名前で呼ばれなくなった。「〇〇ちゃんのママ」としか認識されない。自分が何を好きだったのか思い出せない。
育児中のアイデンティティの喪失は、多くのお母さんが経験しながらも言語化しにくい苦しみです。今回は、その正体と、自分を取り戻すための具体的な方法をお話しします。
「〇〇ちゃんのママ」だけに縮小していく自分#
自分の名前で呼ばれることがない。その喪失感には名前がついています。心理学でいう「アイデンティティの縮小」です。
心理学者のエリクソンはアイデンティティを「自分は何者であるか」という一貫した自己感覚と定義しました。育児中は、職業人、友人、趣味を持つ個人、パートナーといった複数の役割が「母親」ひとつに集約されます [1]。出産前にキャリアにアイデンティティを持っていた人ほど強く感じやすく、パートナーが仕事を続けている場合の非対称性への怒りも加わります。
でもね、あなたは「母親」になりましたが、「母親だけ」になったわけではありません。他の自分はなくなったのではなく、今は見えにくくなっているだけです。
育休のブランクは「空白」じゃない。あなたは成長している#
キャリアのブランクが怖い。わかります。でも、育休中に得ているスキルはあなたが思っている以上に多いです。
マルチタスク能力。危機管理能力。言葉が通じない相手とのコミュニケーション能力。限られた時間での効率的なタイムマネジメント。研究でも、育児休業後に復帰した女性が新しい優先順位の付け方やタイムマネジメントスキルを発揮するケースが報告されています [2]。
ブランクは「空白」ではなく「別の経験を積んだ期間」です。オンライン講座(1日15分でも)、業界ニュースのフォロー、育休中の同僚とのつながり維持で、十分にスキルは保てます。
自分への投資は、間接的に子どもへの投資です#
趣味や学びに時間を使うことに罪悪感がある。その気持ちもわかります。でも、お母さんの精神的充実は子どもの養育環境の質に直結します。
自己決定理論では、自律性(自分で選択する自由)、有能感(何かを達成する感覚)、関係性(他者とのつながり)の3つが人間の基本的な心理的欲求とされています [3]。育児中はこの3つすべてが制限されやすく、趣味や学びはこれらの欲求を満たす大切な手段です。
今号のまとめ#
- 「〇〇ちゃんのママ」だけになる喪失感はアイデンティティの縮小による正常な反応
- キャリアブランクは「空白」ではなく「別の経験を積んだ期間」
- 週30分の「自分のための活動」が回復の起点になる
- 自分への投資は間接的に子どもへの投資
- 育児中のキャリア形成オプションは格段に増えている
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