愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.156
「副反応が怖い」を正しく理解する、予防接種の副反応への対応
今号のポイント
- 2副反応の多くは軽微(発熱・局所腫脹・不機嫌)で、1〜2日で自然に治まる
- 4「副反応が怖いから打たない」選択は、VPD(ワクチンで防げる病気)にかかるリスクのほうがはるかに大きい
- 6万が一の重篤な副反応には予防接種健康被害救済制度がある。安心して接種を
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「予防接種の後に熱が出ました。大丈夫ですか?」「副反応が怖くてワクチンを打つか迷っています」。予防接種に関する相談で最も多いのが、副反応への不安です。
お子さんのことを心配する気持ちは当然です。ただ、「怖いから打たない」という判断をする前に、副反応のリスクと、ワクチンを打たないことで得るリスクを正しく比較する必要があります。今号では、予防接種の副反応について科学的に整理し、安心して接種に臨めるようお伝えします。
Q1.「副反応と副作用、有害事象は何が違うんですか?」
——ニュースで『ワクチンの副反応』とか『有害事象』とか聞きますが、違いがわかりません
とても大事な質問です。この3つの用語は混同されやすいのですが、意味が異なります [1]
定義
- 副反応
- ワクチン接種によって起こる、期待される免疫反応に伴う症状。因果関係あり [1]
- 副作用
- 薬(治療薬)に対して使われる用語。ワクチンでは「副反応」を用いる [1]
- 有害事象
- ワクチン接種後に起きたあらゆる健康上の問題。因果関係は問わない [1]
例
- 副反応
- 接種部位の腫れ、発熱、不機嫌
- 副作用
- (ワクチンでは使わない)
- 有害事象
- 接種翌日に転んで骨折 → 有害事象だが副反応ではない
ニュースで報道される『ワクチン接種後の○○』は、多くの場合有害事象(接種との因果関係が証明されていない出来事)です [1]。因果関係が証明された副反応とは明確に区別する必要があります。この違いを知っているだけで、ニュースの受け取り方が変わります
ポイント
- 副反応=ワクチンとの因果関係がある症状 [1]
- 有害事象=接種後に起きた出来事すべて。因果関係は問わない [1]
- ニュースの「接種後に○○」の多くは有害事象であり、副反応とは限らない
Q2.「よくある副反応にはどんなものがありますか?」
——昨日ワクチンを打って、今朝から37.8度の熱があって不機嫌です。これは副反応ですか?
はい、典型的な副反応です。ほとんどのワクチンに共通する副反応を整理しますね [2]
| 副反応 | 頻度 | 持続期間 | 対処法 |
|---|---|---|---|
| 接種部位の発赤・腫脹 | 20〜50% [2] | 1〜3日 | 冷やしてOK。揉まない |
| 発熱(37.5度以上) | 10〜30% [2] | 1〜2日 | 元気なら経過観察。辛そうなら解熱剤 |
| 不機嫌・ぐずり | 20〜40% | 1〜2日 | いつもより多めに抱っこ、安静 |
| 食欲低下 | 10〜20% | 1〜2日 | 水分補給を優先 |
| 軽い下痢(ロタウイルスワクチン) | 5〜10% [3] | 数日 | 通常の便処理で対応 |
これらはすべて免疫システムがワクチンに反応して働いている証拠です [2]。いわば、体が『訓練を受けている』状態。1〜2日で自然に治まりますので、過度に心配する必要はありません
——解熱剤を使ってもワクチンの効果は落ちませんか?
以前はそのような懸念もありましたが、現在の研究では解熱剤(アセトアミノフェン)の使用がワクチンの免疫応答を臨床的に有意に低下させるという明確なエビデンスはないとされています [4]。お子さんが辛そうであれば、使っていただいて構いません
ポイント
- よくある副反応は発赤・腫脹、発熱、不機嫌。いずれも1〜2日で治まる [2]
- 副反応は免疫が働いている証拠。心配しすぎなくて大丈夫
- 解熱剤を使ってもワクチンの効果は臨床的に影響しない [4]
Q3.「同時接種だと副反応が増えませんか?」
——一度に4本も打つと聞いて心配です。副反応が強くなりませんか?
ご心配はもっともですが、同時接種で副反応の頻度や重症度が増加するというエビデンスはありません [5]。Vol.19でも詳しくお伝えしましたが、改めて整理します
単独接種
- 副反応の頻度
- 変わらない [5]
- 副反応の重症度
- 変わらない [5]
- 免疫応答(効果)
- 十分
- 通院回数
- 多い
- 接種の遅れ
- リスクあり
同時接種
- 副反応の頻度
- 変わらない [5]
- 副反応の重症度
- 変わらない [5]
- 免疫応答(効果)
- 十分(相互干渉なし) [5]
- 通院回数
- 少ない(保護者の負担軽減)
- 接種の遅れ
- スケジュール通りに進めやすい
赤ちゃんの免疫システムは、日常的に数千〜数万の抗原に同時に対応しています [5]。ワクチン数本分の抗原は、その能力からすればごくわずかです。同時接種で副反応が増えることはなく、むしろ接種が遅れることでVPD(ワクチンで防げる病気)にかかるリスクのほうが問題です
ポイント
- 同時接種で副反応の頻度・重症度は増加しない [5]
- 赤ちゃんの免疫は同時に多数の抗原に対応可能 [5]
- 接種の遅れによるVPDリスクのほうが問題
Q4.「アナフィラキシーが怖いです。どのくらいの確率で起こりますか?」
——ワクチンでアナフィラキシーが起きたという話を聞いて、怖くなりました
アナフィラキシーへの不安は自然な感情です。まず、事実を確認しましょう。ワクチン接種後のアナフィラキシーの発生率は約100万回に1〜2回です [6]
| リスク比較 | 確率 |
|---|---|
| ワクチンによるアナフィラキシー | 100万回に1〜2回(0.0001〜0.0002%)[6] |
| 麻疹にかかった場合の脳炎 | 1,000人に1人(0.1%)[7] |
| 麻疹にかかった場合の死亡 | 1,000人に1〜2人 [7] |
| 自動車に乗っていて事故に遭う確率(年間) | 約0.5% |
そして、アナフィラキシーは接種後30分以内に起こることがほとんどです [6]。だからこそ、接種後15〜30分間は医療機関で待機していただいています。万が一起きても、医療機関にはアドレナリン(エピネフリン)が常備されており、適切に対応すれば致命的になることは極めてまれです [6]
——接種後、家に帰ってからアナフィラキシーが起こることはありますか?
非常にまれですが、可能性はゼロではありません。帰宅後に全身の発疹、顔や唇の腫れ、呼吸困難、ぐったりするなどの症状が出た場合は、直ちに救急車を呼んでください [6]。ただし、繰り返しますがこれは100万回に1〜2回の頻度であり、接種しないことによるリスクと比較すると接種するメリットのほうが圧倒的に大きいです
ポイント
- アナフィラキシーは100万回に1〜2回。極めてまれ [6]
- 接種後15〜30分の院内待機で安全を確保 [6]
- VPDにかかるリスクと比較すると、接種のメリットが圧倒的に大きい [7]
Q5.「副反応が怖いから打たない、という選択はどうですか?」
——周りに『ワクチンは危険だから打たない』という方がいます。実際どうなんでしょう?
これは非常に重要なテーマです。『副反応のリスク』と『VPDにかかるリスク』を比較していただきたいのです [7]
ワクチンの副反応リスク
- 麻疹
- 発熱20%、発疹5% [2]
- 百日咳
- 接種部位腫脹20% [2]
- Hib髄膜炎
- 軽度発熱10% [2]
- 水痘
- 軽度発疹5% [2]
ワクチンを打たずに罹患した場合のリスク
- 麻疹
- 脳炎1/1,000、死亡1〜2/1,000 [7]
- 百日咳
- 乳児の死亡率1〜2% [8]
- Hib髄膜炎
- 致命率3〜5%、生存例の約20%に難聴等の後遺症 [9]
- 水痘
- 脳炎1/10,000、二次性細菌感染(蜂窩織炎・敗血症等)の合併
表を見ていただければわかるように、ワクチンの副反応はほとんどが軽微で一過性です。一方、VPDにかかった場合の合併症は重篤で、命に関わることがあります [7]。『副反応が怖い』という感情は理解できますが、ワクチンを打たないことで引き受けるリスクのほうがはるかに大きいのです
——みんなが打っていれば、うちの子は打たなくても大丈夫じゃないですか?
これは集団免疫(herd immunity)への"ただ乗り"と呼ばれる考え方です [10]。たしかに周囲の接種率が高ければ流行は起きにくくなりますが、接種率が下がると集団免疫が崩壊し、大流行が起こります。2018〜2019年のヨーロッパでの麻疹大流行はまさにそのケースでした [10]。お子さんを守るためには、お子さん自身がワクチンで免疫を持つことが最も確実です
ポイント
- ワクチンの副反応は軽微で一過性。VPDのリスクは重篤で命に関わる [7]
- 「打たない」選択はVPDにかかるリスクを引き受けることを意味する
- 集団免疫への"ただ乗り"は接種率低下で崩壊する [10]
Q6.「万が一、重い副反応が出た場合の補償はありますか?」
——本当にまれだとわかっていても、万が一のことが心配です
そのご心配に応えるために、日本には予防接種健康被害救済制度があります [11]
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 定期接種・臨時接種で健康被害が生じた場合 [11] |
| 給付内容 | 医療費・医療手当、障害児養育年金、死亡一時金など [11] |
| 申請方法 | お住まいの市区町村に申請 → 厚生労働省の審査会で因果関係を審査 |
| 判定基準 | 厳密な因果関係の証明は不要。否定できない場合も救済対象 [11] |
| 任意接種の場合 | PMDA(医薬品医療機器総合機構)の医薬品副作用被害救済制度で対応 |
日本の救済制度は、因果関係を完全に証明しなくても『否定できない場合』は救済するという、比較的広い基準を採用しています [11]。つまり、万が一の場合のセーフティネットはしっかり用意されています。このような制度があることを知った上で、安心して接種に臨んでいただければと思います
ポイント
- 予防接種健康被害救済制度で万が一の補償がある [11]
- 因果関係を否定できない場合も救済対象 [11]
- 任意接種にもPMDAの救済制度がある
まとめ
- 副反応と有害事象は違う。副反応は因果関係が認められたもの、有害事象は因果関係不問 [1]
- よくある副反応(発熱、腫脹、不機嫌)は1〜2日で治まる軽微なもの [2]
- 同時接種で副反応は増加しない [5]
- アナフィラキシーは100万回に1〜2回。院内待機で対応可能 [6]
- 「副反応が怖いから打たない」はVPDのリスクを引き受けること。リスク比較が重要 [7]
- 予防接種健康被害救済制度で万が一の補償がある [11]
あわせて読みたい
- Vol.19「同時接種の安全性」
- Vol.45「予防接種スケジュールの考え方」
- Vol.48「おたふくかぜワクチン」
- Vol.47「水ぼうそう(水痘)」
ご質問・ご感想
「副反応が心配で接種を迷っていた」「この記事で安心できた」など、ご感想やご質問がございましたら、お気軽にお寄せください。お子さんの健康を守るために、正しい情報をお届けし続けます。
愛育病院 小児科 おかもん先生
本メルマガの内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。お子さまの症状についてはかかりつけの小児科医にご相談ください。