愛育病院 小児科おかもん だより Vol.308
「赤ちゃんが寄り目に見えます」、偽斜視と本当の斜視の見分け方
今号のポイント
- 2赤ちゃんの「寄り目」は内眼角贅皮(ないがんかくぜいひ)による偽斜視がほとんど。成長とともに自然に目立たなくなる
- 4ペンライトテスト(角膜反射法)で本当の斜視と見分けられる。写真のフラッシュでも左右差をチェック可能
- 64ヶ月以降も明らかな斜視が持続する場合は眼科受診を。放置すると弱視のリスク
こんにちは。愛育病院小児科のおかもんです。
今回のテーマは赤ちゃんの寄り目(偽斜視)です。
「赤ちゃんの目が内側に寄っている気がする」「斜視じゃないかと心配」、乳児健診でとても多いご相談です。実は、赤ちゃんの寄り目の大半は偽斜視(ぎしゃし)といって、見かけ上の内斜視です [1]。本当の斜視ではありません。ただし、中には本当の斜視が隠れていることもありますので、見分け方を知っておきましょう。
Q1.「なぜ赤ちゃんは寄り目に見えるんですか?」
お父さん「うちの子、よく寄り目に見えるんですが、斜視でしょうか?」
ご心配ですよね。でもこれは偽斜視(ぎしゃし)といって、実際には目の位置は正常なのに、寄り目に見えている状態がほとんどです [1]。日本人の赤ちゃんに特に多く見られます
お父さん「なぜ寄り目に見えるんですか?」
原因は内眼角贅皮(ないがんかくぜいひ=蒙古ひだ)です [1]。赤ちゃんの鼻の付け根は低く、目頭を覆う皮膚のひだ(蒙古ひだ)が発達しています。このひだが白目(強膜)の内側部分を隠してしまうため、黒目が内側に寄っているように見えるんです。特に横を向いた時に片目だけ寄って見えることが多いですね
お父さん「成長すると治りますか?」
はい。鼻の付け根が高くなり、蒙古ひだが目立たなくなるにつれて、寄り目に見える状態は自然に改善します [1]。多くの場合、2〜3歳頃には気にならなくなります。東アジア系の顔立ちの特徴ですので、まったく心配いりません
ポイント
- 赤ちゃんの寄り目の大半は偽斜視。目の位置は正常 [1]
- 原因は内眼角贅皮(蒙古ひだ)が白目を隠すため [1]
- 2〜3歳頃に鼻が高くなると自然に目立たなくなる
Q2.「本当の斜視との見分け方はありますか?」
お父さん「偽斜視なら安心なんですが、本当の斜視じゃないかどうか、どう見分ければいいですか?」
いくつかの方法があります。まずご家庭でもできる簡単なチェック法をお伝えしますね [2]。
やり方
- ペンライトテスト(角膜反射法)
- 暗い部屋で赤ちゃんの正面30cmくらいからペンライトを当てる
- 写真フラッシュチェック
- フラッシュをたいて正面から写真を撮る
- 片目隠しテスト
- 片目を手で隠し、離した時の目の動きを見る
判断のポイント
- ペンライトテスト(角膜反射法)
- 両目の角膜(黒目の表面)に映る光の点が左右対称なら正常。ずれていたら斜視の可能性
- 写真フラッシュチェック
- 写真に映る目の光の反射(赤目の位置)が左右対称なら正常
- 片目隠しテスト
- 隠していた目が内側や外側にずれてから戻る動きがあれば斜視の可能性
お父さん「ペンライトテストは簡単にできそうですね」
はい。スマホのライトでも代用できます。角膜反射法(ヒルシュベルグテスト)とも呼ばれ、眼科でも使われるスクリーニング方法です [2]。光の反射点が瞳孔の中心にあれば正常、中心からずれていれば斜視の疑いがあります。ただし、これはあくまでスクリーニングですので、疑わしい場合は必ず眼科を受診してください
ポイント
- ペンライトテスト:光の反射点が左右対称なら正常 [2]
- 写真のフラッシュでも光の反射位置で左右差をチェックできる
- 疑わしい場合は必ず眼科を受診
Q3.「赤ちゃんでも斜視の治療は必要ですか?」
お父さん「もし本当の斜視だった場合、赤ちゃんでも治療が必要ですか?」
はい、斜視は早期発見・早期治療が非常に重要です [3]。その理由は弱視(じゃくし)のリスクにあります。斜視があると、脳はずれている方の目からの情報を使わなくなります(抑制といいます)。すると、使われない方の目の視力が発達しなくなってしまうんです。これが斜視弱視です [3]
お父さん「弱視って、メガネをかけても見えないということですか?」
その通りです。弱視は脳の視覚中枢の発達の問題なので、メガネやコンタクトで矯正しても視力が出ません [3]。ただし、視覚系の可塑性は概ね7〜10歳頃まで残存しますが、積極的な治療効果が期待できるのは8歳頃までとされています。この時期に適切な治療を行えば、視力を改善できます
治療法は斜視の種類と程度によって異なります [4]。
| 治療法 | 内容 |
|---|---|
| 遮閉法(アイパッチ) | よく見える方の目を隠して、弱視の目を使わせる訓練 |
| メガネ | 遠視が原因の斜視(調節性内斜視)に特に有効 |
| 手術 | 目を動かす筋肉のバランスを調整する。日帰り〜1泊で可能 |
お父さん「手術が必要になることもあるんですね」
はい。ただし手術が必要なケースは一部です。まずはメガネやアイパッチで改善するか試みます。大切なのは、早く見つけて早く治療を始めることです。3歳児健診での視力検査は斜視・弱視発見の重要な機会ですので、必ず受けてくださいね
ポイント
- 斜視を放置すると弱視のリスク。脳の視覚発達の問題なのでメガネでは矯正できない [3]
- 生後〜6〜8歳の臨界期に治療すれば視力改善が可能 [3]
- 治療はアイパッチ・メガネ・手術。早期発見が鍵 [4]
Q4.「いつまでに受診すればいいですか?受診の目安は?」
お父さん「偽斜視なら様子を見ていいとのことですが、いつまでに受診すべきですか?」
以下を受診の目安にしてください [1][5]。
| 受診すべきケース | 理由 |
|---|---|
| 生後4ヶ月以降も明らかな斜視が持続 | 新生児期の一過性の目のずれは生後2〜4ヶ月で安定する。4ヶ月以降の持続は要検査 |
| 片目だけいつも同じ方向にずれている | 一定の斜視は偽斜視では説明できない |
| 写真で光の反射位置が左右で異なる | 角膜反射の非対称は真の斜視を示唆 |
| 目を細めたり、頭を傾けたりする | 見にくさを補おうとする行動 |
| 家族に斜視・弱視の方がいる | 遺伝的リスクがある場合は早めにスクリーニング |
新生児期(生後0〜2ヶ月)は目の動きがまだ不安定で、一過性に寄り目になったり外側にずれたりすることがあります。これは正常です [5]。しかし、生後4ヶ月を過ぎても目の位置がずれている場合は、眼科での詳しい検査をお勧めします。最近はスポットビジョンスクリーナーという機器で、生後6ヶ月から屈折異常や斜視のスクリーニングが可能になっています [5]。当院の乳児健診でも使用していますので、ご安心ください
ポイント
- 生後4ヶ月以降も持続する斜視は眼科受診を [1][5]
- 写真の光反射の左右差は簡単なチェック法
- 家族歴がある場合は早めのスクリーニングを推奨 [5]
- スポットビジョンスクリーナーで生後6ヶ月からスクリーニング可能 [5]
今号のまとめ
- 赤ちゃんの寄り目の大半は偽斜視。内眼角贅皮が原因で2〜3歳で自然に改善 [1]
- ペンライトテスト(角膜反射法)で本当の斜視と見分けられる [2]
- 斜視を放置すると弱視のリスク。臨界期(〜6〜8歳)の治療が重要 [3]
- 生後4ヶ月以降の持続する斜視は眼科受診を [1][5]
- 3歳児健診の視力検査は必ず受ける。早期発見が子どもの視力を守る
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愛育病院 小児科 おかもん
※ この記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。お子さんの症状が心配な場合は、かかりつけの小児科医にご相談ください。記事中の情報は掲載時点の医学的知見に基づいており、今後の研究の進展により変更される可能性があります。