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「うちの子の頭、片方が平らです」「後ろが絶壁で」、乳児健診でよくご相談いただきます。1992年に仰向け寝が推奨されてからSIDS(乳幼児突然死症候群)は劇的に減りましたが、一方で「位置的頭蓋変形(positional plagiocephaly)」が増えました [1]。今回はこの頭の形についてお伝えします。
位置的頭蓋変形とは#
赤ちゃんの頭蓋骨は柔らかく、同じ姿勢で寝続けると重みで変形します [1]。これは病気ではなく、寝姿勢の影響による形の偏りです。
| 主な変形の種類 | 特徴 |
|---|---|
| 斜頭症(plagiocephaly) | 片方の後頭部が平ら、非対称 |
| 短頭症(brachycephaly) | 後頭部全体が平ら(絶壁) |
| 長頭症(scaphocephaly) | 前後に長い(早産児に多い) |
主な変形の種類特徴
斜頭症(plagiocephaly)
片方の後頭部が平ら、非対称
短頭症(brachycephaly)
後頭部全体が平ら(絶壁)
長頭症(scaphocephaly)
前後に長い(早産児に多い)
Mawji ら (2013) の研究では、生後2か月時点で約46.6%の乳児に何らかの位置的頭蓋変形が見られたと報告されています [1]。決して珍しいことではありません。
| リスク因子 | 内容 |
|---|---|
| 男児 | やや多い |
| 第一子 | 子宮内の姿勢 |
| 多胎 | 子宮内スペース |
| 胎位異常 | 骨盤位など |
| 筋性斜頸 | 首を片方に向けやすい |
| 仰向け寝 | 圧力が同じ方向に |
| 運動発達の遅れ | 寝返りが遅いと改善しない |
リスク因子内容
男児
やや多い
第一子
子宮内の姿勢
多胎
子宮内スペース
胎位異常
骨盤位など
筋性斜頸
首を片方に向けやすい
仰向け寝
圧力が同じ方向に
運動発達の遅れ
寝返りが遅いと改善しない
頭蓋骨縫合早期癒合症との区別#
位置的頭蓋変形とは別に、「頭蓋骨縫合早期癒合症(craniosynostosis)」という疾患があります [2]。これは頭蓋骨の継ぎ目が早く閉じてしまう先天的な病気で、手術が必要な場合があります。
| 見分け方 | 位置的変形 | 縫合早期癒合症 |
|---|---|---|
| 頻度 | 多い | 約2,000人に1人 [2] |
| 頭の形 | 平行四辺形(斜頭症) | 台形・三角形など独特の形 |
| 耳の位置 | 前後にずれる | 疾患により変化 |
| 前頭部 | 変形側が前に出る | 疾患により変化 |
| 頭囲 | 正常 | 成長パターンに異常 |
| 縫合部を触る | 平滑 | 硬い隆起あり |
| 治療 | 体位変換など | 手術 |
見分け方
頭の形
位置的変形
平行四辺形(斜頭症)
縫合早期癒合症
台形・三角形など独特の形
見分け方
耳の位置
位置的変形
前後にずれる
縫合早期癒合症
疾患により変化
見分け方
前頭部
位置的変形
変形側が前に出る
縫合早期癒合症
疾患により変化
見分け方
頭囲
位置的変形
正常
縫合早期癒合症
成長パターンに異常
見分け方
縫合部を触る
位置的変形
平滑
縫合早期癒合症
硬い隆起あり
見分け方
治療
位置的変形
体位変換など
縫合早期癒合症
手術
見分けが難しい場合は、小児科または形成外科での診察を [2]。エコーや3D CTで確定診断ができます。
自宅でできる対策は#
AAPのガイドラインでは、位置的頭蓋変形の第一選択は体位変換とタミータイムです [3]。
| 体位変換の工夫 | 内容 |
|---|---|
| 枕の向きを変える | 寝る時の向きを日替わり |
| お気に入りを反対側に | 見たいものを変形側と反対に |
| 授乳の向きを変える | 左右交互に抱っこ |
| 抱っこの向き | 意識的に向きを変える |
| ベッドの位置 | 光や音源を反対側に |
| 昼寝時の向き | 寝入り時に意識的に調整 |
体位変換の工夫内容
枕の向きを変える
寝る時の向きを日替わり
お気に入りを反対側に
見たいものを変形側と反対に
授乳の向きを変える
左右交互に抱っこ
抱っこの向き
意識的に向きを変える
ベッドの位置
光や音源を反対側に
昼寝時の向き
寝入り時に意識的に調整
| タミータイム(うつぶせ遊び) | 内容 |
|---|---|
| 開始時期 | 生後すぐ〜 |
| 頻度 | 1日数回 |
| 1回の時間 | 数分〜10分 |
| 注意 | 起きている時、大人の監視下で |
| 目的 | 後頭部への圧力を減らし、首の筋力を育てる |
タミータイム(うつぶせ遊び)内容
開始時期
生後すぐ〜
頻度
1日数回
1回の時間
数分〜10分
注意
起きている時、大人の監視下で
目的
後頭部への圧力を減らし、首の筋力を育てる
タミータイムは頭の形だけでなく、首・肩・体幹の筋力発達にも重要です [3]。寝ている時はNG、起きている時のみ行います。
ヘルメット治療は#
重度の変形で生後4〜6か月以降も改善しない場合、ヘルメット治療(頭蓋矯正療法)の選択肢があります [4]。
| ヘルメット治療の概要 | 内容 |
|---|---|
| 開始時期 | 生後4〜6か月 |
| 終了時期 | 12〜18か月 |
| 装着時間 | 1日23時間 |
| 期間 | 3〜6か月 |
| 費用 | 保険適用外(40〜50万円程度) |
| 対象 | 中等度〜重度の変形 |
ヘルメット治療の概要内容
開始時期
生後4〜6か月
終了時期
12〜18か月
装着時間
1日23時間
期間
3〜6か月
費用
保険適用外(40〜50万円程度)
対象
中等度〜重度の変形
ヘルメット治療は日本では保険適用外で、効果と費用のバランスを考える必要があります [4]。van Wijk ら (2014) のランダム化比較試験では、中等度の変形ではヘルメットと自然経過の2歳時の差は小さいと報告されています [4]。一方、重度の変形では有効という報告もあります [5]。
| 治療の検討ポイント | 内容 |
|---|---|
| 変形の重症度 | 軽度〜中等度は自然経過を優先 |
| 年齢 | 4〜6か月までに開始 |
| 継続できるか | 23時間装着のストレス |
| 家族の希望 | エビデンスを理解した上で |
治療の検討ポイント内容
変形の重症度
軽度〜中等度は自然経過を優先
年齢
4〜6か月までに開始
継続できるか
23時間装着のストレス
家族の希望
エビデンスを理解した上で
いつまでに改善しますか#
多くは6〜12か月以内に改善に向かいます [1]。寝返り・お座り・つかまり立ちと運動発達が進むにつれ、頭にかかる圧力が分散されるためです。
| 経過の目安 | 内容 |
|---|---|
| 生後2〜3か月 | 圧力変形のピーク |
| 4〜6か月 | 寝返りで圧が分散 |
| 6〜9か月 | お座りで頭に縦の力 |
| 12か月頃 | 立位で大きく改善 |
| 2歳頃 | ほとんどが気にならない程度に |
経過の目安内容
生後2〜3か月
圧力変形のピーク
4〜6か月
寝返りで圧が分散
6〜9か月
お座りで頭に縦の力
12か月頃
立位で大きく改善
2歳頃
ほとんどが気にならない程度に
髪の毛が生えそろうと、気にならなくなることも多いです。
今号のまとめ#
- 位置的頭蓋変形は仰向け寝で増え、多くは自然改善
- 体位変換とタミータイムが第一選択
- 頭蓋骨縫合早期癒合症は別物、独特の形は要受診
- ヘルメット治療は生後4〜6か月の重症例が対象
- 運動発達とともに2歳頃には目立たなくなる
- 知識が不安を減らす