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早期離乳食でアレルギー予防|最新エビデンス解説
Vol.326アレルギー

早期離乳食でアレルギー予防|最新エビデンス解説

離乳食を遅らせるほどアレルギーになるという最新研究を踏まえ、卵・ピーナッツの早期導入ガイドラインを小児科医が解説します。

アレルギー0〜6ヶ月・6〜12ヶ月7
おかもん先生小児科専門医愛育病院 小児科

参考文献 7·Q&A 4問収録

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この記事のポイント

  • LEAP試験:ピーナッツの早期導入でアレルギー発症が81%減少しました
  • 卵の早期導入(PETIT試験)でも卵アレルギーの予防効果が確認されています
  • 現在のガイドラインは「生後5〜6ヶ月から多様な食品を導入する」方向に転換しています

愛育病院 小児科おかもん だより Vol.326

「早期離乳食とアレルギー予防の最新エビデンス」、"遅らせる=安全"の常識は逆転しました

今号のポイント

  1. 2
    LEAP試験:ピーナッツの早期導入でアレルギー発症が81%減少しました
  2. 4
    卵の早期導入(PETIT試験)でも卵アレルギーの予防効果が確認されています
  3. 6
    現在のガイドラインは「生後5〜6ヶ月から多様な食品を導入する」方向に転換しています

こんにちは。愛育病院小児科のおかもんです。

かつては「アレルギーが心配な食品は離乳食で遅らせた方が安全」と言われていました。ただ2015年以降、大規模な臨床試験の結果が次々と出て、この考え方は逆転しています。今回は離乳食の開始時期とアレルギー予防のエビデンスを整理します。

Q1. ピーナッツアレルギーが早期導入で減ったって本当?

——ピーナッツを早くから食べさせるとアレルギーが減るんですか? 逆に怖い気がしますが…

この常識を覆したのが、2015年に発表されたLEAP試験(Learning Early About Peanut Allergy)です[1]。イギリスで行われたこの大規模ランダム化比較試験では、ピーナッツアレルギーのリスクが高い乳児(重度の湿疹や卵アレルギーのある児)640人を対象に、生後4〜11ヶ月からピーナッツを含む食品を定期的に食べさせるグループと、5歳まで完全に避けるグループを比較しました。

結果として、ピーナッツを早期に導入したグループでは5歳時点のピーナッツアレルギー発症率が81%減少しました(回避群17.2% vs 導入群3.2%)。さらに追跡調査(LEAP-On試験)では、その後1年間ピーナッツを食べなくても予防効果が持続することが確認されています[2]。

この結果は世界のアレルギーガイドラインを大きく変えました。」

ポイント LEAP試験:ピーナッツの早期導入でアレルギー発症が81%減少。世界のガイドラインが変わる契機になりました。

Q2. 卵や他の食品でも同じことが言えるの?

お父さん「卵アレルギーが心配で、卵の離乳食を遅らせているんですが…」

卵については日本から画期的な研究が出ています。2017年に発表されたPETIT試験(Prevention of Egg allergy with Tiny amount of Intake)です[3]。国立成育医療研究センターの研究チームが、アトピー性皮膚炎のある乳児を対象に、生後6ヶ月から微量の加熱卵粉末(50mg/日、卵タンパク質として約0.2g)を段階的に導入しました。

結果、1歳時点での卵アレルギーの発症率が約80%減少しました(回避群37.7% vs 導入群8.3%)。ただし重要なポイントは、導入前にスキンケアでアトピー性皮膚炎をしっかり治療してから始めていることです。湿疹がある状態で始めると逆効果になる可能性があります。

また、イギリスのEAT試験(Enquiring About Tolerance)では、生後3ヶ月からピーナッツ・卵・牛乳・ごま・白身魚・小麦の6種類を同時に導入する試験が行われました[4]。プロトコル通りに摂取できた群では、ピーナッツと卵のアレルギーが有意に減少しました。」

ポイント PETIT試験(日本発):加熱卵の早期微量導入で卵アレルギーが約80%減少。ただし湿疹の治療が前提です。

Q3. 現在のガイドラインはどうなっている?

——以前は『1歳まで卵は待って』と言われましたが、今は変わったんですか?

はい、大きく変わりました。現在の主要なガイドラインの方向性をまとめます。

厚生労働省(授乳・離乳の支援ガイド 2019年改定版)[5]

  • 離乳食の開始は生後5〜6ヶ月
  • 特定の食品の開始を遅らせてもアレルギー予防効果はない
  • 卵黄は離乳初期(生後5〜6ヶ月)から開始可能

日本小児アレルギー学会(食物アレルギー診療ガイドライン2021)[6]

  • アレルゲン食品の摂取開始を遅らせることは推奨しない
  • スキンケアによる皮膚バリアの維持が重要
  • 微量から段階的に導入する

アメリカ小児科学会(AAP)・NIAID

  • ピーナッツは生後4〜6ヶ月から導入を検討
  • ハイリスク児(重度の湿疹・卵アレルギー)は医師の指導下で開始

つまり、『遅らせる=安全』は過去の常識であり、現在は『早期に多様な食品を導入する方がアレルギー予防に効果的』という考え方に転換しています。」

ポイント 現在のガイドライン:生後5〜6ヶ月から多様な食品を導入。「遅らせる=安全」はもう過去の常識です。

Q4. 注意すべきケースはある?

お父さん「早く始めればいいということは、すべての赤ちゃんに当てはまりますか?」

基本的にはほとんどのお子さんに当てはまりますが、以下のケースでは必ず医師に相談してから開始してください。

  1. 2
    すでにアレルギー症状がある場合:特定の食品を食べて蕁麻疹や嘔吐が出たことがある場合は、自己判断で進めず必ずアレルギー専門医に相談を
  2. 4
    重度のアトピー性皮膚炎がある場合:PETIT試験でも、まず湿疹を治療してから導入しています。皮膚バリアが壊れた状態での導入は経皮感作のリスクがあります[7]
  3. 6
    兄弟に重度の食物アレルギーがある場合:ハイリスクと判断される場合は、医師の指導下での導入が安全です

大切なのは、怖がって遅らせるのではなく、正しい知識をもって適切な時期に始めることです。不安な場合は遠慮なく小児科やアレルギー科でご相談ください。」

ポイント 既にアレルギー症状がある場合や重度の湿疹がある場合は、必ず医師に相談してから始めましょう。

まとめ

  • LEAP試験:ピーナッツの早期導入でアレルギー81%減少、世界のガイドラインが転換
  • PETIT試験(日本):加熱卵の微量早期導入で卵アレルギー約80%減少
  • EAT試験:多種類同時早期導入の可能性を示唆
  • 現在のガイドラインは「生後5〜6ヶ月から多様な食品を導入」
  • ただし既にアレルギーがある場合・重度の湿疹がある場合は医師に相談を

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※ この記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。お子さんの症状が心配な場合は、かかりつけの小児科医にご相談ください。

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