愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.399
褒め方の本当の効果、「すごいね」より「工夫したね」
「たくさん褒めていいって聞いたから、とにかく褒めるようにしているんです」。外来でよく聞く親御さんの言葉です。
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
褒めるのは大事です。ただ、褒め方によって効果はかなり違います。今回は「人ほめ」と「過程ほめ」という2種類の褒め方の話を、研究成果と一緒にお伝えします。
「頭がいいね」は、実は子どもを縮こまらせる
スタンフォード大学のキャロル・ドゥエックらの古典的研究では、能力を褒められた子ども(「頭がいいね」)は、その後に難しい課題を避ける傾向が強くなりました。逆に努力を褒められた子ども(「よく工夫したね」)は、より難しい課題に挑戦しました [1]。
なぜでしょうか。「頭がいい」は固定された評価です。次に失敗したら「頭がよくない」ということになってしまう。だから子どもは無意識に失敗のリスクを避けるようになります。一方「工夫した」「頑張った」は次の行動で再現できる変数です。次も工夫すればまた褒められる、と子どもは感じられる。
1〜3歳の褒め方が、5年後の挑戦意欲を決める
シカゴ大学らの縦断研究は、1〜3歳の子どもに親がかける言葉を家庭で録音し、5年後に子どものマインドセットを評価しました。過程ほめ(effort/strategy/action)の割合が高かった親の子どもは、5年後に「挑戦は成長のチャンスだ」と捉える傾向(成長マインドセット)が強くなっていました [2]。
つまり、学童期の挑戦意欲の土台は、2歳のお誕生日より前から作られ始めているということです。
ただし2024年の追試研究では、過程ほめと人ほめの差がドゥエックの初期研究ほどはっきりしないという報告も出ています [3]。「過程ほめは万能薬」ではなく、「人ほめに偏ると失敗回避を学習しやすい」という方向性で理解するのが正確です。
「最後まで諦めなかったね」「別のやり方を試したのがよかったね」「何度もやり直したね」「集中していたね」「前より上手になったね」。逆に減らしたい人ほめは「天才」「頭がいい」「才能がある」「センスがある」。人ほめをゼロにする必要はなく、過程ほめの比率を上げることが大事です。
「条件付きの愛情」になっていないか
褒めることの副作用として注意したいのが、条件付きの愛情(parental conditional regard)です。これは「良い行動をしたときだけ親の愛情が増える」ような関わり方で、2023年のメタ解析では、条件付きの愛情は子どもの随伴的自尊心の低下やうつ症状と関連していました [4]。
「できたらハグする」ではなく、「できた・できないに関わらず存在そのものをハグする」。褒めるのはあくまで行動へのフィードバック、愛情の根っこは無条件、という切り分けが大切です。

おかもん先生より
外来で「うちの子、褒めても喜ばないんです」と相談された時があります。よく聞くと「すごい」「えらい」ばかりで、お子さん本人も「また言ってる」という反応。「どこが工夫だったか具体的に言ってみてください」と提案したら、次の受診で「子どもの表情が変わりました」と報告がありました。褒め言葉は量より解像度です。
褒めるのが難しい日もある
疲れているときに気の利いた褒め言葉なんて出てこない。当然です。そういう日は、褒めなくてもいいので「見てたよ」とだけ伝えてください。
子どもが欲しいのは、素晴らしい言葉ではなく「自分のしていることを親が見ていた」という事実です。「ブロック、そこまで積んだのか」「最後まで食べてたね」。事実を言葉にするだけで、評価を含まなくても十分です。
「お兄ちゃんより上手」「〇〇ちゃんよりできたね」は短期的な嬉しさを与えますが、兄弟関係や他者関係を蝕みます。比較軸は「過去のその子自身」に置いてください。「先週よりスムーズにできたね」が一番安全です。
今号のまとめ
- 能力を褒める「人ほめ」は失敗回避傾向を強めることがある
- 努力・工夫を褒める「過程ほめ」が挑戦意欲を育てやすい
- 1〜3歳の親の過程ほめ比率が、5年後の成長マインドセットを予測
- 条件付きの愛情にならないよう、存在への肯定と行動への褒めを分ける
- 比較は過去のその子自身との比較に留める
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愛育病院 小児科 おかもん先生
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