愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.191
「お腹が痛くてトイレから出られない」、子どもの過敏性腸症候群(IBS)
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
過敏性腸症候群(IBS)は、検査で異常がないのに、腹痛と便通異常(下痢・便秘・またはその交替)が繰り返される病気です。学童期以降のお子さんに多く、登校前の腹痛やトイレの回数が増えることで学校生活に支障をきたすことがあります。今回は、子どものIBSについてお伝えします。
Q1.「過敏性腸症候群とは?」
——毎朝学校に行く前にお腹が痛くなります
IBSは、腸と脳のコミュニケーション(脳腸相関)の異常によって起こる機能性の腸疾患です [1]。
| 基本情報 | 詳細 |
|---|---|
| 頻度 | 報告により幅があるが、小児・思春期の数%程度(要確認) |
| 好発年齢 | 学童期〜思春期 |
| 原因 | 腸の過敏性、ストレス、腸内細菌叢の変化 |
| 診断 | Rome IV基準(検査で異常なし+特徴的な症状) |
| IBSのタイプ | 特徴 |
|---|---|
| 下痢型 | 腹痛+頻回の下痢 |
| 便秘型 | 腹痛+便が出にくい |
| 混合型 | 下痢と便秘が交替する |
| 分類不能型 | 上記に当てはまらない |
ポイント
- 検査で異常がない機能性の腸疾患
- 脳と腸のコミュニケーション異常が原因
- 下痢型・便秘型・混合型がある
Q2.「ストレスが原因ですか?」
——ストレスで腹痛が起きるのですか?
ストレスは重要な悪化因子ですが、唯一の原因ではありません [2]。
| IBSの原因・悪化因子 | 説明 |
|---|---|
| 内臓の過敏性 | 腸が通常より敏感に反応する |
| ストレス | 学校、友人関係、家庭の問題 |
| 食事 | 特定の食品(脂肪、辛い物、乳製品等) |
| 腸内細菌叢の変化 | 胃腸炎後にIBSが発症することがある |
| 睡眠不足 | 腸の機能に影響 |
| 遺伝的要因 | 家族歴がある場合が多い |
「『ストレスが原因=気のせい』ではありません。脳からのストレス信号が腸の運動と感覚を過敏にするという、生物学的なメカニズムがあります。」
ポイント
- ストレスは悪化因子だが唯一の原因ではない
- 「気のせい」ではない
- 脳と腸の生物学的なメカニズムがある
Q3.「IBSの治療は?」
——どうすれば良くなりますか?
生活指導+心理的アプローチ+必要に応じた薬物療法が基本です [3]。
| 治療法 | 内容 |
|---|---|
| ①食事指導 | 規則正しい食事、刺激物の回避、低FODMAP食 |
| ②運動 | 適度な運動は腸の機能を改善 |
| ③睡眠 | 十分な睡眠の確保 |
| ④心理的アプローチ | 認知行動療法、リラクセーション |
| ⑤薬物療法 | 整腸剤、抗コリン薬、必要に応じて抗不安薬 |
| ⑥プロバイオティクス | 腸内環境の改善 |
「低FODMAP食は、腸で発酵しやすい糖質を制限する食事法で、IBSの症状改善に有効です。ただし、成長期のお子さんでは栄養バランスに注意が必要です。」
ポイント
- 生活習慣の改善が基本
- 認知行動療法が効果的
- 薬物療法は症状に応じて
Q4.「学校生活への影響は?」
——朝の腹痛で遅刻が増えています
IBSは学校生活に大きな影響を与えることがあります [4]。
| 影響 | 対応 |
|---|---|
| 朝の腹痛で遅刻 | 朝食の工夫、早めに起きてトイレの時間を確保 |
| 授業中のトイレ | 担任に事情を伝え、自由にトイレに行ける配慮 |
| 給食 | 悪化させる食品の回避を相談 |
| 体育 | 腹痛がある時は見学可能に |
| 修学旅行 | 事前に養護教諭と相談 |
「学校に診断書や情報提供書を提出し、担任・養護教諭に理解を求めることをお勧めします。トイレに自由に行ける環境を整えるだけで、症状が大幅に改善するお子さんもいます。」
ポイント
- 学校への情報提供が重要
- トイレの自由利用が症状改善に直結
- 修学旅行等の行事は事前に相談
Q5.「IBSは大人になっても続きますか?」
——ずっと付き合っていく病気ですか?
多くのお子さんは成長とともに改善しますが、成人期に持ち越すこともあります [5]。
| 経過 | 詳細 |
|---|---|
| 成長とともに改善 | 約50-70%が数年以内に改善 |
| 成人期に持続 | 約30%が成人のIBSに移行 |
| 上手な付き合い方 | 自分のトリガーを知り、対処法を身につける |
「大切なのは、痛みに支配されず、自分なりの対処法を身につけることです。IBSは命に関わる病気ではなく、上手に付き合えるようになります。」
ポイント
- 多くは成長とともに改善
- 自分のトリガーと対処法を知ることが大切
- 命に関わる病気ではない
今号のまとめ
- IBSは脳と腸のコミュニケーション異常による機能性疾患
- 「気のせい」ではない。生物学的なメカニズムがある
- 生活習慣の改善と認知行動療法が治療の中心
- 学校への情報提供でトイレの自由利用を確保
- 多くは成長とともに改善します
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