愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.474
子どもの花粉症、風邪と見分けるコツ、目をこする・鼻血が止まらないのはなぜ?
今号のポイント
- 22歳でも花粉症になる。「鼻水+目のかゆみ+くしゃみ」の3点セットが風邪との違い
- 4抗ヒスタミン薬は「眠くなりにくい」第2世代を選ぶ。市販のシロップは第1世代が多いので注意
- 6鼻血を繰り返す原因は花粉で鼻粘膜が荒れているから。こすらせない工夫が大事
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
春になると外来で急増するのが「鼻水が止まらない」「やたら目をこする」「鼻血がよく出る」というご相談です。風邪が長引いているだけだろう、と思っていたら実は花粉症だった、というケースは本当に多いです。
今号では1〜6歳のお子さんを中心に、花粉症と風邪の見分け方、市販薬を選ぶときの注意点、そして意外と知られていない「花粉症と鼻血」の関係まで、5つのQ&Aでお答えします。
Q1.「2歳の子でも花粉症になりますか? 風邪との違いは?」
——2歳の娘が3月に入ってからずっと鼻水を出しています。熱はないんですが、風邪でしょうか?
熱がなく鼻水だけが続いているなら、花粉症の可能性を考えたいところです。2歳でも花粉症は発症します。全国疫学調査では0〜4歳のスギ花粉症有病率は約3.8%と報告されており、2歳以降の発症が増えています [1]
——えっ、そんなに小さくてもですか?
はい。見分けるポイントは3点セットです [2][3]
風邪
- 鼻水の色
- 透明 → 数日で黄色〜緑に変化
- 目のかゆみ
- ほとんどなし
- くしゃみ
- たまに出る
- 発熱
- 37.5℃以上になることが多い
- 持続期間
- 7〜10日で改善
花粉症
- 鼻水の色
- ずっと透明でサラサラ [2]
- 目のかゆみ
- 目をゴシゴシこする・充血 [3]
- くしゃみ
- 連発(5回以上続く) [2]
- 発熱
- なし [3]
- 持続期間
- 2週間以上続く [3]
透明な鼻水+目のかゆみ+くしゃみの連発が揃い、2週間以上続くようなら花粉症を強く疑います [2][3]。小さいお子さんは『目がかゆい』と言葉で伝えられません。目を手の甲でゴシゴシこする、鼻の下を手のひらで上にこすり上げる(アレルギーサリュート)といった仕草がサインです [2]
ポイント
- 透明鼻水 + 目のかゆみ + くしゃみ連発が2週間以上 → 花粉症を疑う [2][3]
- 2歳以降は発症しうる。0〜4歳でも有病率は約3.8% [1]
- 言葉で伝えられない年齢は目こすり・鼻こすりの仕草に注目 [2]
Q2.「市販の鼻水シロップを飲ませていいですか?」
——とりあえずドラッグストアで買った子ども用シロップを飲ませているのですが……
ここが大事なポイントです。市販の子ども用かぜシロップの多くには第1世代抗ヒスタミン薬(クロルフェニラミンなど)が入っています。鼻水は止まりますが、眠気が強く、脳の覚醒・学習にかかわるヒスタミンをブロックしてしまいます [4]
第1世代
- 代表的な成分
- クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン
- 市販名の例
- ムヒのこどもかぜシロップ等
- 眠気
- 強い
- 脳内H1受容体占拠率
- 50〜90%
- 注意点
- "気づかない鎮静"で集中力低下 [4]
第2世代
- 代表的な成分
- フェキソフェナジン、ロラタジン、レボセチリジン
- 市販名の例
- アレグラFXジュニア(7歳〜)等
- 眠気
- 少ない〜ほとんどなし [4]
- 脳内H1受容体占拠率
- 0〜30% [4]
- 注意点
- 小児用OTCの選択肢がまだ少ない
第1世代は『眠くなっていないから大丈夫』と思っていても、本人が自覚しないまま注意力や認知機能が低下する"impaired performance"が起こります [4]。特にお子さんの場合、保育園や幼稚園での活動に影響が出る可能性があります
——では、どうすればいいですか?
花粉症であれば、かかりつけの小児科で第2世代抗ヒスタミン薬を処方してもらうのがベストです。ザイザルシロップ(レボセチリジン)は生後6ヶ月から、アレグラドライシロップ(フェキソフェナジン)は2歳から使えます [5]。市販薬を買う場合は、成分表示にクロルフェニラミンやジフェンヒドラミンがないか必ず確認してください [4]
ポイント
- 市販の子ども用かぜシロップは第1世代が多い。眠気・学習能力への影響に注意 [4]
- 花粉症には第2世代抗ヒスタミン薬を。小児科で処方してもらうのが確実 [5]
- 市販薬を選ぶときは成分表示を必ずチェック [4]
Q3.「花粉症で鼻血が出るって本当ですか?」
お父さん「3歳の息子が最近よく鼻血を出します。花粉症と関係ありますか?」
大いに関係あります。花粉症のお子さんが鼻血を繰り返すのはよくあるパターンです [6]。メカニズムはこうです
- 2花粉によるアレルギー性炎症で鼻の粘膜が充血し、もろくなる [6]
- 4鼻がむずむずするので指で鼻をいじる・こする
- 6鼻の入り口付近にあるキーゼルバッハ部位(細い血管が集中する場所)が傷つく [6]
- 8かさぶたができる → またかゆくていじる → また出血、の悪循環
お父さん「なるほど、粘膜が弱くなっているところをいじるから出血するんですね」
そのとおりです。対策は2つの柱があります
| 対策 | 具体的な方法 |
|---|---|
| 花粉症の治療 | 抗ヒスタミン薬や点鼻ステロイドで鼻粘膜の炎症を抑える [5][6] |
| 鼻をこすらせない工夫 | 爪を短く切る、鼻の入り口にワセリンを薄く塗って粘膜を保護する [6] |
鼻血が出たときの対応も覚えておいてください。小鼻(鼻の柔らかい部分)をつまんで、やや前かがみの姿勢で10分間圧迫します。上を向かせたり、ティッシュを詰めたりするのは逆効果です [6]。10分しっかり圧迫しても止まらない場合は受診してください
ポイント
- 花粉症の鼻血は粘膜の炎症 + 鼻いじりの悪循環 [6]
- 治療で炎症を抑えつつ、爪切り・ワセリンでこすらせない工夫を [6]
- 止血は小鼻をつまんで前かがみ10分。上を向かせない [6]
Q4.「目をこすりすぎて腫れています。眼科に行くべき?」
——4歳の娘が目をこすりすぎてまぶたが赤く腫れています。これは眼科ですか? 小児科ですか?
花粉によるアレルギー性結膜炎が起きている状態です。花粉症のお子さんの約70%に目の症状が伴うとされています [3][7]。まず小児科でも対応できますが、以下のような場合は眼科を受診してください
| 小児科で対応可能 | 眼科への受診をすすめるケース |
|---|---|
| 目のかゆみ・充血が軽度〜中等度 | まぶたの腫れがひどい、目やにが多い |
| 抗アレルギー点眼薬で改善する | 点眼薬を使っても改善しない |
| 鼻症状も一緒に治療したい | 視力低下や痛みを訴える |
特に注意したいのが春季カタルという重症のアレルギー性結膜炎です。強い目のかゆみ、糸を引くような粘り気のある目やに、まぶたの裏に石垣状の隆起(巨大乳頭)が見られます [7]。放置すると角膜に傷がつき視力に影響することもあるため、目の症状が強い場合は早めに眼科を受診してください [7]
——家でできることはありますか?
冷たいタオルで目を冷やすとかゆみが和らぎます。帰宅後に顔を洗って目の周りの花粉を落とすのも効果的です [3]。こすると粘膜が傷つきますので、かゆくてもこすらず冷やすを合言葉にしてください
ポイント
- 花粉症の約70%にアレルギー性結膜炎が伴う [3][7]
- 目の症状が強い・改善しない場合は眼科へ [7]
- 家庭では冷タオル + 帰宅後の洗顔。こすらず冷やす [3]
Q5.「受診のタイミングがわかりません。どんなときに小児科に行くべき?」
——毎回病院に連れて行くのも大変で……。どのラインで受診すべきですか?
お忙しい中での受診は大変ですよね。以下の3つのサインが出たら受診をおすすめします [2][5][8]
| サイン | 理由 |
|---|---|
| 鼻づまりで夜眠れない・口呼吸になっている | 睡眠障害は発達・成長に影響。口呼吸は歯並びや顔面の発育にも関わる [8] |
| 市販薬を1週間使っても改善しない | 第1世代の可能性あり。処方薬への切り替えが必要 [5] |
| 目の症状が強い(腫れ・目やに・かゆみで泣く) | 春季カタルなど重症型の除外が必要 [7] |
逆に、症状が軽く日常生活に支障がなければ、花粉を避ける生活の工夫だけで乗り切れることもあります。ただ、毎年春に同じ症状を繰り返すなら、一度血液検査(特異的IgE検査)でアレルゲンを確認しておくと、翌年からの対策が立てやすくなります [2]
——血液検査は何歳からできますか?
年齢制限はありません。ただし採血が必要なので、お子さんの負担を考えると2歳以降が目安です。少量の血液で複数のアレルゲンを同時に調べられる検査(ViewアレルギーやMAST48など)もありますので、かかりつけ医に相談してみてください [2]
ポイント
- 夜の鼻づまり・口呼吸、1週間以上改善しない、目の症状が強いの3つが受診の目安 [2][5][8]
- 毎年繰り返すなら血液検査でアレルゲンを確認しておくと対策しやすい [2]
- 検査は2歳以降が実施の目安
今号のまとめ
- 2歳でも花粉症になる。「透明鼻水 + 目のかゆみ + くしゃみ連発」が風邪との違い [1][2][3]
- 市販の子ども用かぜシロップは第1世代抗ヒスタミン薬が多い。"気づかない鎮静"に注意し、小児科で第2世代を処方してもらう [4][5]
- 花粉症で鼻血を繰り返すのは粘膜の炎症と鼻いじりの悪循環。治療 + ワセリン + 爪切りで対策 [6]
- 目の症状が強いときは眼科受診を。春季カタルの除外が大切 [7]
- 夜の鼻づまり、市販薬で改善しない、目の症状が強いの3つが受診の目安 [2][5][8]
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