をやらないこと。泣いたらお菓子がもらえる、暴れたら嫌なことをやめてもらえる。こう学習してしまうと、癇癪はどんどん強化されます。ただし『無視』ではないんです。『気持ちは穏やかに受け止めるけれど、その方法では要求は通らないよ』を伝える、これです [5]

ポイント

  • 癇癪中は「安全確保」「最小限の関わり」「待つ」が基本
  • 叱っても状況は改善しません
  • 癇癪で要求が通る経験を繰り返させないことが重要

Q4.「癇癪を予防するにはどうすればよいですか?」

——癇癪が起きてからの対応は分かりましたが、そもそも起きないようにする方法はありますか?

とても良い質問です。実は癇癪対応の9割は予防です。起きてからの対応はあくまで最後の手段。起きにくい環境を作るほうが、ずっと効果的なんです [4][6]

予防の5つの戦略:

  1. 2
    見通しを持たせる
  • スケジュールを視覚的に示す(絵カード、タイマー)
  • 「あと5分で終わりだよ」と予告する
  • 変更がある場合は事前に伝える
  1. 2
    環境を調整する
  • 感覚的な刺激を減らす(静かな場所、照明の調整)
  • 癇癪が起きやすい状況を回避する(空腹時の買い物を避ける等)
  • 安心できる場所(クールダウンスペース)を用意する
  1. 2
    コミュニケーション手段を確保する
  • 絵カードや PECS で要求を伝える方法を教える
  • 「いやだ」「やめて」「助けて」を適切に表現する方法を練習する
  • 感情のラベリング(「怒っているんだね」)を日常的に行う
  1. 2
    適切な行動を教え、強化する
  • 癇癪ではなく言葉や絵カードで伝えたときに応じる
  • 待てた・我慢できた場面を具体的に褒める
  • スモールステップで成功体験を積む
  1. 2
    基本的なニーズを満たす
  • 十分な睡眠
  • 規則的な食事
  • 適度な運動
  • 予測可能な生活リズム
癇癪の前兆予防的対応
そわそわし始める声をかけ、気持ちを確認する
声が大きくなるクールダウンスペースに誘導
体が硬くなる深呼吸の声かけ、場所の変更
同じ言葉を繰り返す要求を確認し、可能なら対応する

ポイント

  • 癇癪対応の基本は「予防」が9割
  • 見通し・環境調整・コミュニケーション手段の3つが鍵
  • お子さんの「前兆サイン」を知っておくと早めに対応できます

Q5.「毎日対応するのが辛いです。親自身のケアはどうすれば?」

——正直、限界です。自分もイライラしてしまい、つい怒鳴ってしまいます。

そのお気持ち、当然です。毎日癇癪に向き合う保護者のストレスは非常に大きいことが研究でも示されています [7][8]

まず、怒鳴ってしまう自分を責めないでください。疲れて余裕がなくなれば、誰だってそうなります。大事なのは、ご自身のケアを後回しにしないことです。」

保護者のための対策:

  1. 2

    一人で抱え込まない

    • パートナー、祖父母、ファミリーサポートなど周囲の力を借りる
    • 同じ悩みを持つ保護者との交流(親の会、SNSグループ)
  2. 4

    レスパイト(休息)を確保する

    • 児童発達支援事業所の利用(放課後等デイサービス)
    • ショートステイの活用
    • 一時保育の利用
  3. 6

    自分自身の感情を認める

    • 怒り・疲労・悲しみは正常な感情
    • 心理カウンセリングの活用
    • 必要であれば保護者自身のメンタルヘルス相談
  4. 8

    ペアレントトレーニングを受ける

    • 科学的に効果が証明された対応法を学べる
    • 各地の発達障害者支援センターで実施
    • 同じ境遇の保護者と出会える

保護者が倒れてしまったら、お子さんの支援もできません。自分のケアは贅沢ではなく、必要不可欠なものです。助けを求めることは弱さではなく、賢明さです [8]

ポイント

  • 保護者のストレスは当然のこと。自分を責めないで
  • 一人で抱え込まず、周囲の資源を活用する
  • ペアレントトレーニングは保護者にも子どもにも効果的

今号のまとめ

  • 癇癪は「わがまま」ではなく、感情コントロールができない「SOS」
  • 背景要因(見通し、感覚、コミュニケーション等)を探ることが大切
  • 癇癪中は「安全確保」「穏やかに待つ」「不適切な方法では要求を通さない」
  • 対応の9割は「予防」。見通し・環境調整・代替手段が鍵
  • 保護者自身のケアは贅沢ではなく必要不可欠

あわせて読みたい

  • Vol.114「切り替えが苦手な子」
  • Vol.111「感覚過敏と感覚鈍麻」
  • Vol.105「ASDのコミュニケーション支援」

ご質問・ご感想

お子さんの癇癪で困っていることがありましたら、お気軽にご相談ください。次回の Vol.114 では「切り替えが苦手な子」についてお話しします。

愛育病院 小児科 おかもん先生

本メルマガの内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。お子さまの症状についてはかかりつけの小児科医にご相談ください。

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